第313話 ゲルシイの森ダンジョン その19
森で一泊した後はゆっくり散策しながら進む。
1回目のお兄ちゃんたち同様、地図を持った人たちが 真っすぐボス部屋だけを目指しているという事もあり 採集物が手つかずだから 採り放題なのだ。
初めての素材や ハズレとされていた素材もとりあえず回収して 野営地で確認をするという作業をしているので 進みはゆっくりだ。
あえてゆっくり進んでいるというのもある。
実はボス部屋戦を終えた翌日、例の2か所目のセフティーゾーンで休憩していたらしき人達とすれ違ったんだよね。
想像通り30階まで行くことは出来ないと諦めた人たちで、というか 22階で諦めたのかな?
どうやら 私たちと19階のセフティーゾーンで一緒だった人たちだったらしい。
「クソっ、ガキを連れて行ける様なとこじゃねえぞ」「騙された!」「チッ!」
等々、なかなかお門違いも甚だしい文句を言いながら 20階へ戻って行かれました。
「騙されたって何だろうね」
「勝手に勘違いしただけだろ?ただの馬鹿じゃん、気にしないでいいよ」
トンガお兄ちゃんがプリプリしてますよ。
あの人たちが チッ!とか言いつつ逃げるように去って行ったのは 4人からの殺気が凄かったからだと思います。
自ら虎の尾……は一人だけか、踏みにくい熊の尾を踏もうとするからですよ?
その後も 22階で二組ほど 同じようなパーティーとすれ違い ちょっと面倒だなって思ってます。
「気配見えたら 奥に行こうか。あいつら気配察知は出来ても 索敵出来てるわけじゃないから 範囲外だったら分からないだろうし」
「まあええ加減 鬱陶しいのぉ、自分らの実力のなさを棚上げして 儂らに文句が言いたいだけじゃろう」
私が上級ダンジョンに入りたいとか言わなきゃよかったんだよ。
豊作ダンジョンは中級でもあるんだし、最初からギルマスたちにお手紙書いてもらわないと入れないレベルに入っちゃダメだったんだよね。
「あ~~~、何言ってんの!?
今回の20階、あのボス 僕たちだけだったらマジでやばかったから。
しかもあのお陰で目的達成できたしね、このダンジョンに関しては僕たちが マジックバック欲しさに一緒に入ってもらったんだよ?
ヴィオが気にすることないでしょ!」
「や~、マジで ヴィオ早く銀ランクになろうぜ。
タグが銀になってれば それだけでも牽制になるしな、後はドワーフ扱いされやすくなる。
なあ父さん、これ上がったら ギルドに届け出しねえ?」
「そうしたいんじゃがなぁ。銀ランクに昇格をさせるなら サマニア村での方が面倒はないじゃろ?
この風の季節が終わって戻った時にそうするつもりじゃが……」
お父さんに 誕生日前に受けるかと聞かれるけど、やっぱりサマニア村で 昇格したと、銀のタグを受け取りたい。
そう言ったら お兄ちゃんたちも納得してくれた。
とりあえずこのダンジョンでは 人の気配がしたら 森の奥に移動するという事で 人を避けて行動することになりました。
ご迷惑かけてごめんなさいね。
だけど奥に行くことで 不思議な生き物を発見した。
茸の群生地を見つけたので 食用かどうかを見極めようと鑑定眼鏡を持って近づけば それは魔獣、いや 魔草? いや魔茸だった。
茸のお化けと言えば 竜の探求に出てくる 毒の息とか 眠る息を吐いてくる魔物を想像してたけど、これはあんなファンシーな見た目ではなく 見た目はめっちゃ茸だった。
いや、何言ってんだ?てなるよね。
えっと、顔とか 口とか 手足はないという事ですよ。
いや、足はあるのか?動いてるから 足のようなものはあるかもしれないです。
「資料にはなかったが 森じゃったら居ってもおかしくない。ヴィオ そいつはヒガサマッシュじゃ。
親が近くに隠れておるはずじゃ。親を倒さんと 胞子で幾らでも子を作る。
小さい体で 突き刺してくるからな、刺さると頭痛や幻覚を引き起こすぞ」
さっきから しめじくらいの大きさのキノコが ピョンピョン跳ねていると思ったけど、これは攻撃して来てたのか。結界鎧で弾いているから分からなかったけど結構鬱陶しい。
【索敵】で 茸の魔力を探れば 少し離れた木の枝に張り付くように 大きな茸の姿を発見した。
「お父さん、あれかな?」
「おお、そうじゃ、火に弱いぞ」
「了解!【ファイアボール】」
一点集中青色ファイアですよ。子供はピョンピョン跳ねてたけど、親茸は動けないらしく その場で火の玉を受けてジュワっと燃えたと思えばキラキラエフェクトが出て消えた。
不思議だったのは 親が消えたら 子もキラキラして消えた事。
こっちもわざわざ倒さないといけないと思ったのに 良かったですよ。
23階に進めなかった人たちが多かったのは 多分熊のせいだろう。
23階には それまではいなかったビッグベアが ハチミツ狙いで結構歩いている。ちなみにこの熊 黄色くも無ければ 赤いベストも着ていません。
だけどハチミツはお好きなようですね。
ハニービーがハチミツを作っているのを見つけれたのは良かったんだけど、プ、じゃない ビッグベアがそれを狙っていくもんだから 兵隊蜂であるビッグビーがブンブン飛び回って大変大変。
「【エアウォール】【アイスフリーズ】」
まあ そんな大変な場所も 入っていくんですけどね。
だってハニービーのハチミツはめちゃくちゃ美味しいんだもん。
養蜂家にクマ獣人が多いのはご愛敬なのかもしれないけど、とっても美味しくて人気のハチミツ、手に入るなら貰っておかないとね。
とりあえず ビッグベアとビッグビーは風の盾に閉じ込めて お兄ちゃんたちが外から剣と槍で攻撃です。私はその間に蜂の巣をそのまま氷に閉じ込めてしまいます。
これ 外では出来ないんですが ダンジョンだと蜂たちはエフェクトで消えますのでね。ハチミツと巣だけが残るのですよ。
そうすれば そこの部分をナイフで切って 中に貯まってるハチミツを全て頂けるという訳。
「まさかこのダンジョンにハニービーがいるとは思わなかった。
これを知ったら 益々このダンジョンに人が集まりそうだね」
まあ もうこのダンジョンに来ることは当分ないだろうし 混み合おうがどちらでもいいかな?
ハチミツは売らないけどね。
お兄ちゃんたちとは半分こにするけど、お父さんも 凄く嬉しそうだから 大事にお家で食べようね。
子供連れがこの階までこれたなら俺たちだって。
何の根拠にもならない自信をもって下りた人たちは 実力不足を当たり散らしたいのでしょう……ナム




