第352話 ウミユ その19
ボス部屋挑戦のため しっかり英気を養った昨日の夜、お弁当用に作ったおかずを見て喜んでくれた4人は 「すぐに帰ってくるからな」と言いながら 朝ごはんもしっかり食べてました。
この後ボス部屋までは一緒に活動するんですけどね。
ちなみにこの日は5つ目のセフティーゾーンで野営をした。
6つ目まで行っても良かったんだけど、追いついてくるのに大分時間がかかってたからね。
朝になった現在、彼らは4つ目のセフティーゾーンに集まっているので、夜のうちに集まれたんでしょう。まあ夜と言っても 暗くなるわけじゃないから 休息時間が減るだけで 活動するには困らないもんね。
ちなみに彼らが追い付くのを待つ以外にも理由はある。
ボス部屋戦をした後、夜闇に乗じて奴らが襲ってくるはずなので、11階に下りてからの待つ時間が長すぎるのは困るからだ。
なのでお昼くらいまでは この9階層でしっかり採集をしてから ボス部屋に行く。
11階では 1つ目のセフティーゾーンで迎え撃つ予定なので、到着したらとりあえずセフティーゾーンでテントを張る。
破落戸共も ボス戦をしないと11階に来れないから それなりに待つ必要があると思うんだよね。
なので その間に私はお昼寝。
テリューさん達4人は ボス戦後11階に来ることなく そのまま転移陣でウミユに戻るから 破落戸の迎撃は 7人でやることになるからね、しっかり体力を回復させておかないと駄目なのだ。
私以外は 3徹も平気らしいんだけど、私は眠気だけはどうしても勝てないから お昼寝タイムを頂くことにしたんだよね。
「ヴィオが寝ておる間に終わらせるつもりなんじゃがなぁ」
「だめだよ! 前回も私目的の悪者だったのに 私は何もしない間に終わっちゃったんだよ?
今回も私目的なんだから、私がちゃんと対峙しないと。
今後も同じことが起きる可能性はあるんだから ちゃんと向き合いたい!」
渋るお父さんを説得して 今回の迎撃戦に参加することを認めてもらったのだ。
ただし 眠くなるようだったら無理はしない事、という約束はさせられたけどね。
9階層の採集を終える頃に 破落戸も動き出している。
監視役はかなり離れているのか、私の索敵範囲には入ってこない。
「よっし、じゃあ下りるぞ」
テリューさんの合図で10階への階段を下りていく。
下りきったところは広々とした空間で、見慣れたボス部屋の扉がある。
ただ、壁の絵状態になっているので どうやら中に誰かが入っているようだ。
「そんな直前に入るような冒険者いたっけ?」
「あ~、昨日 ヴィオが寝た後くらいに 通って行った奴らじゃないか? 全然魔獣が居ないから このままボス部屋の前で寝てから行こうぜって言ってた奴」
「ああ、そういえばいたな」
なんと、私たちのローリング採集&討伐で 魔獣にエンカウントしないから 移動速度が上がったんですね?
セフティーゾーンで野営をすることが多いけど、ボス部屋の前も 同じように魔獣が出ないセフティーゾーンだから ここで野営をしたんだろうとの事。成程ですね。
何時に入ったかは分からないけど 20分程待ったところで カチリと音が聞こえ “壁の絵” が “扉” になった。
11人という何とも大勢で扉に手を付くのはちょっと面白い。
「ハイオークとオークナイトだよね?
これだけの人数だったら ナイトが3匹くらいいるかな?」
「そうじゃな、メイジもおる可能性はあるぞ」
「そしたらメイジとナイトは 隔離からで良いかな?」
「おう、頼むぜ」
一応待ち時間に戦術は考えておいた。私の作る壁は 裏返しているから 味方の攻撃は魔法じゃない限り通る事も伝えてある。
凄く驚かれたし、これが終わったら詳しく聞かせて欲しいと言われたけど まあ 終わってからね。
ギギ ギギ ギギギギ
聞き慣れた音とともに扉が開き、真っ黒なボス部屋に足を踏み入れる。
ケーテさん達と入った時よりも人数が多くて ちょっとウキワクしております。
少しずつ明るくなっていく部屋、上段には ヒト要素多めになったオークナイトが3体、両サイドにオークメイジが2体、下段に豚要素多めのハイオークが6体。これはノーマルが混ざっているかもしれないけど、ハイとノーマルの違いは脂肪と筋肉の厚みが多いだけなので見た目では分からない。
「オークでもマントなんだね。あれって支給品なのかな。ゴブリンとコボルトもマントだよね。種族が違うのにお揃いって不思議だよね」
オークメイジも ヒト要素多め、色も赤みが強い肌色なので 豚っぼい人に見えなくもない。
メイジゴブリンは 腰布の上にマントだったけど、オークメイジはどうだろうか。
ナイトと同列なら 下のズボンを履いているだろうけど、ハイオークの上位と考えるなら 裸にマントとなる。
ヒト要素多めで 裸にマントだとしたら とんだ変態になりそうだが エフェクトで消える前に調べることは出来るだろうか。
「ヴィオ、そろそろ始まるぞ」
「うん、準備は万端だから大丈夫」
しょうもないことを考えてるうちに 明るさが増してきた。
皆も武器を構えてやる気満々!じゃない、気合十分!
「【ウォーターウォール】」
今回はナイトが3体もいるから 私は壁を維持するだけのお仕事です。
早速ドォォォンと壁を叩こうとしているけど、前回から変化させて 内側を粘着度高めにいたしました故 一度壁にこん棒を当ててしまうと くっついて離れません。
「行くぞ!」
「「「応‼‼‼」」」
「影よその身を縫い付けろ【シャドーバインド】」
「水の槍よ貫け【ウォーターランス】」
ズシャ! ザンッ! ザクッ!
剣士のテリューさん、アンさん、槍のシエナさんが 最前列にいるオーク達に斬りかかる。
オトマンさんは闇魔法、影を使った拘束攻撃で前列オークたちの動きを抑える。
影がにょきりと 生えてきて 黒い触手が身体を拘束する様は 中々ホラー、闇魔法が怖がられるのもよく分かります。
レスさんは テリューさん達が狙っていないオークに魔法を展開。其々がどの相手をやるかまでは話し合ってなかったのに、流石の連携技ですね。
ネリアさんは 弓で遠距離攻撃、後ろのメイジたちを狙っています。
お兄ちゃんたちは 中央で 壁にくっついたこん棒を叩き割る勢いで打撃を送っている オークナイトに向かってます。
「あの粘着度が高い壁はええな」
「うん、でも流石知能が高いね。こん棒がくっついたことを見て 直接壁を殴りに来ないのは凄いと思う」
本当なら 怒りに任せて壁を殴りかかってくれたら ネズミ捕りにくっついたネズミのように 身動きが取れなくなって 攻撃しやすいと思ったんだけどね。
壁の特徴を即座に見抜いたオークナイトは 怒りのあまり 青筋バッキバキになってこん棒越しに壁を攻撃してます。
撓みはするけど 直接攻撃じゃないから そこまで魔力は減ることもなく、そうこうしているうちにお兄ちゃんたちが到着。
容赦なく後ろから剣で斬りかかっております。
外からの攻撃では 粘着力も関係ないという超卑怯な壁でございますので 成す統べなくキラキラ光りながらナイト3体は消えていきました。
勿論それ以外のオークたちもツヨツヨすぎるメンバーの前に残っている個体は無し。
瞬殺だったね。
ナイトの2体からは肉が、1体は魔石、メイジは2体とも魔石が落ちたようです。
ボス宝箱からは ナイトの肉と宝石が十数個でした。
土竜の人たちは ここまでの食事代(レシピを教える授業料込み)という事で、宝箱の受け取りを拒否。殆どこのダンジョン内で採集しているものを使っているから気にしないで良いんだけど、その方が気が楽だというので 有難く頂きます。
オークナイトの肉か……。
ナイトからは食べることができる肉になるとは聞いているけど 他に食べられるお肉もあるし、しばらくは保管かな。
美味と噂のオークナイト肉が手に入りました!
 




