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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第290話 盗賊討伐記録とギルド



翌日の朝食を食べ終わったころ、昨日の兵士さんが宿を訪ねてきた。


「おはようございます。昨日のやつらの取り調べが終了いたしましたので報告に上がりました」


「ネロ!お客様のくつろぎの時間を邪魔しているんじゃないよ!

お客さん申し訳ないね」


「かあちゃん……」


「ああ、ええんじゃ。儂らが旅の途中じゃと伝えておいたから 出来るだけ急いでくれたんじゃろう。

じゃが此処では他に迷惑がかかるからな、部屋でええか?」


爽やかな挨拶に重なるように 女将さんのカミナリが落ちた。

早い時間だったからか 食堂には私たちしかいなかったんだけど、丁度他のお客さんが入ってきたし 客室で聞いた方が良さそうだよね。



「すみません……。ええっと、昨日の盗賊25名ですが、うち2名が賞金首でした。

同じ盗賊団の者もいれば 違うのも居ましたが、何故かアジトの情報も 素直に証言をしておりまして、今日討伐隊が組まれることになりました」


「ほう、それはよかったな。尋問が上手な兵士がおるんじゃな」


「あ……いや、そういうわけではないんですけど、何故か皆 怯えておりまして、怖い思いはもうしたくない、全部正直に話すから 刑に処してほしいなどと言い出しまして、聞かずとも話すという感じでした」


チラっ

ブンブン


「そうか、眠り草で幻覚を見たんかもしれんなぁ」


「お父さんの威圧が怖かったのかもね」


「ああ、そうかもしれません。奴らは 一般人を狙って活動をしていた者が殆どでした。乗合馬車などで休憩中に トイレ事情で離れたものを攫ったり、護衛を付けていない馬車を狙ったりと、基本的に冒険者は避けていたようですので、きっと お父さんの威圧感に恐怖したのでしょう」


チラっ

はぁ~


「まあそれなら仕方がないのぉ。それで、儂らはギルドに行けばええんか?」


「あ、お願いできますか? 私の方で 必要な書類は準備しておりますので ご出立の準備が整われましたら 案内させていただきます。

では、受付で待っております!」


爽やかに部屋を出ていった山猫のお兄さん ネロさん。

気配が無くなったところで お父さんに頭をクシャクシャにされた。

だけどすぐにブラシで整えてくれるんだから 意地悪なのか 甘やかしなのか分からないよね。


既にお着替えは終わってたので、荷物を持ってマントを着れば準備オッケー。

1階で待っていたネロさんに先導されて 冒険者ギルドへ向かう。

流石に朝だから受付カウンターはそれなりに人がいたけど、7時過ぎの今は 朝イチの依頼書争奪戦は終えた時間なので そこまで混雑はしていなかった。


私たちは受付カウンターとは違う 買取カウンターの方へ案内された。


「警備隊です、こちらの方たちが盗賊団の捕縛をしてくれた方です。

証明書はこちらです、報奨金をお願いします」


ネロさんが元気よくお伝えなさるんでね、カウンターに並んでいた人とか 依頼票を眺めていた人とかがチラチラとこちらを伺ってくるんですよ。

これって紙を見せれば良いんだから そんなハキハキ言わなくて良かったんじゃないかな?


「あ、ええ、ではギルドカードをお願いします。って、お嬢さんも?」


「ああ、儂の娘で パーティーを組んどる」


お父さんに促されたのでカードを提出すれば 少し戸惑ったようだけど、ランクを見て 私の首元を見て納得したようだ。


「えっ、お嬢ちゃんも冒険者だったの?」


「うん、でもね、ネロさん 冒険者の事は秘匿事項が多いからね、今回のこれももう少し静かな声でした方が良かったと思うよ?」


ネロさんは驚いた後しゃがみ込み 視線を私に合わせながら小さな声で聴いてきた。

なので小さな声で返したら 自分のやらかしに気付いたらしい。


「そっかぁ、見た目で判断しちゃだめだよな、ごめんな」


「ううん、そうは見えないと思ってるから大丈夫、だけど 危険はいっぱいだからね。

お宿はとっても良かったので 紹介してくれてありがとう」


凄くしょんぼりして 耳も尻尾もへたり込んでしまった。

なので頭を撫でながら 慰めてあげたら少しだけ復活したようで ありがとうと言って立ち上がった。

ちょうどギルドの手続きも終わったようで カードが返却され お父さんが支払い明細の用紙を受け取っている。


「お支払いはリーダーの口座に一括で入金しております。

この度は町の安全を守って頂きありがとうございました」


少し冷たい感じを受けるお姉さんが それだけ言って中に戻って行った。まあパーティーの依頼は基本的にリーダーが支払いを受け取るって聞いてたから問題なんだけど、多分そういう事じゃない。


「寄生でポイント いいよな」


「子供何もしてないのに討伐記録は残るってズルくない?」


「あ~、それで今日の特殊依頼が盗賊団アジト狩りなんだ、あんなガキが居ても捕まえられる奴らのアジトなんだったら余裕じゃねえ?受けようぜ」


などという声がアチコチから上がっている。

受付嬢もそう思ってカードの記録を嫌々にしたのかもしれないね。

そんな声を聞いてネロさんは自分の発言で周囲の冒険者がざわついていると気付いたらしく 外に出た途端もう一度深く謝罪してきた。


「まあ 同じミスをせんようにしたらええんじゃないか? 」


お父さんが軽い調子で言うから 余計に凹んでる。

まああれに同調されたらちょっと嫌だったけど そういう訳じゃなさそうだし、内心お父さんが一人でやったと思っていても、それを口にしないだけの優しさはあるってことだよね。


お父さん的には 盗賊退治をしたのは私だったから、私が貶められるようなことを言われているのが腹立たしい、という気持ちと、だからと言ってバレたら危険だからバラすわけにもいかない。というジレンマに陥っているのだろう。

別に私は あんなこと言われても気にならないんだけどね。


「じゃが、腹が立たんか?」


「ん~、事実じゃないし、よく知らないのに さも事実かのように断言するのって凄いな~、くらいにしか思わないかな。知らない人だしね。

あれが知ってる人だったら ショックかもしれないけど、私の事を知ってる人はそんな事言わないし、それで十分」


「ふむ~~~~」


納得してないかな?


「あとはまあ、是非アジト狩りをしに行って大怪我して来いって思ってる。

残ってる奴らがピンキリのどっち側かは分かんないけど、仮にも盗賊団をしてた奴らだもん、簡単ではないかなって思ってるんだ。

私みたいな子供が居ても大丈夫って言う理由がよく分かんないよね。

本気で私が無力だとしても、お父さんが超絶無双でやつけたかもしれないし、実は子供に見えて成人してるドワーフ女子かもしれないのに。

だから強いのが残ってると良いなって思ってる」


我ながら性格悪いなって思うけど、知らない人に優しくする理由がない。

善意には善意を、悪意には悪意を、

右の頬を殴られたら 顎下アッパーカットしたうえで両頬を殴り倒したい私です。


ヴィオさんは聖女脳ではございません。

どちらかといえば好戦的な人ですし 人間不信気味です

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