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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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〈閑話〉メネクセス王国 24

銀ランク上級〔土竜の盾〕リーダー テリュー視点


皇国の子爵領で 暗殺部隊の生き残りから話を聞いた俺たちは 一度絶望しそうになったものの、ネリアの話によって希望を持ち始めている。

直ぐに伝達魔法で待っている3人に伝えてメネクセス王国に戻ることにした。


「まだ雪も深いし これから一月ほどはもっと雪が増えるよ?大丈夫なのかい?」


「ああ、急いで戻らないといけなくなったんだ。世話になったな」


宿屋の女将は 客が少なかったからなのか、何かと世話を焼いてくれた。

ヴィオの生存確率があると分かった事で 直ぐにでも発つことを決めた俺たちを心配しているが、長居するための言い訳にしていただけで、魔獣も出ないただの雪など 俺たちには問題ない。

宿を出れば 雪がちらついているが 全く問題ないな。

俺たちは意気揚々と 町を出て レスが待つ町へ向かう。既に伝令魔法は飛ばしているから もしかしたらあっちも俺たちを迎えに来ているかもしれないな。




レスと合流し、国境から2つ目の町でアンと合流、二人もヴィオが生存している可能性を疑いもしていない。


「だって あのアイリスが作った魔道具でしょう? 自信作だって言うなら 絶対大丈夫だわ。

あの子の使ってたあの変な杖も 威力がバカ強だったじゃない。キラキラ光る理由を聞いたら “その方がヨウシキビっていう事らしいんだよね。よく分からないけど” とか言ってたしさ」


ああ、仲良くなってから 一緒に上級ダンジョンに潜った時に使ってた杖な。

魔法使いの杖は 大抵トレントの枝を使ってる。トレントの種類が違うことはあるけど 見た目は変わらない。あとはミスリルの杖を使ってるやつもいるけど、トレント材に比べれば重いし 杖自体を武器にするような奴しか使ってるのを見た事がない。


だけどアイリスのそれは全く違った。

まず短い。普通は自分の胸くらいまでの長さがある杖を使うことが多いのに 手で握れるくらいの大きさの杖は 短剣と同じくらいだったと思う。


それから派手。通常の杖はシンプルだ、杖素材の先端に魔石が付いているくらいで、まあミスリル製の方は多少魔石の周辺に掘り込みデザインがあって凝ってるけどそれだけだ。

あの派手さはなんというか、貴族のガキがヒラヒラしたドレス着てるみたいな感じだ。


魔法をぶち込むときに 何故か杖の真ん中にある魔石が回りながらキラキラ光るのもよく分からなかったけど、本人も分かってないという意味不明さ。

知らない人の前では使わないと言ってたが そういえばあの杖はどうしたんだろうな。


そんな懐かしい話をしながら、最短時間でメネクセス王国に帰国した。

約4か月ぶりの旦那との再会が嬉しいのは分かるが 尻尾にしがみ付いたまま離れなくなってしまったネリアのせいで、とりあえずヘイジョーへの連絡は俺のほうでやっておくことにした。



◆◇◆◇◆◇



ヘイジョーのギルマスからは ネックレスの件をフィルに伝えるのはもう少し先にすると連絡が来た。

まずはヴィオの生存が分からないと何とも言えないし、分かれば それを奪われた時の話を聞けるかもしれない。

ネックレスはもしかしたら アイリスが持っているのを見た子爵が 似せたデザインのものを作らせたのかもしれないし、もしそうであれば 問いただした後に国際問題になるからだという事だった。

まあ確かに 魔石の存在を確認できてないし、聖属性も本当にあの娘が発現してたのかもしれないしな。


その結果をメンバーに伝えたところ それでいいんじゃないかとの事。


「だって あのネックレスが本物だったとしたら あの子が聖魔法を使えなくなるのは時間の問題だし、そうじゃなかったとしても 教会に隔離されるのは確実だもの。

自由が担保されるのはあと数年って事だから どうでもいいわ」


「そうね、あの家族じゃ どうあっても破滅しそうだもの。フィルとの再会だって 私たちが間に入ってあげればネックレスが無くても叶うしね」


まあそりゃそうだな。

ギルマスからも 引き続きヴィオの捜索を頼むと言われたので 俺たちは数日の休憩を挟んだだけで 直ぐに旅立つことにした。

皇国とは違い リズモーニは冒険者ギルドも大抵の町にある、店の規模は違っても 買えないものがないって事はないだろう。

必要最低限のものだけを購入したらプラネルト辺境伯領地を南下し リズモーニ王国との国境があるエクロヤを目指す。



「あ~、魔獣が居るっていいな!」


「ええ、あの町は安全かもしれないけど 刺激も無くて酒と博打くらいしか逃げられないんでしょうね。

ほんっとうざったかった~!」


「過度なストレスは健康によくないからね。うんうん、戦うのはストレス発散に良いって事が分かったわ」


「おう、俺も一人だったしな 伝言が来ないとやることもねーし、人生で一番本を読んだわ。

身体がなまり過ぎて この辺である程度動かしとかねーと 魔境に行くのは危険だな」


「ほんと、私も何回 魔獣狩りだけしに戻ろうかと思ったわ」


「お、お前らも大変だったんだな……。ネリアは 程々にね」


辺境の山沿いは それなりに魔獣が湧いて出てくる。街道を通れば安全だけど 俺たちは敢えて距離の短さもあるけど 魔獣と戦える危険な道を選んでいる。

あの国では 戦うこともできず、だけど鬱憤が溜まるようなことが多すぎて イライラしていたからな。

一人きりで伝言役の為に町で滞在していた二人も同じなようで、歩きながらザクザクと魔獣を切り倒し、刺し殺し、魔法で仕留めていく。俺たちを知らない人が見れば ひかれるかもしれない。

オトマンだけは 定期的にソロでも受けれる依頼を受けていたようで 寂しかった以外にストレスはなかったらしい。

自分の嫁が弓でバンバン倒していくのを見て ちょっと心配しているくらいだ。


だけどこっちの辺境よりも これから向かうプレーサマの北西部は 山と川のダブルで魔素が流れ込む環境のせいで 魔境と呼ばれる場所だ。

そこに行くまでには 4か月で鈍っちまった身体を戻さねえとな。

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