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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第278話 辺境伯邸での試食会



「まあ、お前たちが来てしまったのは仕方がない。

思っていた以上の量を作ってくれたから 儂らだけでは食いきれんかっただろうし 丁度良かったな。

ダンブーリ先生のところから来てくれた料理人たちは ここから2月程 うちで皆の研修をしてくれることになっている。

そして 急に頼んだのに料理をしてくれたアルクにヴィオ、其方ら親子の楽し気に作る姿は 見ていてこちらも楽しくなったぞ。一品かと思いきや 驚きの数だ、楽しみに食させてもらおう。

では、料理人たちも 様々な味を実際に確認するのが今日の試食会の目的だからな。大いに楽しんで食おうではないか!」


「「「わぁっっ!!!!」」」


なんと豪快な人なのか。

ガハハと笑って乾杯をすれば 一口 塩から揚げから選んでくれた。


パクリ


「んんん!?」


がッと目を見開いて 鼻の穴も膨らんだかと思えば 残り半分を丸ごと食べてしまった。

モグモグゴックン、そして二つ目へ。

いやいや、結構大き目に作ってますけど、肉汁ジュワー大丈夫です?

揚げたてホヤホヤよりは多少冷めてるだろうけど、揚げ物の恐ろしさは噛んで出てくる肉汁の熱さですよ?


二つ目を食してから一言「美味い!」だけ告げて 別の味のから揚げを取ろうと腰を上げる。

それを見た給仕担当の方が 別のおかずも二つずつ盛り付けて おじ様の前に並べていく。

から揚げ以外もあるけど、わんこそば状態ですよ。


私はちょっとそれを見て固まってたんだけど、他の家族もそうだったみたい。

だけどすぐに気を取り直して 自分達も大皿から少しずつ取り分けようとするので 給仕さん達が慌てて取り分けてあげてます。

子供達は多いだろうから から揚げは1つを半分こしてあげてますね。


私たちも気を取り直して 自分の分を自分で取り分けます。

試食の必要がないので、食べたいものだけ。お父さんたちはきっと全種類食べれるけど、私は厳選しないと食べきれないからね。


他の皆様も一言「んっ」とか「おいし」とかだけ言った後は無言です。

お貴族様だからカトラリーを動かす音だけが聞こえる中、驚くべき速度で山盛りの大皿から料理が消えていきます。

妹さんは同じくらいよく食べているけど、夫人はゆっくりなので 獣人クオリティーなのかもしれない。


料理人たちは 給仕担当の手がない瞬間にパパっと取ってじっくり味わって確認しているけど、そんなにゆっくりしてたら多分無くなりそうですよ。


まあ彼らが数か月いるなら何度でも試食は出来るか。

お貴族様とのお食事なんて気を使うかも! とか思ったはずなのに、全くそんな事はなく大試食会は終了。

最後はちょっと 大人げない戦いがありましたが 料理人さん達も直ぐ覚えるだろうし 是非作ってもらってくださいな。


私たちが採集したのはお隣の領地でしたけど、プレーサマ辺境伯領地内にも 他に豊作ダンジョンはあると聞いている。

上級だから まだ行けないけど、機会があれば行くつもりだ。

肉は絶対に他の領地より大量に採れるしね。


5歳のボーイは お野菜よりも から揚げがお気に召したようで、途中からは半分こせず食べていらっしゃいました。

お口の周りが油でテッカテカになっていますが それもまたワンパクで良いと思います。


「いやぁ、これは美味かった。これだけの種類の料理が作れるはずだった素材を見落としていたとは 残念ではあるが、逆に言えば これだけ可能性を秘めた素材が見つかった事で 更に今より発展するという事だな。

ハズレ素材と呼ばれていたものがこんなに美味しいとは恐れ入ったが、他のハズレもそうなのだろうか」


おじ様に見つめられるけど、 え?私が見つけたってバレてるの?

チラリとお父さんを見上げれば 頭を撫でてくれた。


「そうですな、まだ入ってないダンジョンもありますから そこで見つけたハズレが使えるかどうかはわかりませんが、豊作ダンジョンにあるという事は食材ではあるんでしょう。それをどのように活かせるかは 味見をせん事にはどうにも言えませんな。

ただ、グーダンの場合は あのダンジョンにある食材との相性が非常に良かったと思います。

じゃから ハズレがあればそのダンジョンの素材との組み合わせから まずは作ってみればええんかもしれませんな」


確かに、ナムルにする食材は大量にあったし、から揚げにして!っていうくらいココッコも後半出て来たよね。

まさか、私達を美味しく食べてね♡というダンジョン様からの プレゼンだった?


「はっはっはっは、そうか、確かにそうかもしれないな。

では まだ其方は銅ランクであったか? 銀ランクに昇格した際には 是非我が領地にある豊作ダンジョンにも足を向けて欲しい。

そして そこで美味いものが見つかったら また食わせてくれ」


え? また来いと言われてます?

私只の冒険者ですけど?

チラリとギルマスを見れば ポリポリ顎をかきながら視線を合わせてくれません。ぐぬぬぬ!


「其方は料理人ではなかったのか?

冒険者とは 父上やお祖父様のような身体の大きな人がなると聞いていたが其方のような小さき子でもなれるのか?」


小さなボーイに小さな子と言われております。

これは私が答えていいものなの?

貴族と平民が喋るのって不敬とか言われん?

直答を赦す!とか言われんと駄目とか無い?


ちょっと困って固まってたら ボーイも困ったらしくてお父上に声をかけてます。

え?さっきおじ様とは直接喋ってたじゃないかって?

だって、抱っこからスタートの人だよ?

それと この人たちは何か違うじゃん。


「ヴィオとやら、すまんな。この場は公式な場ではない故 普通の態度で大丈夫だ。

私たちが来るまでは 父上たちとも楽しく過ごしていたのだろう?

今の其方らは父の客人だ、なので言葉使いなども気にせず 息子の疑問に答えてもらえると嬉しい」


おじ様と楽し気にしてた覚えはあまりないけど 不敬扱いされないならまあいいかな。


「えっと、普通の冒険者登録は 7歳の洗礼式を終えてからする人が多いそうです。

私は母親が死に、川で溺れていたところを 今の父に救ってもらいました。

その関係で 住民登録が必要だったのもあり 冒険者登録を5歳でしてもらいました。これは国を越える様な旅商人の子供達も同様のことがあるそうです。

なので、なれるか、なれないか、という質問に対しては冒険者になれるというお答えとなります。


そして、身体の大きさですが、冒険者は 戦う人が多いですので 大柄で力が強い人が多いのは確かだと思います。

だけど 女性もいますし、男性でも魔法使いの人は小柄な方もいます。種族によっても違うと思いますが、私はまだあまり他の冒険者と会ったことがないので分かりません。

ですから大きな人でなければいけないという事はないと思います。

ご質問の答えとしては これでよろしいでしょうか?」


「まぁ、お母様が……」


「随分しっかりているな。あの子は平民ではなかったのか?」


「ヴィオは最初から あんな感じでしたよ。目上の者には丁寧にって母親に躾けられたんでしょ」


「ほう、それに一月もダンブーリ先生の屋敷で居ったんだろう?あの方は貴族としては変わり者だが 周りにいる者たちも許容していたというのを聞いて驚いていたが 成程、納得だな」


「其方 6歳なのに 凄くしっかりしているな、ぼ、私が知らぬ事も知っておるのだな。

その様な事はどこで学んだのだ? 平民は家庭教師などないのだろう?」


キラッキラの目で見てくるボーイは レン君とそっくりですよ。尻尾ブンブンですよ。


「それは坊ちゃまのお祖父様のお陰です。

冒険者ギルドには 学び舎というものが併設されています。

其処では 銅ランクになっても直ぐに死なない事を目的として 様々な事を教えてもらいます。

文字の書き方、読み方から始まり、希望すれば歴史や領内の地理も学べます。

数字の読み方、計算方法、これは他国に行った時など 依頼を受けた時に騙されないようにするための勉強もあります。

座学以外には魔法の練習、武術の訓練もあります。


これらは 銅ランクになれば卒業となりますが、ランク上げをせずにゆっくり10歳まで勉強することもできるのです。

これらの学び舎に通うには 本来お金が必要ですが、このプレーサマ辺境伯領地内にある学び舎は 坊ちゃまのお祖父様が完全無料になさってくださったおかげで 誰もが通うことができるのです。

本当に凄いことだと思いますので、私はお会いした時に感謝を申し上げた次第です」


ボーイのキラキラは 今度おじ様に向けて注がれ始めた。

そして姉姫さまも同じように キラキラした眼差しで おじ様を見つめながら 「お祖父様そんな事をなさっておいででしたのね」とウットリ呟いてます。そうなの、あなた達のお爺ちゃん凄いんですよ。


「父上、領民からこのように慕われるというのは素晴らしいですね。

そしてまだ洗礼前に見えるこの幼子でさえ その事実をこのように受け止めているというのは驚いた。

学び舎というのはそんなに高度な勉学が出来るのかい?」


「いや、んな訳ないです。10歳近い子供でも ここまで凄いのは会ったことないですから。

ヴィオを標準で見ないでください」


ギルマスが領主様に言ってますけど、羊三姉妹は 理解していると思いますよ。

孫たちに凄い凄いと言われて 照れまくっているおじ様、シブオジの照れ顔とかヨキですね。

使用人の皆様も 平民の私が お貴族様をちゃんと尊敬していることが分かったようで 満足げ。うんうん、不敬だってなることはなさそうで安心しましたよ。


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