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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第341話ウミユ その8


破落戸冒険者が必要以上に近付いてくることはなく、どうやら一番近くにいたフライングラビットはクルトさん組によって倒されたっポイ。

私も実物をぜひ見たいものだが 左側を進むこのルート上にデカ兎はいない。


今のところポアレス()の茶色い葉っぱは見つかっていないけど、小麦は見つけたし 瑞々しい胡瓜も土の中から掘り出した。


「カンバーか。俺 この匂いは苦手なんだよな」


胡瓜はカンバーという名称なんだね。胡瓜が手に入ったなら 酢漬けにして ピクルスが作れるね。マヨはないけど タルタルソースモドキが作れるかも。ちょっと夜に試してみよう。

レスさんは胡瓜の匂いが苦手らしいけど、ヨーロッパかどっかでは 胡瓜の匂いの香水もあったくらい一大ブームがあったんじゃなかったっけ?

胡瓜は好きだけど、匂いを纏いたいとは思わないから、私はヨーロッパ人ではなかったのだろう。


次の草むらを見つけて 近づけば 草むらの中にスライムらしき反応が。まあスライム自体は珍しくないんだけど 動いているスライムは珍しいかもしれない。

草をかき分けてみれば 緑色のスライムが居た。


「お父さん、苔が生えたスライムがいるよ?」


「ヴィオ、それはグラススライムじゃ、それは攻撃してくる……が大丈夫じゃな」


振り返って確認しようとしたら ちょっと焦ったお父さん。

再びスライムに目を向ければ苔玉スライムから 何かが飛んできた。草?

パイン パインと私の身体から跳ね返っているものを見れば 葉っぱだった。

もしかして 木魔法が使えるの? スライムなのに? 苔玉なのに?

やだ、可愛いんですけど。


苔玉っポイけど よく見れば薄っすら核が見えるのでスライムなんだろう。

資料にこの子の情報は載ってなかったと思うけど、こんな可愛い子 思わず触りに行って怪我をする人が出ちゃうんじゃない?


「ヴィオ、だいじょう…ぶっぽいけど どうしたの?」


必死で草をペイペイしてくる苔玉が可愛すぎて しばらく眺めていたら 採集を終えたシエナさんが覗き込んできて 心配されてしまった。


「この子 凄く可愛いなって思って ちょっと和んでたの。ほら、頑張ってペイペイ草を投げてくるところとか 健気で可愛いでしょ?」


「かわいい……のかしら? 私には凄く攻撃してきているスライムにしか見えないけど、そうなのかしら」


まあこのまま立ち去っても良いんだけど、初めて会う魔獣には攻撃がどれだけ効くのかも試しているからごめんね。

【エアカッター】を唱えれば 何の抵抗もなくスパンと半分に切れ、キラキラエフェクトと共に苔玉は消えてしまった。

癒しの苔玉、グッバイ。


3つ目のセフティーゾーンが見えてきたところでお昼休憩をとることになり、レスさんから 各班に伝達魔法を飛ばしてくれたので 然程時間を待つことなく全員が集合した。



「フライングラビットが2匹も来たぞ。両方肉だったからな、ホーンラビットとの食い比べしようぜ」


今日の昼分はピタパンサンドがあるから 食べ比べをするなら夜ご飯かな?

スープ用の野菜を切るのはテリュー夫妻。それを真剣に見ているのは レス夫妻。夜のスープ作りをやってみるとの事。

テーブルを土魔法で作った後 オトマンさんが テーブルセッティングをしてくれる。その間にネリアさんは 破落戸の情報収集という名の盗聴です。


「あ~、今日はこの階に野営をすることが何となくわかったみたいで 自分たちのペースで来るつもりみたい。これだけ採集してんだから 今日中に下に行くことはないだろうだって。

あの5人組がこのメンバーのリーダー的な役割なのね。あのダメダメの3人組は 王都だけで活動してた奴らみたいね。

王都の周辺はダンジョンもあるけど 学生向けのダンジョンだから あればっかりでも強くなれる訳じゃないのにね。町の周辺に魔獣は少ないし、馬車も多いからそれで体力も少ないのね」


成る程、それは純粋培養され過ぎた冒険者って事ですね。都会の冒険者と 野良の冒険者、後3人は地元ウミユの冒険者だろうとの事。

これだけバラバラなのであれば 依頼者が集めたのは間違いないよね。

私を誘拐するために?


「私一人を誘拐するために これだけ色んな所の破落戸を雇うって 何が目的なんだろう。今までみたいに奴隷商人に高値で売ろうって事じゃないよね?」


「「「‼⁉」」」


土竜の人たちは驚いてしまったようだけど、実際今まで来た野盗も 破落戸も 「高値で売れるぞ」「貴族が買ってくれる」なんて売り先の話をしてた。

偶々()を見つけて喜んだだけの 単なるお金が目的の人たちだというのが分かる。


だけど今回は違う。

確認作業も長かったし、監視をしたうえで冒険者が増えても実行している。その上破落戸を雇ってまで 私を狙ってきている。

単なる金を稼ぐためだけだとすれば 赤字になるだろう。私の本当の価値を知っている人になら それは高値で売れるかもしれないけど、それを知っている人たちは こうして全力で護ってくれる人しかいないんだから。


「お母さんを狙った人かな」


「じゃが、どうやってヴィオがその関係者だと気付く? 色変えもしておるし ここに来るまでは熊耳帽子も付けておった。

熊獣人じゃと思っておる奴らの方が多いぞ?」


それもそうだね。

だとしたら マジで狙われる理由が分からないんだけど?


「ちょっといいか?」


ここでテリューさんから待ったをかけられた。ああ、そういえば スープが出来るのを待ってたところだったね。

気付けばスープも出来上がり 私の分はクルトさんがよそってくれてたみたい。気付かなくてごめんね。


「ああ、ピタパンサンド 私の鞄に入れたままだったね。すぐに出すね」


「いや、そうじゃねえ」


「まあまあ、とりあえず先に食べよう。 その話をするなら長くなりそうだし、防音してからの方がいいでしょ?」


鞄をガサゴソしてたら テリューさんと トンガお兄ちゃんが何やら言い合ってたけど とりあえず出しちゃうね?

山盛りの皿は種類別に乗せてますからね。全て1つずつは食べれるように作ってるから喧嘩はしない様に分けてくださいね。

私は照り玉サンドを ひとつお皿に乗せる。


「えっ!?それだけ? ヴィオが作ってくれたのに」


「ああ、ヴィオは 昼食だとこれくらいしか食べれないんだよね。夕食でも2個が限界かな」


「そうか、6歳くらいだとそれが普通なのか? なんか普段のヴィオを見てると分からなくなってくるな」


「バグるだろ? 魔法とか 大人顔負けの使い方だぞ」


シエナさんが遠慮しないで良いと言ってくれるけど 具沢山のスープもあるし、ピタパンサンドは1つが大きいんですよ。

これを4つも5つも食べれる女性陣が凄いと思いますよ?


オトマンさん、私は6歳ですよ? さっきもレスさんとシエナさんから 6歳らしいって言ってもらえましたし。

クルトさんは何がバグっているのでしょうか?修理が必要ですか?

冷静に自分の売り先を考える6歳幼女……

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