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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第250話 お屋敷での日々 その5



「さて、では午後からは魔道具か調合をお教えする予定ですが ヴィオ嬢は魔道具にご興味があるという事でしたね」


食後のデザートまで頂いたところで ブン先生が午後の予定について相談してくれた。

そうです、魔道具作ってみたいです。

マジックバックも作ってみたいし、お母さんが施してくれた “使用者制限” の魔法陣も気になってます。


「ははっ、そうしていると 年齢相応に見えるのが不思議ですね。

いや、年齢相応に見える今の方が普通なのでしたね。

では まずは魔道具を作る為に必須となる魔法陣のお勉強からしましょうね」


おお、そうか。いきなり道具を作るのではなく魔法陣が必要なんだね。

なんか魔法使いっぽくて格好良いね。


「ふむ、では儂はキッチンをお借りして試食品を作るかの」


午前の死屍累々だった騎士たちを思えば、午後もとなると彼らの通常訓練が出来なさそうだもんね。

お父さんも醤油と味噌の使い方はマスターしているから お任せしちゃおうかな。


「では キッチンへご案内いたしますわ」


「ああ、材料が部屋にあるから 先に持ってこよう」


「あ、お父さん一緒に行くね」


マジックバックの出し入れは私じゃないと使えない。お父さんだったら一緒に使えるようになればいいんだけど、安全面を考えて今のままにしておくように言われているのだ。


「材料、でございますか?キッチンにないものでしたら 市場へ走らせますが……」


「ああ、ダンジョンでしか採れん素材でな、これまではハズレじゃと言われて採集してくるような冒険者がおらんかったから、店には売っておらんかったんじゃ。

野菜類もまだ豊作ダンジョンで採集したのがあるからな、そっちの足りん分は屋敷の方で補充してもらえると助かる」


食材通りにも売ってるところはなかったもんね。

それを普通に買えるようになってほしいからこその試食会だ。

エミリンさんも納得したようで 一緒にお部屋まで来てくれることになった。荷物を取り出したらお父さんは エミリンさんと一緒にキッチンへ。私はノートと筆記用具を持って図書館だ。



◆◇◆◇◆◇



「では魔法陣について説明しますね。

魔法陣とは 属性魔法を自分の魔力を使って行使するものとは違い、特別な用紙や 道具に印を刻むことで 希望する魔術を行使するというものです。

用紙には一般的に魔獣の皮で作った羊皮紙が使われますが、大規模な魔法陣などの場合は用紙自体を調合することもあります。

インクも同じですね。より高度な魔法陣を描く際には 特別な魔獣の素材が必要となります。その為 魔道具は高価なのです」


紙じゃない場合は ミスリルとか魔力伝導率の高い金属を使って彫ることもあるんだって。魔法陣を彫るってめっちゃ大変そうだけど 何か方法があるのかな。

インクも用紙も特別で、作るのにお金がかかるからこそ 魔道具関係は高いんだね。原価が高けりゃしょうがない。


始まったのは魔法陣の書き方、ではなく、魔法陣を書くときに必須となる記号の勉強だった。

様々な記号と文字が入る事で完成するようだけど、見せてもらった完成形の魔法陣は なんか格好良かった。

三角と丸が入り乱れて、そこに記号と文字が描いてある様は まさにファンタジーの世界!


基本の形は 三角、四角、五芒星、六芒星の4種類。

全てに共通するのは角の先端の円の中に記号を描くこと。この記号は聖、闇、木、土、水、火、風の基本七属性の他、古い文献から発見された記号を用いているらしい。


そして基本の形というだけあって、アレンジはし放題。

四角の中に三角の魔法陣を入れたり、六芒星のどこかにある記号を重ねて使う形で その上にもう一つ別の魔法陣を描くこともできるらしい。


ただし、そういった複雑なものは さっきブン先生が言ってたように、特殊な用紙と特殊なインクが必要で、その上失敗もしやすいとなれば 挑戦する人は皆無と言っていいのかもしれない。

複雑怪奇な魔法陣も 魔法陣の資料というよりは 物語の挿絵として描かれているものだったしね。


しかしながら 覚えるべき記号が多いよ。

これは文字ではないのか 日本語翻訳も出てこないので 覚えるしかなさそうで泣く。

基本属性は2つで1つの記号になっているようなんだけど、水と木は1つが同じ記号なんだよね。書き間違いをする人が多いから気を付けるようにと言われたよ。


基本属性と 良く使用される記号を書き写し、それを何度も書いて練習する。


「文字の大きさは揃えるように、一つの円の中に入れる時、大きさが違えば別の記号ととらえられ発動しません。

この円の中と、この帯に描かれている文字も大きさが違うのがわかりますか?しかしそれぞれの中の文字の大きさは揃っているでしょう?」


こ、細かい。

だけどその細かさこそが魔法陣の発動には必要らしいので、書き取り練習をひたすら行い この日の授業は終了した。

書き取り練習にノートを使うのは勿体ないからと ブン先生から練習用の紙を渡されてたんだけど、授業の終わりに先生が【クリーン】をかけて文字を消していた。

確かに、それなら繰り返し使えて便利だね。


「先生、それはインクをクリーンで洗い流したって事ですか?」


「その通りですよ、こうした反復練習が必要な時は 少し厚めの用紙を使うのです。魔法陣作成の時も同様ですね。何度も練習用紙で繰り返し練習をして、最も上手に描けたものを見本として 隣に置いて、本番の用紙に記載していくという感じでしょうかね」


おぉ、意外と堅実な行動をするんだね。

貴族だから 「ああ!失敗した!」クシャクシャぽい。って紙屑の山とかが出来てると思いきや、そんなことありませんでした。


「ははっ、魔法陣に携わるような研究者は いくらお金があっても足りませんからね。実験には出費がつきもの、出来るだけ削減できる費用は削減すべきなのですよ」


おぉ、切実な理由があったようです。

うん、でもその考え方は 好感度が上がりますね。


「さて、ではそろそろ 夕食の時間ですね。エミリンが呼びに来る前に参りましょうか」


もうそんな時間?

パッと窓を見れば 空は赤く 既に夕方になっていることが分かる。

えぇ!? 昼食後 直ぐから始めたのに 書き取りだけでこんなに時間が経ってたの?


「素晴らしい集中力でしたよ。大人でも 途中で飽きてしまう方が多いのに、全く集中力がぶれませんでしたね。

その集中力は魔法陣製作には最も必要とされる能力ですからね。ですが次回は途中で休憩を入れましょうね」


最初にはなかった筈の小さなテーブルが用意されていて、すっかり冷めたお茶が置いてあった。

多分ブン先生が淹れてくれたんだろうけど、全く気付かんかった。


ブン先生と図書館を出て 1階に向かっていると 玄関が開いてドゥーア先生が帰ってきた。


「ドゥーア先生、お帰りなさい」


「おお!ははっ、こうしてお帰りと言ってもらえるのは中々いいものだね。

はい、ただいま。勉強は出来たかな? この後ゆっくり聞かせてもらおう」


ちょっと驚いた後に とても嬉しそうに笑う先生、ブン先生が隣で「このまま所帯を持つのも良いと思ってくれたら良いんですけどねぇ」とか呟いているけど、エルフは長寿だからねぇ。婚活を焦らないんだろうね。


ドゥーア先生は一旦お着替えの為3階へ、すれ違うように お父さんが2階から下りてきた。

そういえば調理はどうだったのかな?

食堂でゆっくり聞かせてもらおう。

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