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第25話  帰宅と昼食


お父さんの足だと10分もかからず歩けるであろう距離も、私の足だと1時間くらいはかかったのかもしれない。

ギルドから広場までは元気いっぱいで歩けたんだけど、後半が長かった。

お腹も空いてたからか、足取りがどんどん重くなって、結局最後はお父さんの抱っこで帰宅してしまった。

情けない……。


「はっはっは、そんなに焦ることはないじゃろ。

ご飯の量も増えて来たし、一日に動ける時間も長くなってきておる。

ここに来たばかりの時より ずっと体力もついてきておるんじゃ。

今日は学び舎でも頑張ったんじゃろう?

午後に採集するんじゃったら、少しは体力を残しておいた方がええ。」


子供椅子に座ってしょんぼりしている私を見て お父さんは楽しそうに笑うけど、村の中を一人で歩ききれないという情けなさに凹む。

でもお父さんの言う通り ここに来た初日は精神的な疲労か、家の中で動くのでいっぱいいっぱいだった。

少しずつ家の周りを散歩したり、裏の畑まで歩いたり、畑仕事を手伝ったりして 体力と筋力の回復を待ったのだ。

そう思えば まだ1週間だもの、これから頑張れば1か月後には村の中を縦横無尽に走り回れているかもしれない。うん、そうに違いない!


「うん、納得できたようで良かったぞ。さぁご飯にしよう。」


お父さんと 「いただきます」をして昼食を頂く。

さっき途中だった 学び舎での話を お父さんが聞いてくれるので、私も体験したことを話す。


「ほう、リリウムの息子が懐いたんか。あのやんちゃ坊主がなぁ。」

「マーレ、ミーレ、ムーレか、あの三姉妹は気立てが良いと評判じゃからな。」

「ケーテが護衛騎士を目指しておるんか。あそこの兄貴も腕の立つ冒険者じゃからな。うむ、向いておるんじゃないかの。」


お父さんは相槌を入れるのが上手く、今日あった事を漏れなく話すことが出来た。

母さんとの旅でも 二人で沢山話したけれど、旅の宿は壁が薄く、夜に沢山話をするのは憚られた。

それに二人で常に一緒に行動しているから 報告する事もない。

植物の特性や 採集方法について、魔獣の避け方、魔力の使い方、お金の使い方などなど、今思えば 生きていくために必要な事を沢山教えられていた事を知る。

普通の街で、普通の家庭の母娘であれば もっと成長してから覚えるような事、覚える必要のなかったことも教えてもらってた。

そう思うと 母は何を想定していたのだろうか。

自分が何時か破落戸に襲われることも 想定していたのだろうか。

今となっては分からない。あの箱を開けることが出来れば手紙の一つでも入っているのかもしれないけど、鍵がないから期待は出来ない。


楽しい思い出ができると、悲しい記憶も思い出してしまうのは何なんだろうか。

忘れるんじゃないぞ、お前の今の幸せは 母の不幸の上にあるのだから。と言われているのだろうか。

そんな風に考えてしまったからだろうか、お父さんが心配してどうしたのかと伺ってくる。


「ううん、お母さんもこの村で一緒に居たら、楽しかったのにって思っただけ。

ねぇお父さん、レン君たちは冒険者登録してないんだって。

村では7歳の洗礼式が終わってから 登録するって言ってたんだけど、洗礼式ってなぁに?」


「あぁ、そういえば村ではそうじゃな。

洗礼式っちゅうのは 7歳になった子供らが教会で祈る儀式じゃな。

無事に成長できたことを感謝して、1人の住人として数えられる儀式とも言われとる。大昔は 7歳ぐらいまでは怪我や病気で死んでしまうことが多かったからとも言われとるな。

今は回復薬なんかが手に入りやすくなったんで、早々早死にすることはないんじゃが、風習として残っとる。

教会で祈ってもらった後に、水晶玉で属性と魔力量の鑑定もしてもらうのが習いじゃな。」


7歳まで成長すれば 人として認められる、ってことか。

だけど、今でも続いているっていうのは何か別の理由も絡んでそうだけど。

てか水晶玉ピカーのイベントはありそうだね。


「お父さん、それって7歳になる子供は全員受けないと駄目なの?

私がそれ受けたら 全属性ってバレちゃわない?」


というか、教会主体って時点で 聖属性持ちを調べるためだけに始められたんじゃないかと思ってしまう。属性を指定したら受けない子もいるだろうから、子供は全員ってしてるだけなんじゃないかな?

魔力量の鑑定も一緒にって言うのが怪しすぎる。


「……そうじゃな。ヴィオが5歳じゃから忘れておったが 受けたら必ず王都に連絡が入るじゃろう。受けるのは義務ではないが、冒険者登録をしない者にとっては 属性を知る機会という事で受けるのが慣例じゃったからな。

ヴィオ気付かせてくれてありがとうな。洗礼式を受けんと駄目なのかは ギルマスたちにも確認してみよう。」


少し困った顔をしたお父さんだけど、すぐに気持ちを立て直し ギルマスたちに確認してくれることになった。ご迷惑をおかけします。


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