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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第301話 ゲルシイの森ダンジョン その7


久しぶりのお兄ちゃんたちとのダンジョンにテンションが上がってたのは間違いない。

なのに その気持ちをぶち壊すような屑冒険者モドキのせいで 魔力調整が上手くできなかったのだろう。

魔力を使い過ぎてダンジョンなのに眠くなるとか情けなさ過ぎる。

レッドウッドラースの時に反省したはずなのに 同じことをしてしまうとか……。


セフティーゾーンに入ったのは覚えている。

闇魔法もその時には切れてて かけ直しがいるかな、でも屑を誘い込むならいらないかな? って考えてたのも覚えている。

ただ その後ご飯を食べてる途中からの記憶がない。


気が付いたら ルンガお兄ちゃんの腕枕状態で寝てて ルンガお兄ちゃんに恋人が居たら キャットファイトが始まる危険な感じでしたよ。

とっても気持ちよさそうに眠ってるお兄ちゃんを起こすのは申し訳ないので そっと腕から抜け出して 近くに置いてあった抱き枕を乗せておく。


ぐるるるぅぅ~~~


食事中に寝たのだろうと思うのに 凄くお腹が空いている。これが魔力切れによる空腹なのか?

テントを少し捲れば良い匂いがする。

まだ少し眠いけど お腹が空いた方が大きい。


トンガお兄ちゃんに呼ばれて近くに行けば ヒョイと抱き上げられて 足の間に座らされる。背中があったかいと眠くなっちゃうんだけど お兄ちゃんも楽しそうだから しばらくは良いかな。


「まだもう少し待てるか?」


クルトさんがジャッジャと炒め物をしながら聞いてくれるので大丈夫だと答える。この匂いが届いてたんですね、非常にお腹がご機嫌に動き始めてますよ。


「ヴィオ スープだけ先に飲んどく? お腹空きすぎると辛いでしょ?」


トンガお兄ちゃんがそう言いながら カップにお湯を注いで 簡易スープを作ってくれた。

おお、これは子供たちが大好きなイエローコーン(とうもろこし)のスープ。

イエローコーンはこの世界では果物の扱いなんだよね。そのまま齧っても甘くて美味しいからというのが理由だけど、私の中では野菜扱いです。


コーンスープを飲んでお腹が落ち着いたら 段々目が覚めてきた。

ルンガお兄ちゃんもテントから出てきたけど寝ぐせが凄いよ。


「トンガお兄ちゃん ありがとう、スープのお陰で目覚めたよ。

ルンガお兄ちゃん おはよう、寝ぐせ凄いことになってるよ」


トンガお兄ちゃんの足の間から抜け出して 隣に座る。ちょっと残念そうな顔をしているけど 私がそこにいると食事がしにくいでしょう?

ルンガお兄ちゃんは ちょっと寝惚けながら私の隣に座ったので 寝ぐせを水魔法で湿らせながら直してあげる。


「さ~、できたぞ。ヴィオはその席でいいのか?」


大皿にドドンと乗せられたお料理がテーブルに並ぶ。時間遅延の鞄が手に入った事で 作った先から鞄に収納、一気に出すって事が出来るようになったんだね。

いつもは お兄ちゃんたちと 私とお父さんが向かい合わせに座るんだけど、今は私がお兄ちゃんたちの間に座ってる。

移動する必要もないし このままでと言えば クルトさんとお父さんが並んで座る。


「「「いただきま~す」」」


前より多く食べられるようになったとはいえ お兄ちゃんたちには追い付けそうにない。

私用に作られたワンプレートのお皿に おかずを少しずつ取り、小さめのパンを2つもらう。

色んな種類のおかずを食べたいから 1種類の量が少ないのは仕方がないんだけど、いつもお兄ちゃんたちには「その量で足りるのか?」と心配される。

足りなければ鞄には食材が大量にあるから大丈夫だけど、足りなかった事などない。


私が取り分けるまでは待ってくれるようになったのも いつからだったかな?

取り分けた直後は 目の前を腕の残像だけが交差し 皿のおかずが消えていく。それでいて周囲が散らばって汚いという事がないのが本当に不思議。


食後のお茶を飲んでいて思い出した。

そういえばあの屑たちはどうなったんだろうかと。うっかりスッカリ忘れてた。

マップを見てみるけど 反応がない。まさかまだ到着してなくて2階を探し回ってる?



「お父さん、あのモドキたちってまだ2階にいるのかな」


「ブッ、モドキって……」


「あ~、あれは片付けておいた」


え?

片付けてって もう対戦したってこと?

そういえば寝落ちする前に3階をうろついてたはずだったよね。


「え、あいつら来てたの? 全然気付かなかった。

私が寝てるとき?

え、じゃあルンガお兄ちゃん怪我して寝てた? 大丈夫?」


まさか全てが終了してたとは思わなかったんですが ルンガお兄ちゃんが心配になって 上着をまくり上げて怪我が無いかを確認する。うん、ツルンとして綺麗なお肌ですね。腹筋も8つに割れて良い感じですよ。


「や、ちょっ、ヴィオ、俺は怪我してねえから」


お兄ちゃんの素晴らしい腹筋を堪能してたら服を元に戻したお兄ちゃんに叱られた。真っ赤な顔してるけど お家でもダンジョンでもお風呂上りに上半身裸でウロウロするじゃない、恥ずかしがるポイントが分からない。

まあでも怪我はないようで安心しました。


「じゃなくて、あいつら10人くらいいたよね? お父さんたちも怪我してない?」


「ヴィオ~、僕たちの心配してくれるなんて良い子~。

大丈夫、あんな雑魚にどうにかなるはずないでしょ~」


トンガお兄ちゃんがナデナデしながら言ってくるけど、内容は随分不穏ですよ?前半と後半の言葉が別人の台詞に聞こえるバグが起きております。


「まあ通路で分断されておったからな、10人に襲われるっちゅうことはなかったから安心してええ」


どうやら一番のダイジェストを見逃していたようです。

詳しいことは教えてくれなかったけど、多分お父さんたちによる一方的な殺戮現場だったのではないかと想像する。

お兄ちゃんたちは分からないけど、お父さんの武術は対人戦でやり合う感じだったもん。

きっと私が寝ている間に片付けようと動いてくれたんだろう。


「お父さん、トンガお兄ちゃん、ルンガお兄ちゃん、クルトさん、護ってくれてありがとう」


聞かせたくない、見せたくないと思ってくれての行動だと思うから 聞きたいし見たかったけど言いません。次は……ない方がいいけど、もし次があったら私も参加したいと思います。



「あ、そういえば今回の人たちって ただの強盗だったのかな。

私狙いで来たお母さんの関係者ではなさそうだった?」


「は?」


「多分違うな。元々ルンガたちが絡まれたことがあると言うておった通り、このダンジョンに来るやつらを狙った強盗というか強請じゃな。

あいつらのリーダーの荷物には いくつかのパーティー名、ランク、工程表が書いてある紙が入っておった。ギルドの職員から聞いた情報じゃろう。

それを見て 戻ってくる日を予想して1階で待ち伏せしておったんじゃと思うぞ。20階以上のボス部屋から戻ったら 確実に魔道具持ちじゃからな」


ギルドの職員がそれをするって ダメダメだね。

それをあの二人は気付いてないのかな。

外で強請をして付きまとっているのも知らなかった?それは流石にないよね。

であればその対策はどうしてたんだろう、放置してたとしたらあの二人も駄目だよね。

戻ったら聞いてみる?


「ギルドの職員が情報を流していた件に関しては 確認が必要じゃろうな。あの二人がどこまで把握しておったんかも聞いてみたいが まだ先の話じゃ、まずはダンジョンを無事に踏破する事だけ考えた方がええ」


まあそれもそうだね。

というか、皆にはちゃんと謝らないとですよ。


「えっと、今日は魔力切れで迷惑をかけちゃってごめんなさい。

ダンジョンでは自分の魔力残量を気にしてたつもりなのに、ちょっと気合が入り過ぎたというか イライラしすぎたというか、集中力を欠いてたと思います。

セフティーゾーンまで来てたとはいえ、途中で切れててもおかしくなかったです。

次はこんなことがないように気を付けます。ごめんなさい!」


闇魔法が 屑どもの前で切れることが無いようには考えてたけど、それだってあいつらがトロかったから先に動けただけで もっと早く切れてたかもしれないよね。

皆を危険にさらしたかもしれないと思うと恐ろしい。


ベンチに正座し テーブルに手を付いて頭を下げる。

誰も何も言わないけど、沈黙が怖い……。

ふわっと体が持ち上がり ギュっと抱きしめられて お父さんに包み込まれたのが分かる。


「儂らが無茶をさせたんじゃ。儂らこそ ヴィオに無理させてしもうて悪かった」


お父さんの耳がヘニョっているように見えるよ。

無茶をしたつもりは全然なかったの、気分が高揚しすぎて残量確認ミスだったのです。耳の付け根をヨシヨシと撫でる。


「そうだよ、あのね 普通の6歳はそもそも魔法を1つか2つ使えたら凄いね!って言われるくらいなの。

なのにヴィオがあまりにも普通じゃないから忘れてた僕たちが悪いんだよ。

え、いひゃい ひほ はんへほふ ひっははへへんほ」


トンガお兄ちゃんに抱き上げられてギュッとされる。

うん普通じゃないのは まあ自覚している。

うん、トンガお兄ちゃんに悪気がある訳ではないのも分かっている。

けどとりあえずホッペは引っ張っておきましょう。


「まあ普通というか 大人の魔法使いでも 呪文を唱えないと魔法が使えないやつが多い。

連続で使える奴なんて現場では殆ど見た事ねえんだぞ。

それを当たり前に無詠唱で、当り前に纏め掛けで、当り前に重ね掛けしちまう。

元々身体強化と結界だっけ?それもやってたんだろ? んでダンジョンでは索敵もだな。魔力切れして当り前だっつーの」


腕を伸ばしてきたルンガお兄ちゃんの胸に飛び込めば 軽くデコピンされました。

確かに よく考えれば 索敵もダンジョン外でのマッピングが出来ることが分かってから 身体強化と同じように常時展開しているよね。

使ってる意識があまりない3つだけど、魔力はそれなりに消費していた訳で……。そりゃ魔力切れするな。


「まあれだ、俺らに闇魔法は使えねえけど、他はフォローできんだから あんま無茶すんな。

今回の屑どもの片付けくらい俺らでやってねえと 幼女に頼り過ぎの屑になっちまうからな」


テーブルの上で頬杖をつくクルトさんが 呆れたように言うけど、心配してくれてありがとう。けどもうすぐ7歳になるんだから 幼女じゃなくて少女になりますよ。

そこんとこだけよろしくです。


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