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第30話   依頼と相談


「あ~、つっかれたぁ~」

「トニー そんなに疲れてるんじゃ、来年冒険者登録しても 授業の後に依頼は受けられないんじゃない?」

「んなわけないし!来年にはもっと体力ついてるし!」


三姉妹と私以外は 授業の終わりまで ガッツリ運動してたからか、鐘が鳴った途端 トニー君が大の字に寝転んだ。

そっか、私も今日この後 採集行くつもりだったけど、お昼寝したら行けるかな。流石に小鹿は治ってるけど……。


「びお~、もう元気になった?」

「あ、アルクさんもう来てるのかな?俺 呼んできてあげるね。」


帰る準備をのろのろしてたら ハチ君とナチ君兄弟が来てくれた。

あれだけ走ってたのに、ハチ君は全く疲れた様子がない。

昨日の階段のヘタレ具合を知っているからか、ナチ君は言うが早いか 教室を飛び出していった。

お父さんを呼びに行ってくれるとは、大変ありがたい。



然程待つことなく 訓練場の入り口にお父さんが迎えに来てくれた。


「おぉ、今日は運動の日だったんじゃな。随分頑張った様じゃけど、今日は採集止めておくか?」

「えっ!?やる、やるよ。多分お昼寝したら大丈夫だから。」


お迎えの時に ナチ君が授業の事を伝えたのか、お父さんが提案してくれるけど、体力をつけたいし、お父さんへのプレゼントの為にもお金を貯めたいから頑張りたい。


「あ、アルクさん、その採集の事で ちょっと相談したいことがあるんですけど、後で父さんと一緒に聞いてもらってもいいですか?なぁ、ルンも。」

「あ!そうなんです。僕も一緒に相談したくて、できればヴィオちゃんにも一緒に聞いてもらいたいんだ。」


お父さんのプレゼントの事を考えてたら、ナチ君とルン君が何やら相談したいと持ち掛けられた。お父さんは少し考えたけど、この後で良ければ話を聞くとOKした。

私も一緒に聞いてほしいと二人が言ったからかもしれないね。なんだろうか。



◆◇◆◇◆◇



レン君とハチ君は「お腹が空いたから先に帰る」と帰宅してしまったけれど、2人のお兄ちゃんたちと一緒に 1階に戻れば、受付スペースの右側にあるテーブル席で タキさんが待っていた。



「何の相談だろうね。私も聞いててわかるかな。」

「なんじゃ、ヴィオの事で相談したいんじゃないんか?」


お父さんの抱っこのまま移動しているので、内緒話のつもりはなくても 小さな声でも相談はしやすい


「あぁ、アルクさん付き合わせてすみませんね。

実は昨日 うちの息子と レン坊にヴィオちゃんが素晴らしい提案をしてくれたんですよ。その相談がしたかったんです。」


タキさんが言うのは、昨日レン君たちに何気なく言った薬草名人になる為の方法だった。

村の中で採集できる植物を覚えて、ちびっ子たちと土遊びの延長の様に 薬草とそうでないものを採る練習をすればいいんじゃないか。というアレである。


「俺とルンは 冒険者登録をしたから、村の依頼をしながらポイントを稼いでるんだ。銅までは村の外での討伐依頼はないから、毎日学び舎終わりに依頼をうけるんだ。」

「洗礼前の弟たちは依頼を受けられないけど、昨日聞いたみたいに 薬草を採集するのに慣れることは出来るし、ポイントは貰えないけど 報酬は貰えるって聞いてね。」

「うん、村の中で採集できる植物素材は リズモーニ王国全土でも採集できる基本素材が殆どだからね。

勉強にもなるし、お小遣い稼ぎにもなるし、なにより弟の世話を走り回って疲れさせる、だけじゃなくて済む。」


あの追いかけっこは そんな理由があったのか。

それに、ギルド登録をしてなければポイントにはならなくても、素材を納品しているから報酬は出るんだったら、余計に頑張り甲斐があるよね。


「それで? 子供らが登録前に薬草採取を頑張るのはええと思うが、それを儂に相談する理由がわからん。」


ここまで相槌を打ちながら聞いてたお父さんが、タキさんに質問。

そう言えば、相談があるって言ってたよね。


「あぁ、それなんですけど、ヴィオちゃんの薬草採取に 弟達も参加させてもらえないか、という相談だったんです。」


タキさんから 自分で言いなさいと言われたナチ君が 説明してくれた。

村の中にある木が覆い茂っているエリアは、誰かの庭という訳ではないけれど、お父さんの家の周りに関しては、お父さんが木魔法を使って 管理しているから、村でもお父さんの森って言われているらしい。

木の間引きとかも適宜しているから 土の状態も良く、薬草系の素材も他のエリアより沢山生えているみたい。

子供達のお小遣い稼ぎにはもってこいな場所ってことかな。

チラリと隣を見れば、腕を組んだお父さんが難しい顔をしている。


「む~ん、ヴィオも今 採集の勉強と 慣れるために練習中じゃからな。

魔獣が出ない安全な場所ではあるが、川に近付けば危険もある。子供が増えれば それだけ目が届きにくくなる。それらを連日預かるのは無理じゃとしか言えん。

何か危険が迫った時、儂はヴィオを第一に行動することも理解してもらいたい。」


まさかのお断り?

私は川に一人で近づかないよ?

いや、初対面が川だった私が言うのは説得力がないかもだけど、あれは不可抗力だったわけだし。


「お父さん、私は川に近付かないし、危ないことはしないから心配しないで。

ハチ君もレン君も最初にちゃんと説明すれば大丈夫だと思う。」


「あ、あの。アルクさん、流石に毎日とは考えてないんです。僕たちも昨日のヴィオちゃんの採集について話を聞いて、採集の方が纏めてポイントをもらいやすい事も分かったんです。

だから、ナチと僕と1日ずつ交代で弟たちの採集について行くことにしたんです。

初めの日に 採集のコツをあいつらにも教えてもらいたいというのは有るんですが、それ以降は 時々一緒にしてもらえるとって思ってて。」

「あいつら二人とも ヴィオの事 先生って尊敬してるみたいで、ヴィオの言うことなら吃驚するくらい素直に聞くんですよ。」

「ははっ、確かにね。

うちのハチなんて、今朝は自分から起きてきてびっくりですよ。

“びおに算数教えてもらうんだ~” って学び舎に自分から行きたがったのは初めてでした。ヴィオちゃん、君は素晴らしい先生なんだね、本当ありがとう。」


あぁ、レン君も家でお手伝いしたって言ってたよね。

何であの二人が あんなに懐いてくれたのかは いまだに謎だけど、教えたことは素直に実行するよね。

お父さんは3人の話を聞いて笑っちゃってるし。


「まぁ、そういう事じゃったら ええじゃろ。

今日は準備もあるじゃろうから、明日以降じゃな。お前さんのところは下の弟が一緒なんじゃろ?

小さいのがおるんじゃったら ナイフは危ないかもしれんな。」

「それなら、先が丸いハサミを用意しておきますよ。ハチだけならナイフの練習でもいいですけど、兄達が使ってて自分が使えないって拗ねるでしょうしね。

ハサミの準備が出来たところで、ヴィオちゃん先生の採集指導をお願いしてもいいかな?」


ヴィオちゃん先生って……。

先が丸いハサミなら 刺さる心配はなさそうだね。手を切っちゃう心配は勿論あるけど、それは刃物を扱う上で知っておくべきことだし、回復薬もあるから大丈夫だろう。

ナチ君とルン君も 納得した様子で、ハサミが出来たら弟たちに教えるつもりだと嬉しそう。

あぁ、言ってなかったからこそ 二人はさっさと帰ったんだね。あの二人がこんな面白そうなこと知ってて参加しないとかありえないもんね。



リリウムさんにはタキさんから伝えてくれるらしいので、私とお父さんはハサミが出来るまではやることがないので、しばらくはこのまま待機という事になったよ。

ふふふ、ちびっ子採集が楽しみだね。




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