第306話ゲルシイの森ダンジョン その12
10階ボス部屋の宝箱は 旅に便利な魔道具が出るという事だったんだけど……。
「これってなあに?」
「あー、なんだっけ 魔道具屋で見た事ある。あ、ちょっと待って 鑑定眼鏡使ってみよう!
えーっとね、火おこしの魔道具だって」
ナイフのような形の道具は火おこしの道具だったらしい。
試しにクルトさんが魔力を流せば ナイフの先端から小さな炎が出た。
オイルがいらないライター???
「え?これだけ?」
「ファイアでよくない?」
着火だけなら生活魔法のバーンだってある、何故こんな魔道具がいるのだ?
5人で入ったからだろう、5つの魔道具が入っていたので一つずつ確認していく。
「こっちはランプの魔道具だね、炎だと火がちらつくのが嫌だっていう人が使うみたいだよ。馬車の中とかで使うことが多いみたい」
「こっちのは そのまんまだな 折り畳める椅子で 軽くて持ち運びに便利だと」
「これはハンマーじゃな。軽量ハンマー、ああ 成程 見た目と違って軽いな」
「最後のこれは ツメタクナール?
わっ、冷たい。
えっとね、食材を保管するときに腐りにくくなるように冷やすんだって」
保冷剤ですね?
というか ラインナップが完全にキャンプに持っていけば便利だねっていうグッズじゃね?
ダンジョン様は 冒険者の旅をキャンプだと思っていらっしゃるのでしょうか。
「俺らは使わねーけど、ハンマーとランプは人気だぞ? 普通の奴らはテントを張る時 ハンマー使って杭を立ててるんだからな?
お前ら家族みたいに 土魔法と蔦でピョーンとかしねえんだからな?」
いらなくない?って思ってたらクルトさんからツッコミがありました。
そういえばテントの張り方 普通じゃないって言われてましたね。
テーアさんはテントそのまま持ち運びの人でしたし、今までに 一人しかそのやり方している人見た事ないんですよ。少数派過ぎて忘れてました。
まあとりあえずそんな感じで宝箱を楽しんだ後は11階へ移動です。
洞窟はここまでで 高原エリアになりますからね。
キャンプアイテムはお兄ちゃんたちのマジックバックに収納してもらい いざ!
「おぉ~~~、確かに広いね」
「真っすぐ階段までの移動でも半日かかりかな。僕らはあの風魔法で走ったからもっと早かったけど、散策しながらとなると1階層を1日半くらいで回る感じかな」
「このダンジョンに来るやつらは20階と30階のボスを目指すからな、大抵最短距離で採掘は最小限って事が多い。階の最後にあるセフティーゾーンと 階の初めにあるセフティーゾーンに冒険者があつまりやすいからな、俺たちはそれ以外の場所で休んだ方が良いと思うぞ」
成る程、ウインドダッシュが出来ない人は その階層をできるだけ歩いて 翌日は下の階に行こう!となるか、とりあえず下の階までは行っておこう!のどちらかになるんだね。
それは その場所以外のセフティーゾーンを使えば 露店風呂も楽しめるって事だね。
早速足元マッピングをすれば 兎穴が点々とあるのは高原あるあるで、高原自体の広さも中々だと分かる。
けど両サイドも広いのかと思ったら 他のダンジョンと同じくらい。
ただ 森のように樹々がある訳ではないこのだだっ広い高原では 果てにいることに気付けないのだろう。
「お父さん、高原の場合の果てって 印はどうやってつけるの?」
「ん~、特に印は無いな。森のように樹々に遮られて見えなくなるという事もないしな」
ああ、そうか。のろしでも上げればすぐに見えるだろうし、特に必要ないって事なのかな。
お兄ちゃんたちは 広すぎるこの階からは前方5㎞程をマッピングする方法に切り替えて行動したらしく 高原にも果てがあることに驚いていた。
森の時は感動して 果ての場所で 反復横跳びしてたもんね。
小高い丘、小さな林、少し背の高い草が覆い茂る場所、そういった場所は 採掘ポイントなので 積極的に掘りにいく。
草を引っこ抜いて トマトが出てきても、芋が出てきても、かぼちゃが出てきても もう驚きませんよ。
食べない野菜はないので 抜いたら抜いただけ集めていく。
余ったものはギルドで販売すればいいし、ドゥーア先生のところで大量消費してきたお陰で 私の鞄にグーダンの余り野菜はもうない。
「あ!ココッコだ!」
このダンジョンが豊作ダンジョンでもあるというのは間違いないようで ココッコがいた。
から揚げ1番人気なだけあって クルトさんがダッシュで狩りに行ってくれました。
ホーンラビットも 洞窟エリアでは角の方が多かった気がするけど、ここでは肉が落ちた。
今日からしばらく肉祭りになるけど、こうなってくると魚が恋しくなるんだよね。
「お父さん、魚が出るダンジョンもある?」
「敵が魔魚ということか?」
「ん~、それでも良いんだけど 豊作系って肉は落ちるけど魚はないでしょ? 普通に魚釣りができるところとか無いかなって」
ルエメイの湖は食べれる魚はいなかったけどね。
「あるよ~、ダンジョンに川があるところもあるし、湖があるところもあるよ。
魚に限らず水の中の生き物ばっかりのダンジョンもあったしね」
のんびり採集してたら 隣にいたトンガお兄ちゃんが教えてくれた。
水の中の生き物限定ってこと?
「え?それって水中って事? お兄ちゃんたちはどうやって息してたの?」
「あはは、水中じゃないよ。まあ水が多かったのは間違いないけど、なんていうかな 洞窟エリアの通路が全部水路になってるダンジョンって感じ」
「途中水ん中潜らねえと移動できねえところとかもあったな」
カナヅチは行けないダンジョンですね。
私は……川を流れてきたくらいだから大丈夫そうだね。
「まあ あんまり人気のないダンジョンだったから ヴィオでも入りやすいと思うぞ」
ルンガお兄ちゃんの言葉に俄然興味が湧いてくる。
「お父さん、次そこ行ってみたい!」
「あ~、連れて行ってやりたいが銀ランクになってからじゃな」
「あ、すまんヴィオ、そのダンジョン共和国だわ。冒険者は銀ランク以上じゃねえと国境越えれねえや」
ガァ~ン!
リズモーニにはダンジョンが沢山あるのに そのタイプはないの?
まあ銀ランクになれば行けるなら その時の楽しみにすればいいかな。
「じゃあ銀ランクになったら 一緒に行こうね!」
「そうじゃな、リズモーニのダンジョンもまだまだ行けてないが いろんな場所に行けるのも冒険者の特権じゃからな」
「またそんな規格外に拍車をかける様な事を……」
クルトさんは意外と心配性でオカン属性です。
まあ でも お父さんたちが私に甘いから、ツッコミ担当は超重要です。ありがとうございます。
宝箱の中身(魔道具)は完全ランダム。
ダンジョン様がセレクトしているのかは分かりません




