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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第249話 お屋敷での日々 その4


11名の回復は全員分終了し、最初は疑いを持っていた騎士たちすら 感謝の言葉を告げて部屋を出ていった。残っているのはブン先生、隊長さん、お父さんの三人だけだ。


「…………。」


「ヴィオ嬢、魔力切れの症状はありませんか?」


「ないですね。皆傷は小さかったし 打身も一部だけだから」


「いや、一部とか、小さいとかって、関係なくないことないのか……?」


ノートを纏め終えたブン先生が魔力残量を確認してくるけど、内臓の怪我をしているような人もいないし、想像が難しいような怪我をしている人が居なかったので、然程魔力消費は多くない。

隊長さんが質問なのか 独り言なのか、言葉が少しおかしいけど ブン先生が放置しているので私も放置です。


「ところで “痛いの痛いの飛んでいけ” とは 回復魔法の呪文でしょうか。外傷の時に仰ってましたが 打身の時は無かった事を思えば、傷を治すために効果が上がる呪文でしょうか」


最初の一人目の時に 思わず口にしてしまったおまじない。2人目は小さな切り傷だったから そのままヒールをかけようとしたら「さっきのは言ってくれないのだろうか」と懇願されてしまい、外傷の回復には全員おまじないを唱える羽目になったのだ。


「え、いや、あれは……」


「スティーブンさん、回復魔法の使い手は希少なんだろ?多分秘匿情報とかになってるんじゃないか?」


ちょっと呟いただけの意味はない言葉だったと言えずにいたら 随分な誤解がうまれております。お父さんは ちびっこ薬草採収の時、転んで泣いているちびっ子におまじないを唱えてあげていたのを知っているので クツクツ笑ってます。

ブン先生が納得しかけたところで 誤解は早く解いておいた方が良さそうだと思って 正直に告げた。


「子供へのおまじない、ですか?」


「母さんが 小さい頃によくやってくれたんです。小さい子って 転んだりすると 大した怪我じゃなくても泣くでしょう?

そういう時に ぶつけたところを撫でながら “痛いの痛いの飛んでいけ~、お空の向こうに飛んでいけ~”って痛みを掴んで 空に投げるふりをするんです。

そうすると 子供は痛いのが投げ飛ばされたと思って泣き止むし、痛いと思ってた場所も平気になるって事ですね。

あの時は お父さんに投げ飛ばされた騎士さんの傷があまりにも痛々しすぎて つい言っちゃっただけです」


流石に “お空の~” は途中で自重しましたけどね。


「泣き止ませるためのおまじない……」


「あ~~~~、そうか、そうなのか。

えっと、悪いんだが 次回以降も外傷の奴らには おまじない付きでやってやってくれるか?

いや、別にあいつらが泣きそうとかそう言うんじゃないんだが、多分事実を知るとショックを受けそうだ」


確かに 幼女に子ども扱いされたのかってショックを受けそうだよね。

実際ヒールの時に呪文はいらないんだけど、元々が非常に長々しい魔法だから 無詠唱は良くないと言われてるんだよね。

だから毎回考えなくていいのであれば あの言葉でも良いと思う。


ここまでで 隊長さんは兵舎に戻ることとなりお別れする。

私はブン先生からの質問タイムだと思ったんだけど、エミリンさんが昼食時間ですと呼びに来たことで 昼食を頂きながらの質問タイムになるようです。




「ほぉ、従来の回復魔法はどのように効果が出ているのかがよく分からなかったのですが、ヴィオ嬢の回復は 自己治癒能力の活性化というものなのですね。

確かに 小さな傷が治る時、瘡蓋が出来て それが剥がれた時には治っていますし、その最中は 時々かゆみを感じることもありますね。

そう思えば 外傷性の者たちが回復中にムズムズするなどと表現していたのも良く分かります。

一気に治るのではなく 健康な部分が広がっていくというのも納得しましたよ」


途中でエミリンさんから 食事に集中すべきだとお叱りを受けたけど、ブン先生は 口の中にモノが入ったまま喋る訳じゃないし 食事中のお喋りのようなものだから 気にしないと言って納得してもらったんだよね。

それにしても 従来の回復魔法、私がやってもらったのは筋肉痛だから回復過程は見てないんだけど、一気に治るものなの?なかったことにするのか、瞬間的に治るのか、やっぱり意味不明だね。

ああ、なかった事にするなら そこだけ時間をさかのぼることになるから、聖魔法じゃなくて 時魔法になっちゃうのかな?あるのか分かんないけど。


「お父さん、従来の回復魔法ってどんな感じで治るの?」


「ん~、どうじゃろうな。儂は回復薬を使っての回復しかしたことがないから分からんが、随分時間がかかるとだけ聞いたことがあるぞ」


それは呪文が長いのと、部位の確定をしてないからってやつじゃなくってですか?


「そうですね、従来の回復魔法を一度見て頂いた方が良かったかもしれませんね。

ちなみに 打身などの怪我の場合、従来の回復魔法では 痛みは消えますが 赤みは治まりません。赤から紫、黄色となって治っていきます」


それって 内出血はそのまんまってことですね。

でも内出血って腫れる原因だし、ジワジワした痛みは出ちゃうって事じゃない?筋肉の損傷だけを治しているって事なのかな?


「それから 腰痛、肩こりなどで回復魔法に頼ることはまずありません。

一般の人は教会に依頼をするくらいしか聖属性魔法を受けられませんし、非常に高額ですからね。

ただ、聖属性が少しだけ使える人が身内にいれば、使うこともありますが その場合でも1日に2回が限界でしょうね。聖魔法はとにかく消費魔力が多いのが特徴なのです。

使ったところで 痛みだけを取り除く、というのが従来の回復魔法です」


まあ 人体模型が分かってない人は 想像が足りない分、魔力で補完しているから消費量が多くなるんだろうね。私のはピンポイントだから少ないけど、逆に原因不明、原発不明の痛みとかには効果が出ないと思う。

ブン先生のお話で分かったのは、私が使っているのは聖属性ではあるけど従来の回復魔法ではないということ。

ただし、他者も理解することが出来れば 教会に頼まずとも 聖属性に少しでも適性があれば使える人が増える可能性のある魔法だと喜ばれた。

確かに、一度に消費する魔力が減れば 然程魔力が多くない人でも使えるし、何度も繰り返し練習することで消費魔力量はさらに減るようになるだろう。良いんじゃないでしょうか。


「この回復魔法に関しては、ボディピークと一緒に会得してもらう方が効果的かもしれませんね。旦那様がお帰りになったら報告しましょう」


うんうん、良いと思います。それが当り前になったら 私も回復魔法を使いやすいし良いと思います。

功績云々に関しては サマニア村でもドゥーア先生に伝えているし、お屋敷に来てからブン先生にも伝えている。

私が表立って発表するなら成人してからになるし、私の考える魔法はちょっと特殊だから きっと水生成魔法と同じくらい国が動く。

今回の回復魔法は確実に皇国から反発がきそうだしね。

そういう横やりを防ぐには 後ろ盾が必須だし、私みたいな平民の冒険者なんて 目をつけられるだけで 権利も褒賞も貰えずに終わるだろう。


となれば10年も待つことなく 魔法の権威で有名なドゥーア先生に発表してもらえば より早く浸透するし、私に面倒は振りかからない。

先生はまた王城に呼ばれるし、苦手な社交に出なきゃいけなくなるだろうから、それに関してはごめんとしかいえません。

ご面倒おかけいたします。


魔法は想像力が大事、だけどヴィオは想像力があり過ぎるから 神様の名前だけで回復するのが理解できずにこうなってしまっています。

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