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第29話  武術の授業 


昨日のはじめに喧嘩を売ってきたのは何だったのか。

すっかり懐いた黒猫が此処に。


「ヴィオちゃん 弟がごめん。邪魔だったらどけるから。」

「なんでだよ、おれ 邪魔してない。ヴィオ おれ 邪魔してる?」


算数の授業が終わり、次は武術の授業という事で 移動なんだけど、レン君が普通に私の手を取って「行こうぜ」と誘って来たから、見かねたルン君が止めてくれた。

嫌な訳ではないけど、次に動き回るなら水分補給とトイレは行っておきたいところ。

ちなみにもう一人の懐いている子犬は「ぼくおしっこ!」と既に教室にはいない。


「次の移動の前に トイレ行きたい。」


淑女がトイレとか言っていいのか知らんけど、私は貴族じゃないし まだ5歳児だ。

例え恥ずかしい発言だとしても、今知っておけば 次回から言わないようにすればいい。無敵の5歳児なのだ。

濁した方が 多分レン君はショックを受けるだろうし、そのフォローをする方が面倒そうだと思ったからズバッと目的地を言ったんだけど、黒猫兄弟は頬を赤らめて 「ごめんね」と謝られてしまった。

女の子のトイレ発言は駄目だったのだろうか。


とりあえず手を離してくれたから トイレに行く。

トイレにはケーテさんと、赤いリボンのマーレさんが手を洗ってたので、トイレ発言の有り無しを聞いてみた。


「言って良いんじゃない? 聞かれることがないから言わないけど、言わないと分からないんじゃ 言った方が早いわ。」

「あらぁ、そうねぇ。大人たちは “お花摘みに” なんて言うこともあるけれど、レンだったら 自分も一緒に花探してやる!とか言いそうだわぁ。」


ケーテさんは隠さない派で、マーレさんは お花摘み派。

ここでも “お花摘み” という言葉で通じるんですね。

そして、レン君だったら確実に花の想像とかしてそうで笑う。

ということで、レン君相手にはトイレに行ってくる。という答えで正解だったっポイ。


無事に粗相することなくトイレタイムを済ませて 訓練場に入ると、昨日と同じように階段ベンチに座っている子や、地面でストレッチをしている子など自由だ。

ケーテさんは棒のようなものを持って、身体を伸ばしている。槍とかの長柄武器が得意なのかな?似合いそう!


目が合ったレン君は、ボっと顔を赤くしてそっぽ向いてしまったけど、トイレというワードがそんなに彼を恥ずかしがらせてしまったのだろうか。

でも 一緒に花を摘みに行きたいとか言われても困るしな。

少年の照れポイントは分からんが、この時間も年齢順だとすれば少し困るね。



そんなことを思いながら 私も軽くストレッチを行う。

ストレッチは毎朝お父さんも一緒にやってくれるから 楽しいんだよね。

久しぶり過ぎて痛いというお父さんが面白くて、結構しっかりストレッチの時間は作ってるんだ。



チリ~ン チリ~ン



「おぉ~、今日は皆 やる気だな。じゃあ走るぞ。」


ローテンションで入ってきた虎獣人のエデル先生は 皆を見回してサッサと訓練場の壁沿いを走りだす。

え?え?え~?

トニー君、ロン君が直ぐに先生の後ろに続き、ナチ君、レン君、ハチ君と続く。流石犬と猫は走るのが早い。

ケーテさんは尻尾が重いのか、あまり走るのは得意ではないようで、先生のペースには合わせることなく走っている。

羊三姉妹は言わずもがな。優雅に歩いていらっしゃる。

ケーテさんの少し後ろを追うように、一定のペースを保てるように 走る。走 る……。は…し…る……。


「無理をする必要はないぞ」

「おぅ、人族なのに頑張ってるぞ。すごいな!」

「無理しちゃだめだよ。休憩していいからね。」

「ヴィオ……頑張れ。」

「びお~、一緒にはしろっか~?」


何度抜かされたのか、走ってたはずだけど 今は歩いている。

だけど足を止めない事だけ意識して頑張ってたら、追い抜くときに皆が声をかけてくれる。


先生、何周とか、何分とかのゴールを最初に教えて欲しかったです。

トニー君は跳ねるように走る。ウサギと亀じゃないけど、持久力がないと思ったのに、全くペースが落ちてない。

ルン君は 毎周 心配しながら声をかけてくれる。優しいお兄ちゃんです。

レン君は まだトイレを引きずっているのでしょうか?

ハチ君も犬族としての能力全開ですね。お兄さんのナチ君と、周回を重ねる度に 楽しそうな尻尾ブンブンが増しています。



「あ゛~~~~~、もう無理‼」


「あらぁ、よく頑張ったわぁ。」

「まぁ、本当よね。私たち2周で限界よぉ。」

「あらまぁ、ヴィオちゃん 凄いわぁ。お疲れ様~。」


羊三姉妹は2周をゆっくりウォーキングして、早々にベンチで休憩していました。

私も足がプルプルしてるし、休憩エリアまで戻ってきたところでベンチに座り込む。

マーレさんがクリーンをかけてくれて、ミーレさんが水筒を差し出してくれて、ムーレさんが涼しい風を吹かせてくれている。

はぁ~、幸せ。


先生が途中で抜けてきて 私の顔色をチェックしてくれたんだけど「2周くらいで休憩して良かったんだぞ」とか、最初に言ってよ!

4周目とか、小鹿みたいになってたわ。



基礎体力をつける目的と、授業の初めに身体を温める為にランニングをしていると聞いて、次回からは2周にしておこうと誓ったよね。

先生は説明が足りなさすぎると思います。


結局初日の今日は、とてもじゃないけど これ以上の運動できる体力は残ってなくて、三姉妹と一緒に見学することに徹した。

年齢に関わらず、色んな武器を使って 型の練習や 打ち合いなどをしており、下の年齢の子達は 自分にどの武器が合うのかを探している最中のようだった。


私は何が得意になるかな。

剣のイメージはないな。母さんが戦ってる姿は見たことがない、というかあの時も魔法を色々使ってたけど 武器は持ってなかったし。

あの不思議な杖も使っているところを見たことはなかった。


あぁ、そうか。銀の上級だった母さんでさえ あんな風にやられちゃったんだ。

私も全属性の魔法が使えたとしても、武器は一通り使えるようになりたい。

一緒にダンジョンに行くんだから お父さんの得意武器を聞いて 邪魔にならないのが良いかも。


魔法も 色々使え過ぎたら 目をつけられそうだもんね。

基本は戦士……は無理か。シーフとかの隠密系ってことにするか。

そしたら双剣とか、暗器とかかな。


「あらぁ、参加出来なくて落ち込んでるかと思ったけど、大丈夫そうねぇ。」

「まぁ、本当ね。楽しそうだわ。」

「あらまぁ、ヴィオちゃんは 学び舎をとっても楽しんでいるのねぇ。」


うん、凄く楽しい!



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