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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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〈閑話〉サマニアンズ 1


〔サマニアンズ〕トンガ視点



「おぉ~!これが海の船かぁ」


首都を出て五日目、フォンタナの港町に到着した。

ここまで乗っていた川船も大きいと思っていたけど、規模が違っていた。

数日前まで過ごしていた ドゥーア先生のお屋敷の半分くらいの大きさの船や、川船と同じくらいの船、それから数人しか乗れないような小さな船まで、大小さまざまな船が港にはあった。


「俺たちが乗るのは あの一番大きな船だ。

船は専用の護衛が付いていることが多いけど、護衛依頼があるか一応見に行ってみるか?

あとは風と水が得意で魔力が多ければ 船の運航の手伝いをするかわりに 多少乗船料金が値引きされるぞ」


テリューの言葉に皆が頷き移動する。

冒険者ギルドに行くと思っていたのに 向かった先は船着き場にある乗船受付だった。


「首都のギルドから連絡をしていた 〔土竜の盾〕と〔サマニアンズ〕だ。

メネクセス王国まで乗船したい。

護衛依頼があれば 受けるつもりだし、風と水の得意属性持ちは多いぞ」


「〔土竜の盾〕と〔サマニアンズ〕ですね、お待ちください……。

確認いたしました、確かにご予約いただいておりますね。

護衛依頼ですが 既に決定しておりますので ご予約いただいた便に関しては必要ありません。

ですが 四日後の便でしたら まだ担当者がおりませんがどうしますか?」


成程、船の専用護衛だから冒険者ギルドではなく こちらで聞けるんだな。確かにその方が手っ取り早そうではある。

四日後と言われたけど それは直ぐにテリューが断り、予定通り明日の朝便に乗船することになった。

護衛はついでだし、それより今は一日でも早く 王様に報告したいんだもんな。


得意属性に関しては 風と水以外にも 全員が水生成魔法を使えると告げたことで 船内の水確保に協力してほしいと 全員の乗船料金が割引になった。

この船は メネクセス王国から共和国までを繋ぐ船で、乗っているヒトは国籍も種族もバラバラらしい。船員に関しては 一年の殆どを船の上で過ごし、下りるのは各港に停泊する夕方から朝までだけ。

だから 水生成魔法を習得しているような奴はいないらしい。


ヴィオのお陰で 安く船に乗れたなんて伝えたら なんていうだろうか。

「それはお得だったね」かな「私が乗る時も その割引が使えたらいいなぁ」かな。

自分のお陰でなんて考えもしなそうな妹の笑顔を思い浮かべると楽しくなってくる。


乗船券を手に入れたら 早々に宿へ戻る。

部屋の窓からは 大きな船が見えて 少し感動する。


「クルト、何してんだ?」


「ん? すげえ船だから ヴィオに見せてやろうと思ってな」


テリューと明日の相談をしてから部屋に戻れば 窓際でクルトが何かをしていた。

覗き込めば スケッチブックに船の絵を描いていた。


「クルトって そんなに絵が上手だったんだな。これだけ長く一緒にいたけど はじめて知った」


まさか幼馴染にこんな特技があるとは 全く知らなかった。

ポリポリと頬をかきながら 別のノートを数冊渡されたのでパラパラと中を見ると それは料理の絵と 調理方法、使用した調味料などが詳しく書いてあるレシピ帳だった。

他のノートには 父さんから習ったらしいスパイスの調合、それに使用しているスパイスの材料となる植物の絵が凄く分かりやすく描いてあった。


「サマニア村にいた時に ヴィオから 村長の書いた薬草辞典を勧められたんだよ。

植物の書き方とかを覚えておけば 色んなところで新しいものを見つけた時に良いんじゃねえかってな。

あんときは大して気にしてなくて パラパラ見たくらいだったけど、ヴィオのダンジョンで書いてるノートを見せてもらって 書くようになったんだよ」


あぁ、僕も見せてもらったことがあるけど、魔獣用だけでも獣・ヒト型、爬虫類・虫系、飛翔系・水棲、無生物・死霊系、植物系と五種類もノートがあった。

そのどれもに魔獣の絵があって、攻撃方法、魔法の有無、弱点、ドロップアイテム、出現場所なんかが一匹につき一頁で書いてあったんだよね。


ウミユの深層階で「やっと死霊系の頁が増えるね」と喜んでいたのは 可愛かったなぁ。

けど あのノートを見て これを書いたというのは納得だね。

今まで僕らだけの旅の最中は 植物の採集に興味はなかったし、豊作ダンジョンでも分かりやすいもの以外は捨てていた。

今思えば あれを知られてたらヴィオに叱られたんだろうな。


けど、こうして 資料に残してくれていれば 新しいダンジョンで 新しい素材が見つかった時にも 特徴を書いておける。

僕たちが調理に失敗したとしても それを書いておけば ヴィオが別の方法で何とかしてくれるかもしれないしね。


「あの船の絵を見たら ヴィオも大興奮するだろうな」


ノートを閉じたルンガが クルトの手元を見ながらそう呟く。

うん、僕もそう思うよ。


メネクセス王国まで行けば 僕らと〔土竜の盾〕は王都を目指す事になっている。

ヴィオの産まれた町でもあるヘイジョーのギルマスからは 内容が内容だけに 直接伝えた方が良いと言われたらしい。

現時点ではヴィオらしき少女が見つかったという連絡は入れているらしいけど、今回の襲撃犯の裏に 王様のすぐ近くにいる奴が絡んでいると分かった今、手紙に何もかもを書くのは危険すぎると判断したからだ。



「けどよ、ヴィオの父ちゃんって 大国の王様なんだろ?

そんな人に行ってすぐに会えるもんなのか?」


それはそうなんだよな。

まあけど行ってみない事には何とも言えないし、あの国に到着しても王都はかなり遠い。

その間にヘイジョーとのやり取りも行われるし 何より本人が元冒険者なんだから何とかなるんじゃないかな?



翌早朝に 僕らは大きな船に乗った。

乗船券に水生成魔法の事がメモされていたらしく、船員に連れられて船員たちの部屋に連れていかれた。

樽三つ分を依頼されたので 僕ら三人で水を作れば驚かれた後に喜ばれた。

毎日陸に下りるから水を買い足すことは出来るけど、港によっては美味しくない水の時もあるらしい。


そういえば僕たちはこの魔法が使えるようになってから 水を買った事がない。

前は川で汲んだりすることもあったけど それもしていない。魔力回復薬なんて水生成の時に魔力を抜かなければ代わりになるから サマニア村で買ったやつがまだそのまま残っている。

乗船券だけじゃなくて 色んなところで恩恵受けまくってるな……。

船は毎日色んな港に停泊する。

そこで素敵なものを見つけたらお土産を買っていこう。

実用的な物がいいかな、それとも何に使うか分からないような珍しい物がいいかな、どんなものでも喜んでくれそうだけど、探すのも楽しみだ。


三週間の船旅は飽きることなく過ごすことが出来そうだ。


お兄ちゃんたちの方がホームシックならぬ ヴィオ不足になりそうですww

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