第349話 ウミユ その16
ポアレス探しの為に 広い範囲を満遍なく動き回ったお陰で、4袋分を採集することが出来ました。
そしてこの階からはお肉が増えまして、名前だけは聞いていた乳牛の魔獣カウカウも出現してくれました。
見覚えのある牛よりも一回り大きい牛は 茶色い牛で 突進してくるだけだった。
完全にお肉とお乳を提供するために出てきてくれたんだろうと思ったんだけど、一般の人からするとカウカウの突撃は結構危険なのだそう。
「え?でもボアたちの方がもっと凶悪だよね。カウカウって角もあるけど ボアの牙の方が余程危険じゃない?」
突進してくるカウカウの正面に 水の壁を作り、ぶち当たってめり込んだところを横から鞭で首チョンパしただけだったんだけど、フェイントもないし 角も耳の辺りに小さいのがあるくらいで危険性は感じなかった。
「まあ あの村でヒュージボアを軽々狩る事が出来るヴィオならそう思うかもしれないけど、ヒュージボアは 基本的に 銀ランク白級がパーティーを組んで討伐する魔獣だからな?」
なんですと!?
テリューさんの言葉に驚きすぎたのは仕方がないよね。
だって、あの村では 大抵の人がソロで狩るよ? 魔法が上手じゃない子達はパーティーで頑張ってたみたいだけど、それでも彼らは銅ランクだったはずだ。
「ちなみに サマニア村にいるヒュージボアは 一般のダンジョンや森にいるよりもずっと危険性が高いし大きいな。ダンジョンで会うヒュージボアは 多分ビッグと同じくらいの大きさじゃと思うぞ」
え?私たちがボアと呼んでいた あのビッグボアサイズでヒュージボア?
しかもそれを銀ランクの白級がパーティーで倒すの???
「お父さん、サマニア村の人達ってやばくない?」
「ブハッ!今頃かよ!」
「そうね……。私たちも直接会ったことが無かったから 根拠のない噂だと思ってたんだけど、今回あなた達と一緒に行動してみたことで 真実だったんだなって理解したわ」
「まあ、あの場所は 他の辺境よりも 山と 山からの魔素をふんだんに蓄えた川の水、この両方が合わさった場所じゃから 特殊かもしれんな。
じゃから 若いうちに冒険者をしても 他と比べられることが多くて 人付き合いが面倒になって戻ってくる奴らも多いんじゃがな」
ああ、あの村の常識は非常識ってやつですね。
力があれば頼られるだろうし 毎回応えるのも面倒だろう、力があることで疎まれることもあるだろう。
そうか、サブマスがあの若さで現役を引退したのもそれがあったのかもしれないね。
まあ サマニア村がヤバイという情報は今更でもあるので カウカウのドロップアイテムを確かめましょう。乳牛というだけあって ミルクを頂けたんですけども、何だろうこれ、何かフニャフニャした袋に入ってます。
「お父さん、これどういう状態?」
「おお、これは乳袋というんじゃが 牧場でもミルクを絞る時はこの袋に入れてくれるんじゃ。
ただ尖った物が当たると破れるからな、店で売る時には 大抵瓶詰めにして販売しておるな」
なんと、公式でもこの謎袋は使われているんですか? 村で購入するときは瓶のものしか見た事がないけど、村にカウカウはいないし 他所から運ぶなら瓶に入れた方が安全って事なんだろうか。
たっぷり入った乳袋は結構重い。お父さんのマジックバックに入れてもらって セフティーゾーンに行ってから移し替えよう。
この後もカウカウは2匹討伐することが出来たんだけど、1匹からはお肉もドロップしたんだ。
是非牛丼を作りたいけど それはトンガお兄ちゃんたちが戻ってきてから、なので明日の夕食にしようと思う。
「ヴィオ、ポアレス いっぱい採ってきたぞ!」
「これだけは纏まって生えてくれてたから 採集もしやすくて良かったわ。ここだけ周回しても良いと思うくらいね」
ネリアさん、私もそう思います。
あの鬱陶しいのがいなければ ここを拠点にしてグルグルしても良かったけど、そうもいかなそうなのが面倒過ぎる。
お昼が軽食だったから 夕食は普通に調理したけど、やっぱり三人がいないというのは少し寂しくて、新しい料理や お米のリクエストもなかった。
折角なので 1日目と2日目に作ったお料理で 作れそうなものを作ってもらおうという事になり、ネリアさんはナムルを、アンさんはブロッコリーの胡麻和えを、レスさんは フライングラビットの照り焼きを、テリューさんは具沢山コンソメスープにチャレンジすることになった。
私は女性二人につくけど、茹でて和えるだけだからミスしようがないと思う……。
多少焦げたり ごま油が多めだったり スープの野菜が繋がってたりなんてことはあったけど、それもまた お料理初心者のあるあるだと思う。
お互いにツッコみ合いながら 明日の予定を話し合う。
今のところお兄ちゃんたちからの報告はないけど 破落戸の10人は2つ目のセフティーゾーンに到着したし、その後ろに監視役らしき3人の魔力も感知している。
多分その後ろの方にある 薄っすらと見えるお印がお兄ちゃんたちだと思うので 下手にこの状態で伝達魔法を送らない方がいいだろうという事なので 我慢だ。
翌日は 高原の後半を索敵でマッピング、セフティーゾーンは 残り3つ、このフロアだけで全部で7カ所もあった。流石は上級ダンジョンだ。
ただ、6階に下りることを目的とするのであれば 6つ目と7つ目の中間地点に階段があるので 7つ目のセフティーゾーンは この階での採集をしたい人のためなのかもしれないね。
相談の結果、私たちは6階に進むことを選んだので 昼食休憩は 6階の1つ目のセフティーゾーンにすることにした。
まだ後半には お米も残っている筈だから 他の野菜達は一旦放置することにして、米と肉だけ確保しながら下りることにした。




