第253話 お屋敷での日々 その8
朝6時前に起床し お部屋でストレッチ
その後 地上の訓練場でのランニングで汗をかいたら 朝のクリーン浴
室内着というワンピースにお着替えをしたら ドゥーア先生と朝ごはん
8時前 先生が学園に行くのを見送ったら 図書館で読書
10時過ぎに 訓練着にお着替えしたら 地下訓練場で 騎士の皆さんとの手合わせ
訓練終了後にゆっくりお風呂、マッサージを受けるのもこの時間になった
12時前に昼食を頂いたら 腹休めを兼ねて 騎士の皆さんに回復魔法をかける
それが終われば 1時間のお昼寝
お昼寝の後は夕食時間まで魔法陣の勉強を図書館で行う。
お父さんは 騎士訓練に付き合ったり キッチンで料理長にレシピを教えたりして過ごしているらしい。
記号の書き取りを数日続けた3日目、上手になっているからと抜き打ちテストが行われた。
属性の名前の横に丸括弧が白抜きで用意されており、空欄に記号を書けというものだ。
突然のテストは緊張しちゃうので前日にお伝えくださいませ。まあ正解したけど。
書き取りをクリアしたことで 今は魔法陣を描く練習をしています。
この世界にもあるんですね、コンパス。
勿論 小学生の時に使った覚えのあるのとは違うけど、原理は同じ。ただ 紙に穴が開かないように針ではないけどね。
「円がズレると全てがズレます。教師によっては 先に角から記載する人もいますが、私は絶対に外側の丸からです。その方が 完成図が美しいですからね。
三角だけは円が一つですが、それ以上のものは円が二重になります。中心部分がズレますと その先の記号を入れるための円が入りませんからね」
記号が終わったら 延々と円を描いてます。
針じゃないから真っすぐ立てないと円がズレるんですよ。
椅子の上に立って書いてる現在。マジで難しい。
でもこの基本が出来ないと 発動しないって言われたら頑張るしかないよね。
円だけを延々描いて3日目、安定して丸を描くことができるようになったので、今度はその円の中に図形をはめ込む練習が始まった。
「う、う、うぅぅぅぅ」
「これは 学園の生徒でも直ぐに出来るものではありませんからね、落ち込む必要はありませんよ。
練習あるのみです」
「はぁい……」
丸は良い、丸は良いのだが その中に三角を入れるとなると 中々難しいのだ。
パソコンの図形を組み合わせるアレなら 貼り付けて ドラッグして コピペして ズレても “元に戻す” ボタンで戻れるけど、手書きでインクを使っているここでは無理だ。
三角が二等辺三角形にならないように、正三角形になるように……。
「ブン先生、三角を描いてから丸を重ねた方が楽じゃないですか?」
大きな丸も毎回完璧に描けるわけじゃない、なのに三角でも躓くから中々先に進めない。
弱音を吐いたら ニッコリ微笑むだけで許可は貰えず。ハイ、頑張ります。
「ヴィオ嬢、屋敷に来てもらって1週間だが 生活に不便はないか?
全く外に出歩くことなく 訓練と勉強の毎日だと聞いたが 流石に飽きるだろう?
明日は聖の日だし 王都観光はどうだい?」
風の日の夕食時、学園も今日で前期が終了となり 1月弱の長期休暇となるらしい。
勿論休暇中も学園に教師は数名いることから 補講を望む生徒や自習学習をしたい生徒は通うことができる。
ドゥーア先生も基本的に学園で過ごすか 遺跡調査に出向くことが多かったんだけど、昨年はサブマスからの手紙のせいで ちょっとフライング気味に有休まで使ってサマニア村に来てくれた。
年末年始も同じくらいの長期休暇があるけど、その期間は貴族の社交が最も忙しい時期らしい。
なので、年末年始だけは殆どの先生たちも 貴族としての社交に出る必要があり、学園は完全閉鎖するみたい。
「ん~、ダンジョンでは何週間も洞窟の中とか慣れてますし、ここでは本を読んだり、訓練したり、お勉強したり、結構違うことをしてるから全然飽きないです」
合間合間で お着替えもしてるし、髪型も毎回色々やってくれるから 次はどんな感じになるんだろうって楽しみになってきてる。
お父さんも まとめ髪の時には アレンジ方法をメイドさんに教えてもらって 練習してたりするしね。
「はははっ、楽しんでもらえているようで安心した。
しかし勉強を飽きずに楽しいと思えるのは素晴らしいね。
今は魔法陣の図形を繰り返し練習しているのだろう?あれは学生たちでも途中で投げ出す者が多いんだが 凄いねぇ」
確かに上手くいかないので楽な方へ逃げようとしました。
だけど魔道具作りに魔法陣は必須だから 絶対に習得するんだ。
「そうかそうか、では 邪魔はしない方がいいね。
来週は魔導学園を案内しよう。勉強のスケジュール調整は 屋敷にいるほうが良さそうかな?」
ドゥーア先生が聖属性と闇属性の資料は持って帰ってきてくれたおかげで、午前の読書の時間はそれを読んで勉強している。
あ、ちなみにファイアバレットに関して書かれていた書籍だけど 勇者様の物語から始まるという斬新な本だったよ。
『~~~、もう無理だと皆が諦めたその時、勇者様が手を振り上げれば たちまちのうちに数多くの火球が現れ なみいる魔王の手先をなぎ倒した。その魔法を見た者たちは “天から星が降ってきたようだった” そう言っていたそうだ。
私もその素晴らしい姿を目にしたかったものだ~』
第一章は伝記と作者の感想が入り混じった内容だった。私としては天から星が降ってきたのであれば ファイアバレットではなく メテオとかの魔法だったのではないかと思ったけど、第二章ではその魔法についての想像が書いてあった。
第二章では 勇者様が使った火球を沢山作る魔法は何だったんだろうと 仲間たちで文献を漁って研究した時の苦労話が書いてあった。
第三章で 呪文を作る時の構想内容が並べてあり、この本が置いてあるのは この部分が今の呪文作りの原案だったからだろうと思った。
ちなみにファイアバレットの呪文は非常に長くて 装飾語が多すぎたので覚えていません。
「魔導学園は他国の貴族の他、様々な種族の方々も受け入れている関係で その方たちが過ごしやすいように整えられていますからね。
学園内の見学は観光としても楽しんでいただけると思いますよ」
ブン先生も 学園の見学はした方がいいと言ってくれたので、週明けには一度学園に行くことが決まった。
参加者は ドゥーア先生、ブン先生、エミリンさん、お父さんと私だ。
「母校に行くのは卒業以来ですわ」
エミリンさんもドゥーア先生の生徒さんだったんですね。
学園の卒業生なら 先生も知らない生徒だけの秘密の場所とかも知ってそう。是非案内してもらいたいです。




