第32話 言葉の授業
学び舎3日目は、初日と同じ 言葉と魔術の授業だった。
座学の時には3人でひとつのテーブルが当り前となったようで、普通に教室に入ったところでレン君に手を引かれて真ん中の椅子に座らされた。
「あれから名前書くのうまくなったんだぜ!」
「ぼくもね、お母さんがほめてくれたの。」
二人が嬉しそうに自分の名前を小さな黒板に書いて見せてくれる。
一昨日はグー持ちだった鉛筆も、まだ握りはじめは指を確認しながらではあるけれど、正しい持ち方で書くことが出来ている。
日本で書き方修正の道具があった事を思えば、子供が鉛筆を正しく持つのって もっと時間がかかるものじゃないの?
この二人スペック高くないか?
そんな事を思いながらも、震えることなく書いた二人の名前を見てワシワシ頭を撫でて褒める。
「凄いね!レン君、ハチ君、自分のお名前上手に書けてる!鉛筆も 持ち方が難しいって言ってたのに ちゃんと忘れないで持ててるね、凄いね!」
どさくさに紛れて二人の犬耳、猫耳も一緒に撫でる。あぁ~至福。
「おぉ、本当に素晴らしいですね。二人の努力も素晴らしいですが、二人に書き方を教えてくれたヴィオさんも素晴らしいですよ。」
「おぉ、そうだ、ヴィオありがとうな。」
「うん、びお ありがと~。」
先生が優しく頭を撫でてくれたと思ったら、エヘヘと笑っていた二人も立ち上がり、私の頭をワシワシと撫でてくれた。何だか照れ臭いけど嬉しいもんだね。
「では二人はお友達の名前と、村の名前も書けるようになりましょうか。あぁ、家族の名前も文字がわかれば書いて覚えましょうね。」
先生が前の黒板に ハチ ヴィオ レン サマニア村 と4つの文字を書く。
前を見ながら、自分の黒板に自分の名前以外の文字を書き写す。
文字を覚えるだけなので、書くことはそんなに大変ではなさそう。
そう言えば、カードゲームはこの世界にもあるらしく、異世界チートあるあるの一つ、リバーシは既に存在しているらしい。
トランプもあるようだけど この村には取り扱いがないらしく、お父さんは冒険者をしているときに 他所のギルドや酒場で見たことがあったみたい。
この村は自給自足で 畑を耕したり、魔物を狩ったり、色々作ったりと大変で、娯楽と言えば歌を歌ったり踊ったりすること、年に数回お祭りがあり、それ以外は真面目に仕事を行う村なんだって。
辺境だし、山が近い分、他の村よりも魔獣の氾濫に対応することも多く、大人たちは只の村人AやBではなく、冒険者顔負けのパワーを持った人が多いらしい。
なので、暇があれば子供の世話か、畑仕事か、トレーニングか、魔獣の間引きが行われているらしい。
肉屋のおじさんがムキムキだったのは、お肉屋あるあるではなく、おじさん自らが狩りに行っているからと聞いて驚いたのも数日前の話だ。
あぁ、話がズレたけど、何が言いたいかって、この村には玩具のような娯楽はないという事。
勿論 知育玩具などがある訳もないので、二人の為にカルタを作ることを考えた。
木の札で作れば、結構丈夫なのが出来そうだし、木の札だったら お父さんも得意だと思う。
私も木魔法の練習になりそうだし、頑張りたい。
二人が黒板に文字を書いている間、私はノートにカルタ用の言葉を書いていく。
子供が好きそうな言葉が良いから、冒険者に関する言葉や魔獣についてでもいいよね?
薬草の種類だったら 覚えるのにも便利かもしれない。
木の板はお父さんにお願いして 切ってもらった木を磨けばいいかな?
木魔法の練習にもなるかもしれないね。うんうん、魔力の練習にもなるし、カルタを作るのにこっちの文字を意識して書く練習にもなりそう。