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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第248話 お屋敷での日々 その3


お父さんとの手合わせに集中しすぎて 周囲の声は全く聞こえていなかったんだけど、相当騒めいていたらしい。

手合せを止めてくれたのは隊長ではなくブン先生。

お昼ご飯前に 騎士さん達の回復練習もしないといけないからね、どうやら30分以上もやり合っていたらしいです。

どうりで終わった途端 腕も足も怠いはずです。


「ふぅ、随分体力と筋力がついたな、攻撃が随分重たくなった。

それでいて速さは同じじゃから バランス良く力がついて来たのが分かるぞ。

身長が伸びてきたら身体のバランスが変わる分、多少動きが鈍くなるかもしれんが 今のまま訓練を続けておれば 大丈夫じゃろう」


「ほんと? 嬉しい! 」


「いや、いやいやいや、ちょっと待って、ちょっと待ってください。

嬢ちゃん 6歳だよな?人族って聞いてたけど 大人のドワーフじゃないんだよな?」


動きを止めたことで一気に噴きだしてくる汗、いつの間にか訓練所に来ていたエミリンさんがタオルを渡してくれたので 拭くけど 止まらないね。

ちょっとだけ汗をかいてるお父さんが褒めてくれたのが嬉しくて 飛び跳ねて喜んでいたら 隊長さんが壊れた。


ドワーフに間違われるのは結構あるけど、そんなにドワーフっぽいですか?

女性のドワーフはあまり見た目に種族特性はない。ただ小柄な女性ってだけ。

この世界の平均身長が女性でも160~180センチな事を思えば、ドワーフの女性は130センチが成人女性の平均だ。正に今の私がそれより少し小さいくらいだ。


「成長率からヒト族と予想していますが 6歳であることは間違いありません」


ただ、お母さんが人族であったことは間違いないけど、生物学的父親の種族は不明だ。

もしかしたらハーフドワーフの可能性は捨てられない。だけど6歳なのは間違いないのでそう伝えたんだけど、別にその答えは求めていた訳ではなかったみたいだ。


「だから言ったでしょう?

ヴィオ嬢は 旦那様がご自身の養女になさりたいほど素晴らしい能力の持ち主だと。あなたも辺境北部出身であれば、あの地域で冒険者になる為に育てられた子供がどのように成長するか 聞いたことがあったのでは?

まあ 私としても6歳でこのレベルというのは非常に驚いていますがね。ですが 昨日から驚きっぱなしですから 武術に関しては今更です」


フンス!って感じでブン先生が 隊長さんに言い募っているんですけど、昨日は驚きっぱなしだったんですね。まあ お兄ちゃんたちも最初はそんな感じだったから、きっとすぐに慣れると思うよ。

というか ドゥーア先生の養女って 聞いたことないですけどフリですかね。それくらいのつもりで持成しなさい的な。


「そしたら 回復の練習 直ぐにしますか?」


「なにを言ってるのです!駄目ですわ。こんなに訓練でお疲れですのに 少しは休憩を差し上げないと。

それに 本日の身体を酷使する訓練はおしまいですのよね?

でしたら 回復の練習はお着替えの後に致しましょう。

まずは汗を流して スッキリしている間に 多少の体力と魔力も回復いたしますから、ささ、参りますよ」


隊長さんが答えるより前に動いたのはエミリンさん。

さっと手を握られて くるりと出口に向かってます。

まあ確かに汗だくで いるよりはいいけれども、いいのかな?


「ああ、わかった。では 回復が必要な騎士たちは 嬢ちゃんの準備が整った頃に応接室に連れて行っておく」


「ええ、そうしてくださいませね」


良いようですね。

昨日からうすうす気付いていたけど エミリンさん最強説。

おっとりしているけど ドゥーア先生にもビシッという事言うし、この家のお母ちゃん的役割もあるのかもしれないね。

私に対しては 高圧的では全くないけど 断れない雰囲気が凄い。

これが貴族のメイド長なのか。冒険者とは違う 色んなスーパー能力を持ってるんだろうな。

騎士さんよりも勝てない感が……。



で、そんな最強エミリンさんと客室に戻れば お昼前なのにお風呂タイムですよ。

流石にマッサージはしないですんだけど、しっかりアワアワで洗浄して頂きました。それこそクリーン浴で良いと思ってたけど、湯船でマッタリしたおかげで 重怠さはかなり軽減しました。


お風呂上りには 昨日とは違うドレスが用意されていた。

うん、ワンピースって言うよりドレスって感じです。

薄紫のドレスの袖とスカートは透け感のある生地になっているから 長袖だけどとっても涼し気。

柄のかわりに同色の糸で刺繍がされているから 派手ではないのにとても繊細な感じ。

これをメイドさんが作ったの?プロの仕事過ぎるんですが!?



「はわわわわ、可愛すぎます。旦那様が菫色の瞳と仰った時に 瞳の色でお洋服を作りたいと思った私を褒めてあげたいですわ」


うさ耳メイドさんがこのドレスを作って下さったのですね、ありがとうございます。

髪を整えてもらうのに ドレッサーに座った時、確かに自分の瞳の色とよく似ていると思った。

自分で言うのもなんだけど、マジで喋らなかったらどこぞのお姫様っぽく見えるくらい可憐です。


「折角ですから 髪も編み込んでハーフアップに致しましょうね。

うふふ、飾りがいがあるって素敵ですわ~」


皆さんウキウキしながらやってくれるので 完全お任せです。

可愛く仕上げて頂いたところで 応接室に移動しましょう。


「素敵なドレスと可愛い髪の毛にしてくれてありがとうございます。行ってきます」


いつも通り エミリンさん以外のメイドさんたちは片付けの為残るので 皆にお礼を言って手を振れば、皆も手を振り返してくれました。


「回復魔法ですが あくまでも練習でございますからね、あまり無理はなさらないでくださいませね」


応接室に到着する前にそんな心配をしてくれるエミリンさん、うん、大丈夫だよ。

訓練では強化と結界しか使ってないから魔力はほとんど減ってないし、体力だけが削られたけど お風呂で回復してるしね。


コンコンコン


エミリンさんがノックをすれば 中から 隊長さんの “どうぞ” の声。

室内に入れば 隊長さん、ブン先生、お父さんがソファーに座り 他の隊員さんらしき人達は壁際に立っている。皆も先ほどまでの訓練服じゃなくなっているので お風呂休憩してきたのだろう。


「うわっ、すげぇ可愛い」

「あれがさっきまで 銀ランクと殴り合ってた幼女!?」

「人形みたいじゃねーか」


「ゴホン! あ~、うちの隊員たちが失礼。

それにしても見違えたな。さっきまでも可愛らしい嬢ちゃんだったけど、そんなドレスを着てたら 貴族のお嬢さんと言われても違和感がないぞ」


「えっと ありがとうございます?」


それは作り手のお母さんと 磨いてくれたエミリンさん達のお陰だと思います。


「さて、では順にみてもらうことにしましょうか。

外傷がある者と打ち身などの 一見怪我の部位が見えない者がいますので別で並ばせましょう。

ヴィオ嬢は どちらでもやりやすい方からやってみてください。一応怪我をしている者たちを集めましたが 直ぐに治す必要があるような怪我をしているものはいませんので、魔力などに無理がない程度で充分ですからね」


ブン先生にそんな事を言われて 隊長さんが 怪我の種類によって 左右に分かれて並ぶように指示をしてくれている。怪我の部分の近くに手を当てるので 届きやすいように昨日の先生が座ってたのと同じ オットマンタイプの低い椅子に座ってもらう。


「じゃあ こっちの人からやりましょう。次はそっちに行くので 終わったら交代してくださいね」


「おぉ!俺次だって」 

「マジか、いいな。俺も並ぶぞ」 

「ちょ、待てよ。俺の方が先だ」


ザワザワしているのを隊長さんが咳払いで鎮めるけど、直ぐにあちこちで あんな小さいのに出来るのか?とか、だから実験なんだろ?とか、練習台になってあげたいじゃないか、等々色々聞こえてますよ。


最初の人は 二の腕全体の擦過傷が対象のようだ。

どうやら訓練中にお父さんにぶっ飛ばされて 地面に叩きつけられるところで体を捻ってスライディングしたことによる怪我らしい。左腕を下にクロスしたようで 左腕が酷い。右は肘の辺りだけだね。

既に血止めと汚れを取るところまでやっているけど、回復薬を使うのはこの練習の為に我慢してくれていたらしい。ありがとうございます。


「そっか、痛かったでしょう? 痛いの痛いの飛んでいけ~。って【ヒール】」


思わず子供に言うように おまじないを唱えてしまってから 忘れかけてたヒールのトリガーを唱える。ちゃんと傷が治るようにと考えてはいたので 白っぽい光が傷口を撫でるように動きながら 傷が消えていくので成功しているようだ。


「なんかムズムズするな」


傷の修復をするときにはその副作用があるのは仕方がないんですよ。だって細胞が治ろうとして超活性化しながら動いているんだもの。

そしてブン先生は その経過をメモした後 治療が終わった隊員に感想などを聞いてくれている。これは後で私も見せてもらう予定。


では次は打身の人だね。

さっきの人みたいに 打たれて直ぐにぶっ飛んだ人は外傷で、耐えた人たちが打身の人みたい。流石肉食系獣人の人は 忍耐強いんだね。


「俺は腕だな。両腕がまだジンジンしてるんだ。親父さんスゲーな」


お父さんを褒められると嬉しいです。

両腕を捲ってもらえば 赤く腫れています。骨折はしていないらしいけど かなり内出血はしているみたいです。炎症を抑えて 血管と筋肉組織の修復が必要だね。


「お腕の腫れが治まります様に 【ヒール】」


人体模型図の筋組織などを意識してヒールをかければ 腕全体を一瞬白い光が包み込み 腕に吸い込まれるように消えていく。


「うわぁ、何かふわってする」


「ふわってなんだよ」

「どういう状況だ?」

「もうちょっとわかりやすく説明しろよ」


うん、お兄ちゃんたちも同じような事を言ってました。

脳筋多めの人たちは 貴族でも冒険者でも 同じような表現方法なんだなって学びました。

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