第385話 手紙と報告
無事に手続きが終われば 魔道具を持って三姉妹とタキさんは部屋を出て行った。
直後に防音結界が展開されたのはサブマスがやってくれたのだろう。
「まずは お二人というか ヴィオさん宛のお手紙がこちらですね」
そう言って渡されたのは テレビで見た事のある人気ホストのお給料袋かと思うほどの分厚い封筒だった。
これ立つんじゃないの?
お父さんも思わず笑ってしまうほどのそれは 数枚見れば船の絵、港の絵、変な置物など 色々な絵だった。
「これは見事じゃな。クルトにこんな才能があったとは驚いた。
これはマコールさんにも見せてやったら喜ぶじゃろうな」
うん、そう思う。
途中から色鉛筆で描かれるようになった絵は 写真がないこの世界では 凄く貴重で 行ったことのない町の情報を沢山教えてくれた。
手紙には 町の特徴や 何が美味しかったかなど、お兄ちゃんたちの感想が沢山書いてあった。
「ふふっ、これは後で読むのが楽しみだね」
流石にこの量を 今読むわけにもいかないからね。マジックバックに収納してギルマスたちと向かい合う。
「まあ お前らが帰ってくるまでに色々あったんだがな、大きな情報は二つだ。
まずは良い情報からにしとくか。
トンガ達は無事にメネクセスの国王陛下との対面が出来たようだ」
思ってたよりも早い対面だったんだね。
大国の王様との対面なんて 中々難しいと思ったのに、どうやら三週間ほど前に極秘に 面談が出来たらしい。その時は国王としてではなく、銀ランク冒険者としての面会だったみたいだけどね。
「トンガ達のすべきこと、出来ることは終了しましたからね、今は金ランクの指定ダンジョンに向けて出発しているようですよ。
多分目的の町に到着すれば また連絡が来るでしょう」
「そうか、では良くない方の情報はなんじゃ?」
お父さんの質問に 二人が真剣な表情になった。
「ヴィオを狙った襲撃者の大本だが、それがこのプレーサマ辺境伯領地に来ているってことだな」
「なんじゃと!?」
ガタリと立ち上がったお父さん、椅子が倒れちゃいましたよ。
それは例の逃げた二人かな? メネクセスの飼い主のところに戻ったんじゃなかったんだね。
「まあ落ち着け。襲撃依頼者の三人組のうちの二人、この二人がプレーサマ辺境伯領地に来たのが分かったのは この手紙が理由だ」
〈プレーサマ辺境伯領地で落とし物を見つけた相手と合流できそうだから あなたも早くこちらに来て欲しい。商品を待っているお客様にも 時間が掛かることは伝えてあるから大丈夫〉
見せられたのは 変な手紙の写し。本物はメネクセスに送られて フィルさんが持っているらしい。
「この商品って私の事だよね?
荷物だとでも思ってるのかね、失礼な話ですよ。
何なら自分でフィルさんに会いに行っても良いけどね」
「ヴィオ……、まあ襲撃を三回も喰らってたらそんな風になるのか?」
「盗賊を合わせたらもっとじゃな」
お父さんのツッコミに大人たちが揃ってため息を吐く。
何で私が残念な子みたいになってるの?
残念なのは襲ってくる人たちの頭の中ですよ?
「こちらは相手の姿かたちを知りませんので とりあえず村に来る余所者を警戒するように村民会議でも皆に周知しています。
メネクセスの国王陛下は この襲撃者について 飼い主の侯爵に聞き取り調査をすると言っていたようですから 侯爵から 襲撃者に計画の中止を告げてくれるとは思うのですが、念のために 風の季節には 旅に出てもらった方が良いかもしれません」
まあ 普段は他所からの人が来ることのない村だけど、風の季節は有象無象が大量に集まるんだもんね。
今年は銀ランクにもなったし、旅に出るのもバッチリですよ。
「今年の風の季節からは 私もご一緒出来ますから、ヴィオさん アルクさん よろしくお願いしますね」
「えっ!?サブマスさん 本当にギルド辞めちゃうの?」
サブマスはニコニコと頷くばかり。
「はぁ~、まあ 何十年もって訳じゃねえとは思うしな、ヴィオが成人するくらいまでだろ。
タキへの引継ぎはもう終わってる。
あとはこの火の季節の ギルマス会議で引継ぎをすれば完全終了だ。連れてってやれ」
連れてってやれって、こんな戦力をお借りできるなんて逆に申し訳ない感じだけど いいの?
お父さんも笑ってるけど、そうか 本当にいいんだね? それは面白い旅になりそうだね。
まあとりあえず その襲撃犯らしい人たちに関しては 注意をしておくことしかできないので、私は村以外では一人での行動禁止令が出ました。
トニー君たちは 解体の練習をしっかりやって マコールさんからのOKが出たら裏森に行くことに。
今サマニア村ではヒュージボアを狩るのは 傷を最小に出来る人じゃないと駄目って言われてるんだって。
解体に自信がないなら 首チョンパで血抜きだけして全身そのまま持って帰ってこいって言われてるみたい。
「森に行くときは アルクが一緒にいれば大丈夫だろ。
一応詳細が分かり次第 ヘイジョーから連絡を貰えることになってっから。とりあえず今年の風の季節まではそんな感じでよろしくな」
こちらこそ 私事で申し訳ないですね。
けど 飼い主が侯爵だなんて やっぱり 傀儡にしようと思ってたのかしらね。
私が貴族になるなんて 無理そうだって思わなかったのかな?
似たような影武者を育てた方が早いと思うけど、そう思えないって事は その襲撃者も ちょっと頭が残念な人なのかもしれないね。
報告が終われば 採集物の販売があるから このまま会議室を借りて 荷物を出していくことになった。
ギルマスたちは仕事に戻ると思ったんだけど、面白そうだからとそのまま残ってます。
三姉妹とタキさん、他に三名ものギルド職員が来てくれたのは 前回の大量すぎる採集物があったからだろう。
ゲルシイとウミユ、ダンジョンの採集物はこの二カ所だけ。
アンヤは初級ダンジョンだったし 採集物はない。
けど この二カ所は上級ダンジョンだったからね、私の鞄に入れているものはお土産と自宅用なので お父さんの鞄に入れているものを全部出していく。
「お!これ新しいハズレか。ドゥーア先生から聞いてるぞ」
「そうだ、ギルマスたちに食べてもらいたい料理があるから 時間がある時お夕飯食べに来て下さい」
「そうなのですか? それは是非」
オークナイトの豚丼は絶対食べさせてあげたいからね。
ダンジョン以外も辺境の森で狩ってきた魔獣の皮などの素材は沢山ある。
ダンジョンではドロップアイテムしかもらえないけど、地上の魔獣は全部が素材だからね。
「相変わらずヴィオちゃんの持ってくる素材は無駄な傷も無くて 解体が丁寧だね。査定のポイントはかなり高くなるよ」
それは嬉しいです。
銀ランクのポイントはかなり多かったので、今回提出する素材から 貰える依頼ポイントは足してもらうことにしたよ。
本当は サマニア村じゃないところでもらった方が報酬もポイントも多いんだけど、それは面倒を引き寄せることになるからノーセンキュー。
今はまだ七歳だもの、1年にひとつランク上げれば 十歳で銀ランクの上級になっているからね。
そうしたらメネクセスに行って 金ランク試験のダンジョンに挑戦するんだ。
今年はまだ半年以上あるからね、一か月に六十ポイントずつ稼げば四百ポイントは貯められるから十分です。




