第383話 ただいま
ルエメイ遺跡ダンジョンを踏破した後、大して武器を使っていなかったこともあり 修繕に出すことはなく村を出た。
ここまで散々寄り道をしてきたからね、ここからは寄り道をせずにサマニア村に帰りますよ。
プレーサマ辺境伯領地の良いところは 街道以外は結構自然が残っているところ。
お陰で肉の心配はそこまでしないで良いし、出てくる魔獣も他の領地に比べると早いし強いので 悪い人が隠れているということもない。
この領地では町以外に悪い人は潜めないのだ。
はじめは北西方向に走ってたんだけど、途中でハンモック風呂の事を思い出し 真っすぐ山を目指すことにした。
他の町で見つけたボアたちは小さくて 肉は良いけど 皮は羊皮紙用くらいにしか使えないと思うくらい小さかったからね。
アンナープ近郊から山沿いに移動をはじめ ヒュージボアを狩りながらサマニア村を目指す。
「やっぱりこのお山にいるボアたちは大きいね。
ダンジョンと他の山を見た後だと その違いがよく分かるよ」
「そうじゃな、じゃからこそ 他の国や領地から来た奴らは こっちの山には近寄らん。
トンガ達だって 【索敵】がなかった時分は ある程度距離を取って移動しとったと思うぞ」
だから安全に動けるようになるあの【索敵】を考えたのは本当にすごいと褒められて照れる。結局この【索敵】に関してだけは 〔土竜の盾〕の皆にも教えることはなかった。
水魔法と風魔法の索敵だと思ったままだと思う。
次に再会した時には伝えられるかな?
「お父さん、お兄ちゃんたちメネクセス王国に到着できたかな?」
「もう到着しとるじゃろうし、王様とも会った後かもしれんぞ?
儂らは寄り道したからなぁ。村に戻ったら手紙が来とるじゃろ」
あっ!そうだよね。うっかりダムに行って楽しんでたけど 絶対にお兄ちゃんたちの事だもん いっぱい手紙をくれている筈だ。
「あ~~~!返信がないって心配させちゃってるかも。お父さん、急いで帰ろう!」
「ははっ、寄り道することはギルマスたちに手紙を書いたから あいつらにも伝わっとるとは思うがな。まあ急いで帰るか、よし ヴィオ 走るか」
あちゃ~ってなってたら お父さんはちゃんと連絡してくれてたみたいです。
なんでしょうかね、一点集中すると 忘れちゃうのは子供だから? 元々のアレかしら。いや、子供返りしているだけだと信じたい。
お父さんが両手を広げてくれたので ぴょんと飛び乗ればいつものダッシュスタイルだ。
【ウインド】を唱えて村までの細い街道を凄い勢いで走る。人目を気にせず走れるのに 街道だからお父さんもとっても走りやすいらしく いつもよりスピードが出ている気がするよ。
地図情報でサマニア村が見えてきたところで 魔法は止める。
初心者の森から三つの反応が出てきたので少しゆっくり歩いていたら 私たちに気付いたらしい三人も大きく手を振りながら走ってきた。
「アルクさん、ヴィオ! 今帰ってきたの? おかえり!」
「ただいまルン君、ナチ君、トニー君も久しぶりだね。今日は森の日だったの?」
三人は学び舎で一緒だった 年上組で、兎獣人のトニー君は昨年洗礼を迎えて冒険者登録したところだ。
どうやら トニー君は先月銅ランクに昇格したそうで 今は初心者の森で討伐に慣れるため頑張っているんだって。
「銅ランクまで一年……? トニー君なら薬草採取とかでもっと早く上がれそうなのに?」
洗礼式の日、直ぐにでも登録すると張り切っていたから 二か月くらいでクリアしている者だと思ったんだけど、思わず訪ねてしまえば ピンと伸びた耳が萎れた。
「婆ちゃんが駄目だって、銅ランクになったら学び舎が卒業だろ?
だから 薬草採取も報酬は貰えるけどポイントは貰えなかったんだ」
「俺たちは ヴィオがやってたみたいに 今でも足りない勉強を図書室でやってるんだけど、トニーは絶対やらないだろ? だからエリア先生が 出来る勉強は全部してからじゃないと駄目だって言ってたんだよ」
ナチ君の説明を聞いて納得しかない。
確かに注意力散漫で 結構イケイケなところがあるトニー君だもの、祖母としては心配だったんだろうね。
「まあ僕たちも 弟がまだ学び舎にいるから 一緒にギルドに行って図書室に通ってるだけなんだけどね」
ルン君が照れ臭そうにそう教えてくれたけど 九歳になったルン君とナチ君は 前に会った時より手足が伸びて 大人に近づいている感じがする。
なんでしょうか、思わず『腐腐腐…』と笑いたくなるくらい 危うい色気が……ゲフンゲフン。
そういえば お父さんの為に腐らない大人になると誓ったのでした。ダメダメ、妄想は止めておこう。
「なあ、ヴィオはまたすぐに旅に行くのか?」
自戒の念を込めて 心の中で自分のホッペにビンタをしていたら トニー君から声をかけられた。
帰ってきて直ぐというか まだ帰宅途中ですけど?
「お父さん、次はまた風の季節だよね?」
「まあそうじゃな、けど ランクが上がれば 入れんかったダンジョンにも行けるようになるから 行ってもええぞ?ヴィオはどうしたい?」
「「「ええっ!?」」」
「ヴィオちゃん、ランクが上がるって もしかして銀ランクになるの?」
「うん、条件は揃ったから サマニア村に戻ったら手続きしてもらうつもりだよ」
「マジかよ……。弟と同じ年のヴィオがこんなに早く銀かぁ。まあ あれだけ旅に出てたらそれも納得かもな」
三人から凄く驚かれたけど、ナチ君は 何となくわかっていたみたい。
流石ギルド職員になるためにタキさんに鍛えらえている人だね。ポイントの稼ぎ方とか 条件とかしっかり頭に入ってるんだろうね。
「え~~~~、俺なんてまだ銅ランクになったばっかりなのに。
あ!そうだ! しばらく村にいるんだったらさ、森に付き合ってくれよ」
凹んでいたトニー君が ガバっと顔をあげて 良いことを思いついたと訴えてくる。
同年代の人との討伐とかした事がないから興味はあるけど どうしようかな。
「それいいな!
なあヴィオ、村にいる間だけでいいんだ。俺たちだけだと初心者の森じゃないと危険だけど、ヴィオがいたら 裏森にも行けそうだろ?
アルクさん、ダメかな?」
ワンニャンピョンの懇願の目に お父さんもウ~ンと悩み始めている。
これはもう一押しで行けそうな感じかな?
「お父さん、私も同年代の人たちと同行したことがないからやってみたい。
いつも通り 手出ししないでお父さんが近くにいてくれたら大丈夫でしょう?駄目?」
「まあ、確かに……。ヴィオは 同年代の普通を知っておいた方が良さそうじゃしな。
ただし、それにはまず解体の練習をして来い。魔獣とはいえ命を刈り取るんじゃ。
トニーのそれは 【ファイアボール】で黒焦げじゃろう? それじゃあ素材はとれんから 討伐報酬だけになるじゃろうな。
ルンと ナチは付き添いだけか? お前らの腕前がどれくらいかも確認させてもらってからじゃな」
トニー君の腰には 茶色く焦げたホーンラビットが二体分ぶら下がっている。
解体を森でしてこなかったらしくて丸ごとだけど あれだけ焦げてたら お肉も硬くなっているかもしれないね。
ルン君たちは リュックの中から 解体したホーンラビットを出して見せてくれた。
こちらは皮の状態を見ても そんなに無茶な戦い方はしていないのが分かる。
まあ 一年の差は大きいよね。
だけど大型の解体はしたことがないという事だったので 肉のマコールさんのところでの解体練習を三人で行くことに決めたみたい。
皆で村に戻れば 門番をしていたお兄さんに驚かれたけど お帰りと迎えてもらえたよ。
東門から直ぐに自宅があるから 帰って寛ぎたいところだけど、三人もいるし お手紙の確認もしたい。
まずはギルドにただいまのご挨拶だね。




