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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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〈閑話〉 ?????


「いねーじゃねえか」


「いやぁ、まさかの皇城へお招きとはね。聖女の可能性が高いって事は 例の娘で間違いないんじゃないっすか? もうそれで報告でよくないです?」


「良い訳ないでしょ。はぁ~、しっかし 王妃殿下は何にそんな拘ってるのかしらね」


「副隊長の話じゃ もう大分イカレちまってるって話っしょ?陛下に嫌われたんじゃ もう表の世界に出てくることは無理っしょ」


「マックス、発言は気を付けろよ。

まあ 聖女ってなったなら その娘がこの国に縛り付けられるのは間違いないし、自分の目の前に出てこないなら 放置しといて良いと思うんだがな」


「ハンスの言う通りよ、マックス。

まずは 娘が 陛下の娘であるかの確認、それから首飾りの確認ね。

副隊長から 陛下のネックレスの絵は預かってきたわ」


女が見せる用紙には 繊細なデザインで ペンダントトップが描かれている。

雫型のそれには メネクセス王国の国花でもあるスミレが2輪描かれている。

ちなみに 男女がお互いを呼ぶ名は 偽名である。

彼らは メネクセス王国のガルデニア公爵……いや、今は侯爵に仕える影の者達であり、名前はない。

呼ぶときに不便なため 仮名は付けているが 所謂 “名無しの権兵衛” と同じ名前である。




◆◇◆◇◆◇



影たちは皇都に行くよりも この子爵領で調べられることは調べることにした。

まずは 神殿での聞き取り調査を行う。これは 3人のリーダー役となっているジェーンが行う事となった。

敬虔な信者のふりをして 修道士たちに話を聞けば それはそれは 簡単に教えてくれた。


「どうやら ここの司教は あの娘が 苦労しないようにって 中央に報告をするのは躊躇ってたんですって。だけど 洗礼式に参加してた貴族達から噂が回って 皇帝が知ったみたいね。

で、今は皇帝陛下との謁見の為に皇都に行ってるんですって。だけどタウンハウスがないし 謁見が終わったらすぐに戻ってくるだろうって」


「あー、前の依頼の時も思ったけど、貧乏なのに プライドだけが高い夫人でしたしね。金が無いのに 欲しいものが溢れてる皇都じゃ辛いっしょ。

しかも聖女と誼を結びたいって 茶会なんか誘われたら 付き添いに行くのにドレスもいるし、金が幾らあっても足りねーっすね」


「確かにな、だが 高位貴族との誼を結びたいからと 皇都に娘だけが残されたらどうする? 戻ってくるまで待つのか?」


「そうよね、まあ 戻ってこないなら 親がいない分 消しやすいじゃない?

戻ってきたなら 確認作業をすればいいだけだし、既に 謁見は終わっている筈だから 戻ってくるなら あともう少しだし 子爵たちの帰りを一先ず待つので……っ!(シー)」


報告会をしていれば 突然ジェーンが唇に1本指を立てて 静かにと指示を出す。


今居る場所は子爵領にある 宿の一室だ。

他の国では 冒険者ギルドがあり、冒険者という各地をうろつく人がどこの町にもいるが、冒険者ギルドがない この国では 旅行者や巡礼の人以外に あまり村人以外が訪れることはない。

その為 見慣れない人がいれば 直ぐに顔を覚えられる可能性が高く、3人は 巡礼をして回っている旅人という設定にしている。

話し合いなども 村の食堂などで出来る内容ではないため 宿の部屋で行うしかない。

勿論 今も防音魔術を展開しているが この部屋を盗聴している気配を感じた為 3人は周囲の警戒レベルを上げた。


マックスが すうっと気配を消して 静かに扉へ近づき 一気に内側へ扉を開く。


「うわっ!」


「静かに」


転げるように倒れ込んできた男は ハンスにより即座に組み敷かれ、その首筋には黒くて薄い刃が当てられている。マックスが扉を閉め 再び防音魔術を展開してから 男の目の前にジェーンが屈み 話を聞くことにした。


「あなたはだあれ? この宿の人ではないわね? 何をしていたのかしら」


「怪しいものじゃない、俺は、俺は あんた達から依頼を受けたことがある冒険者だ」


首を切られそうになっている今 嘘をつくことはないだろうけど、私たちから依頼を受けた冒険者?

その時々に駒として使うには 冒険者が手っ取り早くて便利だけど、ここは皇国。冒険者が居ないから 殆どが 町の破落戸を雇うんだけど、冒険者?


「きょ、去年の今頃 ここに住んでた 薬士の母親を殺るって依頼だ。スチーラーズって名前に聞き覚えはないか?」


私たちの不審顔に さらに言い募られて やっと思い出した。


「あぁ、全滅した使えない冒険者たちね。ハイハイ、覚えているわ。あら、生き残りが居たのね」


「ジェーン……」


あら、口が滑ったわ。だって 銀ランクの上級パーティーっていうから どれだけ使えるかと思って期待してたのに 全然ダメだったんだもの。

ちょっとは足止めしてくれるかと思ったのに 結局は私たち3人が出る羽目になっちゃったんだもの。


「ぐっ、それは……」


「それで? 生き残りのあなたが何の用?」


悔しそうな顔をするなら もう少し力をつけてもらわないとね。

その後 話を聞けば、どうやら あの時にパーティーメンバーだった者が3人ほど逃走しており それは今も生きている筈だという事、パーティーの変更をせずに動いている事から 現在 リズモーニ王国で活動していることが分かっているという事だったの。


「ふ~ん、だから何? 私たち 別件で来てるから あなたのパーティーがどうなってようとどうでもいいんだけど?」


「俺はっ!」


コイツ一人が何をしても 私たちの誰にも敵わないと分かった時点で 床に座らせているんだけど、急にガバっと顔をあげて来るから びっくりするじゃない。思わず 針を飛ばしちゃったわ。

袖口に隠してある 針というには随分太いそれは 男の頬を掠って 壁に刺さっている。


「お、俺は 闇魔法がかなり使える。あんたたちの仕事を手伝うから その後に あいつらを探すのを手伝って欲しいんだ」


コイツ何言ってるのかしら。

何故 影の私たちが 駒程度のやつの願いを叶えないといけないのかしら。


「話にならないわね。私たちの仕事も 別にあなた程度に手伝ってもらう必要はないもの。だから あなたの願いを叶える理由もないって訳。

今回は 仲間が死んじゃったことで同情したげるから 逃がしてあげていいわ。バイバイ」


シッシと手を振れば マックスが扉を開けて 男を促す。

なのに動こうとしないのは何故? 死にたいのかしら。


「あんたたちが探してるのは 薬師の娘だろ? あの時 床下に潜んでた娘は 子爵に引き取られた。

だけど その日のうちに あの屋敷から 一人の少女が捨てられたってのは知ってるか?」


顔を俯けたまま そう語る男。

子爵に引き取られたことまでは突き止めたけど その娘が 今皇都に行ってる娘かどうかの確認をしているんだけど、捨てられたのが居るって事?


「あんた 名前は?」


「ゲドゥだ」


マックスが扉を閉めて 再び防音魔術を展開する。

さて、こいつが知っている情報を 聞かせてもらおうじゃない?

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― 新着の感想 ―
話の途中から閑話のほうが気になりはじめた。
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