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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第241話 貴族のお屋敷



ずらりと並んだ使用人たちに迎え入れられ、客室から案内してもらっている。

何故かドゥーア先生も一緒に来てくれているけど 先生は忙しいのでは?

ニコニコしながら後ろをついて来てくれるので、案内役の方もちょっと戸惑っている感じ?


「こちらの客室が お父様のアルク様のお部屋でございます。お嬢様のお部屋は お隣に準備させていただきましたが、寝具はお二つございますので お嬢様がこちらのお部屋で過ごしていただくことも可能でございます」


メイドさんに案内されたお部屋は 扉を開いたところはリビングルームのようなお部屋で、長いソファーと ローテーブルが中央に鎮座しており、少し後方には 足の長いテーブルと椅子のセットもある。

室内の両サイドに扉があって 右の扉を開ければ ベッドが2台置いてあった。

左の扉はバスルームとトイレだと思う。桶ではなくて 花瓶のようなちょっと豪華な壺が2つ置いている。

壺とはいえ 口の部分が結構広いし、便座として使う丸い穴の開いた蓋が その隣の棚に並んでいるので 多分トイレで大丈夫だと思う。

でも違ったらいやだな。


「あの お姉さん、この花瓶は お花摘みで使っているものですか?」


「お嬢様 その通りでございますわ。ご使用に不安がございますか?」


「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」


良かった、トイレで合ってたらしい。小さいのは もしかしたら普段は置いてないのかもしれないけど、私が来ることで準備してくれたんだろう。ありがたいです。

寝室は広いし、クローゼットまであるのでこの部屋で十分だろう。お父さんと一緒にお部屋を使うつもりだと告げれば 了承された。


「では 共有エリアを案内しよう。大きな荷物はそこのクローゼットにでも入れておいてくれたらいいよ」


私たちの答えを聞いて 先生から別の場所も案内すると言われたので マジックバックも全部置いてお部屋をでる。


「3階は私の自室と執務室があるだけなので 一応立ち入り禁止にしておくけど、この屋敷の中ではどこでも好きに動いてくれていいと皆には伝えているからね」


貴族の屋敷で立ち入り禁止が無いとかビックリですよ。

というか他人の家に入ること自体初めてなのに、それが貴族の屋敷って “初めてのお宅訪問” が豪華すぎるんですけど。

2階には 客室の他、魔術の実験室もいくつかあった。


「この部屋は 回復薬とか 様々な調合をするときに使うかな。薬草系の保管は別の部屋にもあるけど、ここにも置いてるから 窓は遮光になっているよ」


ちょっぴり草の臭いが鼻にくるけど 嫌いじゃない。

何となく郷愁を感じると思えば お母さんの調合室に似ているのだと思い出した。


「こっちの部屋は 主に魔道具を作る時に使うよ。多少失敗して爆発しても大丈夫なように 壁に保護の魔法陣が刻まれているから 安心してくれていいよ」


こちらの部屋は窓があるから少し明るい。

だけど雑然と物が置かれ あちこちに紙も散らばっている。メイドさんが「片付けたばかりなのに またこんなに散らかってる……」と愕然としているので、先生が使ったばっかりなのかな?

薬草の調合も興味があるけど、それは村長にも習えそうだから 魔道具作りを学びたいね。


残り二つの小部屋は 薬草などの保管室と、魔道具作りの為の素材置き場だそうだ。

そして2階の半分くらいを占めているお部屋が 図書室だった。

個人の屋敷に所蔵する本の量としてはおかしくないかと思うレベルの本の数。先生が執筆している本も沢山あるんだって。


「まあ、小難しいことを書いて ページを稼いでいるような本も多いからね。1冊使って ファイアバレットについて書いてある本もあるくらいだ。

ヴィオ嬢が読む必要のない本も沢山あるけど、興味があったらここで読んでも良いし 部屋に持ち帰ってもいいよ」


ファイアバレットだけで1冊の本が書けるって 逆に凄いと思います。俄然その本を読んでみたいと興味津々ですよ。


続けて1階に下りれば 食堂に案内される。

貴族と言えば 端っこが見えない感じの長いテーブルだと思ったのに、6人掛けくらいの 少し大きなテーブルだった。


「なにか気になることがございましたか?」


「お貴族様のお食事の時は 長ーいテーブルの端っこにご主人様が座って、皆は反対側に座って、会話もできないくらい遠い!ってなるのが普通だと思ってました」


「ぶっ」


「くふっ」


「んふ……コホン、お嬢様、それは物語などにある王城などのお食事風景なのかもしれませんわ。

わたくしの生家も伯爵家でございますが、お食事のテーブルは このくらいの大きさでしたし、他のお宅も平均すると同じくらいでしたわ。

お食事のお時間は 家族でその日にあった事などを報告し合う場でもありますから、遠くてお話が出来ないなんてことは無いのですよ。

パーティーなどがあれば そのようなテーブルを準備いたしますが、普段はこの大きさでご用意させていただいておりますよ」


ドゥーア先生もスティーブンさんも肩を震わせているけど、メイドさんだけが物語との違いを教えてくれた。

まああんな食事風景 勿体ないお化けが出てきそうだし、仲良くない家族って感じだもんね。納得しました。


「折角ですから ヴィオ嬢たちがいる間は 朝食と夕食を一緒にできるようにしようか。エミリンが言うように 食事時は色々話しやすいと思うし、その日にあった事で困った事なども聞かせてもらえれば対処もしやすい。

朝は その日の予定を話し合えれば計画も立てやすいだろう」


エミリンさんは案内してくれたメイドさんの事だね。狸獣人は耳が小さいんだけど 尻尾が太くてポワンとしていてとっても可愛い。

そして先生の発言に スティーブンさんと エミリンさんだけじゃなく、少し遠くから見守ってくれていた使用人の皆さんがザワっとしている。

どうやら研究に熱中してご飯を食べ忘れる、家に帰ってこないなんてことも多いらしく、私たちがいる間だけでも健康的な食生活をさせることができると喜んでいるようだ。

うんうん、研究者ってそういう人が多いよね。


「ドゥーア先生、私たちね ダンジョンでもお料理してるの。

ダンジョン産の調味料を流行らせたいから 先生にも試食をしてもらっていいですか?」


そういえば!と思って先生に提案してみる。

先生から誰かにというのは難しいかもしれないけど、先生のところの料理人さんが覚えてくれたら そこから流行らせてくれないかなって言う希望的観測。


「ほぉ、ヴィオ嬢は料理もできるのかい? 」


「お料理が上手なのはお父さんなの」


「いや、じゃが ハズレじゃと思っておった調味料を使った料理は ヴィオの方が美味しく作れるじゃろう」


「おぉ、それは楽しみですね。是非 そのハズレという調味料で作ってほしいですね。エミリン、料理長にもその事を伝えておいてくれ。

二人がキッチンを使いたいという時は 便宜を図るようにね」


「承知致しました」


おぉ、キッチンを使わせてもらえるなら 結構本気で色々作れそうだね。貴族の屋敷のキッチンとか 広そうだよね。

食堂を案内してもらった後は地階に下りる。

そこは まさにギルドの地下訓練場と同じような空間が広がっていて、階段状の石段と、土が固められたフロア、壁は勿論防御の魔法陣が刻まれているらしい。


「ここであれば 様々な魔法訓練が出来るからね。魔法訓練は 巻き込み事故防止の為にここを使っているよ。

外にも訓練場があってね 武術訓練なら外の訓練場も使えるから アルク殿も身体を動かしたいときは使ってもらっていい。

ああ、そういえばヴィオ嬢は回復魔法を使えるようになったかい?」


他の貴族の屋敷では 外の武術訓練場はあるけど 地下訓練場はないらしい。ここは先生が魔法の達人だからこそ 実験ができるようにと特別に作らせたらしい。


「回復魔法は練習中です。お兄ちゃんたちとのダンジョン旅で何度か使ったんですけど、皆殆ど怪我をしないから練習できないんです」


怪我をしないのは良い事なんだけど、練習としては困っちゃうんだよね。

だからと言って 知らない人の回復をする訳にもいかないし、中々上達しなくて困っている。


「それは丁度良かった。では 午前の座学が終わった頃と、夕食後の1日2回、うちの者たちに回復魔法の練習をしてくれないか?

勿論ヴィオ嬢の魔力に負担が無い分だけで良い」


そんなに怪我をする人が多いのかと思ったけど、午前のは騎士訓練で外的な怪我をした人たちに。午後はその他の使用人たちにということ。

使用人は怪我をする訳じゃないけど、例えば あかぎれなどの裂挫創、何かにこすれたことで出来る擦過傷、針仕事などで出来た刺創や、腰痛、肩の痛みなどの 持病なのか 姿勢のせいなのか、そういった痛み、歯痛、頭痛、発熱などの突発的な体調不良など。

そういった者にも回復魔法が使えるかの実験を兼ねて練習してみようという事だった。


「ヴィオ、それは大丈夫なんか?」


「ん~、分かんないけど大丈夫な気がする。やってみないと分からないし、効果があるか分からないけどやってみたい」


「はっはっは、それでこそだ。実験に参加してくれる者達には 既に声をかけているからね、夕食を終えた頃には集まるように言ってる。

その日に出来なくてもいい、数日かけて色々試してみると良い」


なんと!

こんな6歳児の魔法を受けても良いと言ってくれる人が既にいるとは驚きである。

でも魔法は使わないと上達しないので 使わせてもらえるのは非常にありがたい。よろしくお願いします。


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