第355話 ウミユ その22
おはようございます。
ウミユダンジョン9日目の朝です。
昨日の夜は起こされることもなく ゆっくりぐっすり眠れました。
起きてから聞いてみたけど 彼らは来ていないとの事。
流石に半日以上ボス戦をすることはないと思うから 残念ながらオーク軍団を前にやられてしまったんでしょう。お悔やみ申し上げます。
「あ、けどな ボス戦で半日かかるってのは無くもないぞ?」
私は昨日食べなかったピタパンサンドを、他の皆はホットケーキを朝食にして 襲撃者の行方についての話し合い中、多分ボス戦で全滅したんだろうという結果に納得したところでレスさんから驚きの発言。
それってどういうこと?
「ダンジョンにランクがあるでしょう?」
トンガお兄ちゃんの説明によれば ダンジョンの大まか分け方は初級、中級、上級、特級(特別級)という私が知っているもの。
だけど それ以外にも上級以降は更にA/B/C/Dの4ランクに分けられているらしい。
「上級のDなら 中級ダンジョンよりは困難だけど 銀ランク中級以上のパーティーであれば攻略可能。
Cなら 魔獣ランクはそこまで高くはないけど、階数が多い、罠が多い、迷路が複雑なんてことで ダンジョン攻略が難しいって事。
ウミユは20階以降がアンテッド有って事で このCに指定されてたと思うよ。
Bは魔獣ランクが高めだから火力のあるパーティーで 回復役がいないとかなり難しい
Aは魔獣ランク高め、道なりも危険、推奨ランクは銀の上級以上ってとこじゃないかな」
中級と初級には特にランク分けはないらしくて、上級と特級は無謀な人が出ない様に結構細かく分けられているらしい。
ウミユに私が入れたのもCランクだった事、銀ランクの上級パーティー2つとの合同だったからだろうとの事。B以上は豊作ダンジョンであっても 一般人の立ち入りは禁止されるレベルだというから まあそういう事なんだろう。
そういえば 素材の買取にもアルファベット表記があったよね。
ダンジョンのランクにもそれが使われているけど、言語として使われている訳じゃないんだよね。
「お父さん、ランク分けのABCって素材の買取の時にもあったけど、これって どういう意味?」
「ああ、これは記号じゃな。勇者が広めた記号でな、素材の良し悪し、ダンジョンのランク、商品の買取価値、あとは 何じゃろうな。
まあ もう少し細かく分けたいときに使えるように考えたそうじゃぞ。
Aから順に20個以上あるらしいけどな、大抵はEくらいまでの5つくらいしか使わん。
Aが一番目で段々下がっていくって事だけ覚えておくとええぞ」
記号扱いなんですね。
きっとギルドに冒険者ランクが無かったのであれば それこそギルドのランクもABCだったのかな。
けどラノベでよく見るギルドのランクって、Fくらいからスタートして Aまで来たら 何故かSになるんだよね。 そこからはS、SS、SSSと Sの数を増やすってのがテンプレだった。
スーパーのS なのか、スペシャルのSなのか、スゲエヤツのSなのか……、結局分からず仕舞いだったな。
って話が逸れちゃったね、何の話をしてたっけ?
そうだ、ボス戦が半日以上って事でしたね。
「そうそう、それで 上級のBとかAに出てくるような魔獣は かなり強い訳。
道中に出てくる奴らでも強いけど、ボスがそれ以上っていうのは 当り前でしょう?それと一緒だね」
「そういうこと、で 耐久力もかなり高い相手なんかだと ちまちま削りながらやるしかないわけだ。
俺らは流石に行ったことはないけど、メネクセスにある特級ダンジョンのひとつは 10人以上のパーティーで対応して、途中仮眠休憩も取りながら 2日がかりで倒したらしいぞ」
は?
ボス戦に2日ってどんだけ?
どうやら特級ダンジョンのボス部屋は 見慣れた洞窟ルームではないらしく、そこも特別なんだって。
だから岩陰とか、そういう場所で休みながら回復して攻撃してってやるらしい。
ちなみにその特級ダンジョンを踏破したパーティーが 金ランク上級の〔美麗なる調査隊〕の皆さんだったらしいです。
「俺らは3人で回復役がいねーし、上級のB以上にその場で組んだ奴らと潜るとか自殺行為だからな。
だからヴィオが銀の初級まで上がれたら 一緒に行こうぜ」
「あら、だったら ヴィオが銀の初級になるまでは 私たちと一緒に潜る?
回復役もいるし、人数も6人いれば安心でしょ? 私たちもトンガ君たちの火力は魅力的だもの」
おお、スカウトですか?
臨時パーティーとなるんだろうけど 中々いいのではないでしょうか。
お兄ちゃんたちとしても 土竜の人たちなら安心だろうし、私も安心です。
詳しいことはリーダーのテリューさん達が戻ってきてからになるだろうけど、私とお父さんは 風の季節以外は村に戻るし、お兄ちゃんたちは今度メネクセス王国を巡るし 丁度いいんじゃないでしょうか。
襲撃者がボス部屋で全滅したかどうかは もう一度ボス部屋に行かないと分からない。
タグが落ちていれば全滅だし、そうじゃなければ 1階に戻ったんだろう。
待っていても仕方がないという事なので 一回テント収納して 11階の散策をすることにした。
テリューさん達が戻るまでは この階をクルクルするんだけど、破落戸以外にも普通の冒険者が来るからね。
この場所にテントを置いたまま散策することは流石に出来ない。
上階のように 左右に分かれてローリングしていては リポップ待ちが大変なので、7人で左半分から攻めてます。
魔獣を倒し、肉や素材を拾い、地に生える野菜や 木に生る果物や袋類を採集し、まるで 果物狩りをしている気分である。
それもこれも シエナさん以外が魔法で攻撃していることが原因だと思います。
素材にうまみのない相手なら 射程範囲に入った途端、素材が必要な相手なら 壁に閉じ込めて確保、採集が終わってから近付いてサクっと。
「私も魔力操作訓練始めようかしら。 レスたちがいるから魔法はいらないって思ってたけど、ゴリゴリの前衛な三人がこれだけ魔法を当たり前に使ってるのを見ると 羨ましいわ」
「武器でやる方がすっきりするけど、ゴーレムとか相手だと 武器も疲弊するしね、僕たちも今までは採集なんて依頼書で高値になってるものくらいだったけど、こうやって採集するなら 魔法の方が便利だよ。
武器の手入れも簡単になったし 修繕費も減る。無理に体当たりしなくなったから回復薬の代金も節約できる。良いと思うよ」
なんだろう、トンガお兄ちゃんが言うと主婦の節約術を説明しているように聞こえるけど、これってダンジョンでの冒険者についてですよね?
まあ魔法の利点は多いから 魔力操作をしっかり訓練して、魔力量も増やせば手数も増えて良いとは思うけどね。
シエナさんは トンガお兄ちゃんの言葉に真剣に悩み始めてます。
二人で野営の見張りをするんだし、レスさんに教えてもらってくださいな。




