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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第331話お宿に戻る



今日の分の確認を終えた私たちは ダンジョンの受付に戻った報告をして 馬車で宿に戻った。

例の付きまといは お昼休憩くらいに居なくなったけど 諦めたとも思えない。

しばらくは様子見が必要だね。


「お帰りなさいませ。先に入浴をなさってからお食事にいたしましょう。

食事は 食堂でも可能ですが こちらのお部屋でも可能です。こちらにご用意してよろしいでしょうか?」


〔土竜の盾〕と顔合わせをした大きなお部屋に戻れば オットマールさんがお迎えしてくれた。

私とお父さんは隣のお部屋、お兄ちゃんたちはその隣、土竜の人たちは反対側のお部屋を二人ずつで使うみたい。

家族や使用人のグループで使うことを予想して作られているから メイン(主用)のお部屋以外も沢山ある。私とお父さんのお部屋はどう見ても家族用の大きめのお部屋。

そしてお風呂は一人で入ったんだけど お風呂上りにはエミリンさんが待ち構えていて、先生のお家に置いてたドレスを着せられています。


「エミリンさんこれってあのドレスですよね?」


「ええ、今回お嬢様とお会いできるとお聞きしましたからね、折角ですもの お宿の中では 冒険者装備でいる必要もございませんでしょう?」


ウキウキしながら楽し気に準備されてはありがとうしか言えません。

まさか大きなトランク1つが私用のドレスって びっくりですよ。

流石に出先なので イヤーカフは付けたまま。

だけど 耳飾りだから 髪型はかなりアレンジしやすく、リボンを編み込みながら 可愛い感じにしてくれてます。お父さんも嬉しそうなんだよね。


お着替えが終われば 先生のお部屋へ。

顔合わせをした部屋は お茶をするローテーブルとソファーだったけど、隣の部屋には 食堂があって 長いテーブルに沢山の椅子が並んでいた。


「おお、エミリンにしては荷物が多いと思っていたが ヴィオ嬢のドレスだったんだね。うんうん、メイドたちに帰ったら伝えてやろう。喜ぶだろうね」


準備は私たちが最後だったようで みんな揃ってました。

ドゥーア先生はおめかしした私を見て満足げ。


「ヴィオってば お人形みたいで可愛いね~。それがドゥーア先生のお屋敷でしてもらってた格好?

本当にお姫様みたいだね」


トンガお兄ちゃんは喜色満面で椅子から立ち上がり 直ぐに駆けつけてくれた。

いつもなら抱き上げてギューってしてくれるけど、着ているものがドレスだから ワキワキしながらも右から左から眺めながら褒めてくれるに留めている。


なので両手をあげて抱っこのおねだり。

いつもより優しく抱き上げてくれて 左腕に乗せてくれたので、キュっと首に抱き着いてみました。


「やばい、いつものヴィオなのに 別の子みたいで こんなことして良いのかな?って気持ちになる」


「ええっ!そんなのヤダ。だったらいつもの恰好にする」


トンガお兄ちゃんはいつだって愛猫家が猫吸いをするようにグリグリしてくるのに、抱き上げ方すら ちょっと遠慮がち。

格好だけでそんなに戸惑われるなら 装備のままでいい。

そう言ったら エミリンさんがショックを受けてしまった。

ルンガお兄ちゃんが 「たまにしか見れないから宿の中ではいいじゃないか」と言ってエミリンさんを復活させてくれたけど、土竜のメンバーも可愛い可愛いと褒めてくれたことで お宿の中では ドレスアップすることになりました。


「けど、その状態で階下に行けば 今の奴ら以上に面倒なのが増えそうじゃ。ヴィオ、その恰好の時は 4階だけにしとこうな」


お父さんにそう言われて エミリンさんも頷いてくれた。

まあこの部屋は お食事も持ってきてくれるし 全てが賄えるから下に行く理由もないんだけどね。



「えっと、今の奴ら以上ってのはどういうことか聞いてもいいのか?」


テリューさんが遠慮がちに聞いてくるけど、土竜の人たちは先生の護衛であって 私たちの護衛ではないから聞かされても困るとか言われそうだよね。

だけどお父さんから しばらく同行するなら伝えておいた方がいいだろうという事で共有することになったんだよね。



「付きまとっている奴に心当たりはあるのか?」


「ん~、悪者ホイホイだから どの町に行っても 基本的にある程度の視線とか付きまといはあるんだよね。メリテントの時は実行犯を捕まえたけど、それまでに付きまとってた人とは別口の組織的な誘拐犯だったから 今回のがどういう相手かは分かんない」


「「「……は?」」」


「今回の宿周辺で監視しておるのと ダンジョンまで付いてきたのは別の奴じゃったが これは同じグループによるもんじゃと思う。

これがメリテントと同じような 組織的な誘拐犯なんか 別口なんかは分からんが、ダンジョンに潜る冒険者と分かっても来るなら別口かもしれんな」


「石像散策を始めた後 直ぐに父さんたちの方に行った事を思えば ヴィオ狙いであるのは間違いないよね」


「アルク殿、であればヴィオ嬢を遺跡に連れて行くのは危険じゃないか?

思った以上に石像も少なく スティーブンも文字の写しは終えている。であれば明日からは宿での考察だけでも十分だが……」


確かに先生のノートには あの短時間で書いたとは思えない程の石像の絵が書いてある。

ブン先生たちも分担したらしく、絵はエミリンさんが、文字をブン先生が写したようで こちらも絵心があるエミリンさんによって 3体の石像がしっかり描かれていた。


「ざっと下絵の状態ですから お恥ずかしいですが 何となくはお分かりいただける程度に描けていると思いますわ。

お嬢様の御身を危険にさらす恐れがあるなら この絵だけでも十分かと思いますわ」


エミリンさんの言葉に 先生たちが頷き、どうやらダンジョン行きは今日だけで終了しそうである。

まあ 石像以外に見どころはなかったし、先生たちとしても 遺跡の面白さは然程なかったのかもしれないね。


「お父さん、遺跡の事は別として ダンジョンに潜るつもりだったでしょ?

それもナシになっちゃうの?」


遺跡は元々チョロッと見学するだけのつもりだったんだ。

本来の目的はこのダンジョンに潜る事、それが出来なくなるのはちょっと悲しい。

アンテッドにも会いたいし、このダンジョンのハズレ素材も気になる。米があるかも調べたいのだ。


「いや、狙われてんのはお前だろ? ダンジョンに潜る気でいるのか?」


ここまで 固まってた土竜の人たちだけど、ここでテリューさんが 驚いたように質問してきた。メンバーも同じらしく 激しく頷いてます。

私としても この状況は楽観視している訳ではない。

だからと言って そんな奴らのせいで行動を制限されるのは腹が立つ。


「このダンジョンを諦めたからと言って 私を諦めるかは分からないでしょ?

今までの相手は お宿まで付きまとうことはなかったし」


「確かにそうだよね。ゲルシイは 工程表を持ってたからってのもあるだろうけど 宿まで来てはなかったね」


「盗賊も野盗も ヴィオを見て 寄ってくる感じじゃったからな」


お父さんたちの言葉に 全員が絶句。

そんなに襲われているとは思ってなかったらしい。

悪者限定でモテモテなんですよ。美味しそうに見えるんでしょうね。


「アルク様、色変えは抜きにしても せめて眼鏡は付けておいた方がよろしいのでは……?」


エミリンさんが心配そうに言ってくれるけど、これまで襲ってきた人は眼鏡アリの時の人たちです。

眼鏡は魔道具だったからズレるとかはないんだけど、やっぱり視界にフレームが見えるし 温かい食事の時には曇る。

眼鏡なしで過ごせる今はそのプチストレスがないからもう戻れない。



「そうか……、確かにヴィオ嬢は冒険者、今回も偶々 タイミングが合ったから こうして共に過ごせているけど ズレていたら既に潜っていたのだからね。

だが心配であるのは間違いない。

だから もしアルク殿や〔サマニアンズ〕の皆が良ければ 彼らと一緒に潜るのはどうだろう。

勿論 ヴィオ嬢に自衛力があるのは理解しているけどね、それでも 相手は人攫いをするような常識がない相手だろう?

であれば護れる手が多いのに越したことはない。どうだろうか?」


先生が心配してくれるのは有難いけど、この人たちの雇い主は先生で その人たちを私の為に このダンジョンに潜らせるとか無理がある。

大体先生たちの護りが居なくなってしまうではないか。


「ヴィオ嬢、我々でしたら 屋敷から騎士団を呼び出しますので問題ありませんよ。

彼らに明日連絡して 準備、出発を考えれば 到着は2日後になるでしょう。

我々が宿を発つなら3日後となります。

ですから この3日間は ご一緒に遺跡の神代文字などの考察にお付き合いいただけますか?」


ブン先生から護衛についての説明を受けたけど、そもそもの土竜の人たちの意見も大事ですよ?

見回せば お父さんとお兄ちゃんは それでいいんじゃないかとか言ってるし、土竜の人たちも 自分達も付き合えるなら問題ないとか言ってます。


それは迎え撃つつもりです、という事でよろしいですか?


ということで、何故か 来週には 〔土竜の盾〕との合同パーティーを組んでダンジョン挑戦をすることになりそうです。

私はお迎えが来るまでの間 先生たちと台座の文字を解読、そこから解読されていない魔法陣の文字も調べることに。


お父さん、トンガお兄ちゃん、テリューさんの三人は ギルドに合同パーティーの申し込み、それから私のダンジョン入り手続き。

既に受付には伝えているので 工程表を提出して メダルを受け取るだけだけどね。


何だか どんどん大変なことになってきているけど、新しい豊作ダンジョンに入れる嬉しさの方が勝ってしまってます。

大人の皆さんには迷惑をかけているのも分かるんだけど 付き合ってくれてありがとうございます。

大人たちの間では 土竜と一緒にダンジョン入りするのは決めていた事。

だけど、付きまといがいるのは想定外です。

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