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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第381話 ルエメイ遺跡ダンジョン再び


「おはようございます、ダンジョン泊の申し込みをお願いします」


「あ!本当に来てたのね!」


「えっ!? あの子? ホントに???」


ギルドの受付で声を掛けたら 裏にいたらしいお姉さんたちがバタバタと集まってきた。

ここも皆お久しぶりだけど 覚えていてくれたらしくて 口々に大きくなったと言ってくれるのが非常に嬉しい。


「本当にまた来てくれたんだね」


感慨深そうなお兄さんの言葉に 然程人気のないダンジョンは 同じ人が来ることはないんだとよく分かる。グーダンとか ゲルシイなんて 人が多すぎて きっと覚えてられないだろうしね。

工程表を提出すれば 前回とは違ってすんなり受け入れてもらえた。


「前回問題なかったから大丈夫だとは思うけど、ダンジョンは何があるか分からないからね、気を付けて元気に戻ってきてください」


「は~い。また沢山果物採集してくるから 楽しみに待っててね」


「あら そうだったわ。じゃあ戻ってくるあたりで 買取希望者に声をかけておくから ちゃんと帰ってきてね~」


行ってきますと手を振ってギルドを出れば 門兵のお兄さんからも 行ってらっしゃいと手を振って見送られる。

やっぱり都会との違いを感じるね。


「都会は人が多くって ちょっと冷たいというか ギスギスしている人も多かったけど、こっちに戻ってきたら皆優しいね」


「そうじゃなぁ。まあ あそこまで皆が覚えておるんは ヴィオが印象的だったんじゃろうな」


それもあるとは思う。

あの時はまだ今より小さかったし、もっと華奢だったもん。

あれからしっかり鍛えているおかげで 大分筋力も付いてきたからね。

お父さんたちに比べれば まだまだモヤシだけど、比較対象が普通じゃなさすぎるだけだからね。

こないだのお貴族兄弟には 年上にみられるくらい 同年代では結構成長している方だと思います。



一年ぶりに入るルエメイ遺跡、相変わらず外観は素敵な教会って感じである。


「やっぱりここの遺跡が一番それっぽいかもね」


「そうじゃな、ああやって見て回ると ここは教会っぽいと思うな」


うんうん、ウミユなんて草原に石像だもんね。あれは遺跡だとも思わない人が多そうですよ。

久々に入ったダンジョンの中は 石像が点々とあり、壁画もしっかり文字と絵が描いてあった。

しかしここに来て 大問題が発生!


「お父さん 大変!」


「どうした!?」


私が石像の写しを始めたところで お父さんはランチの準備を始めてくれていたんだけど 慌てて駆けよってくれる。ごめん、そんなに緊急性があった訳じゃないの。


「私 字は書けるけど 石像の絵を写すとか無理だったっぽい」


台の文字を写してから 石像を書き始めたんだけど 自分の絵を見て「ナンダコレ?」状態ですよ。

壁画は ナスカの地上絵的な絵だから いけるけど、石像は違う。

特にブン先生とエミリンさんが書いた絵を見た後だから こんなデフォルメされた絵では伝わらないだろう。

お父さんも私のノートを覗き込み、石像を見上げ、もう一度ノートを覗き込んでいる。


「あ~~~、まあ 特徴を文字で説明したらどうじゃ?

この石像じゃったら 『髪の長い女性、八つの角がある冠を被っている、長いドレス、右手に小さい鳥が止まっている』という事じゃろう?

その説明があれば その絵でも十分伝わると思うぞ」


なるほど、下手な絵は説明文でフォローって事ですね。

その上で台座の説明文を一緒に乗せればいいかもね。

お父さんにお礼を言って 石像を頑張って書き写すのは止めて 棒人間に服を着せるくらいの感じで描いておく。


この遺跡にある石像は全部で五つ、女神が三体、男神が二体だった。



光の女神 ルクステーラは 世界に光を齎せた女神で 美しく万人に愛されるらしい。

掌に乗る鳥は彼女に世界の声を届ける役割があるらしいけど 鳩ですか?



知識の女神 シンセンティアは 知恵の女神で研究をこよなく愛するらしい。

ドゥーア先生達からすれば一番お祈りすべき神様だと思います。

『彼女の目からは何事も隠しきることは出来ない』と書いてあるのはちょっとドキッとするよね。

片眼鏡をかけた美女だけど、もしかしたら鑑定眼鏡なのかもしれないね。



守護の女神 ムルステレッセ

守護の神は木の神様でもいたから もしかしたら属性ごとにいるのかもしれないね。

ムルステレッセは 洞窟のように温かい土の壁で護ってくれるらしいです。



森林の神ルヴィーザルは森を守る神様で ガチムチの男神でした。

大きな狼と一緒に立っていたので どちらが神様かと思ったけど、ヒトの方が神様で狼はフェンリルだそうです。

『神獣フェンリルを友とし』と書いてあるので、この世界のフェンリルさんは 魔獣ではなく神獣だそうです。



最後は狩猟の神ウル、この方も男神で弓の名手だそうです。

狩猟の神様なのに鹿に乗っているのですが、それは狩りの獲物なのか 友なのか……謎。

決闘を司る神でもあり、戦争の時には必ず両者がウルに誓いを立てることが必要なんだって。



お昼までかけて石像の書き写しをして、午後に壁画を書き写す。

壁画は絵だけのものが多く、文字とセットになっているのは二つだけだったから そんなに時間をかけずに写すことが出来た。

カメラがあれば 写真を撮影して送るんだけど、まだそんな魔道具は開発されていない。

私も優先順位としては高くないけど、作りたいメモには書いておこうかな。



壁画を写し終えたところで 凝り固まった身体をウーンと伸ばす。

翻訳のお陰で 前に比べて書き写す時間はかなり短縮されたとはいえ それなりに時間が掛かるし 集中しているからカチコチだ。


「さて、このダンジョンじゃから この時間からでもある程度進むことは出来ると思うがどうする?」


お父さんから聞かれて考える。

このダンジョンの五階までは スモールラット、コボルト、ゴブリンくらいしか出なかった筈。

だけど 五階までに部屋は無く 休むとすれば通路に壁を作って休むことになるだろう。

ギルドで確認したところ 今このダンジョンに入っている冒険者はいない。

このダンジョンは転移陣無しの十階だから この階に戻ってくる人もいない。


新しく入ってくる人はいるかもしれないけど この時間からダンジョンに来る人はいないだろう。

であれば 明日五階で野営をして潜ることを考えて 今日はこの階で野営でも良いかなと思う。


「ちょっと明るいけど 一階層での野営でも良いかな。

明日朝からダダッと下りた方が早い気がするの」


どうやらお父さん的に正解な答えだったっぽい。

一階で野営とか 入ってきた人がびっくりしそうではあるけど、フルシェの遺跡では15人もの先生たちが 一階でキャンプをして 夜通し研究談義に花を咲かせていたというのだから、今後は遺跡ダンジョンでよくみられる光景になるかもしれない。

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