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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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〈閑話〉メネクセス王国 22

銀ランク上級〔土竜の盾〕リーダー テリュー視点



洗礼式が終わって 教会にも聞き込みに行き、孤児院も確認したがヴィオはいなかった。

〖アグーの食堂〗と〖のんだくれ〗にも行ったが 飲み屋の方で有力な情報が得られた。


「あー、覚えてる覚えている、あの美人親子だろ?

母親の方は美人だったけど、娘もあのまま成長したら美人になっただろうな」


「あれな、あんときは俺も見に行こうと思ったけど やばすぎて直ぐ帰ったって。魔法がビュンビュン飛んでてよ、滅茶苦茶人が死んでたからな。

隣町の破落戸も随分混ざってたってな。子爵夫人よりも美人だったから 恨まれてもしょうがねえかもしれねえけど どうせ殺されるなら その前に良い思いしたかったよな~」


「ぎゃははは、分かる分かる、いっぺんで良いからお相手願いたかったよな」


「なんだ あんたもあの美人の噂を聞いてこの町に来たのか?

あんたも大概美人二人侍らしてんのに 罪な男だねぇ~。って、冗談、冗談だって!」


飲み屋の方は 俺が一人で来て正解だった。

アイリスの事は薬屋の美人親子というだけで通じるほど有名だった。

フィルの手紙にはなかったけど、アイリスが殺された後のヴィオの事も少しわかった。

だが こいつらが二人の事を貶める様な事を聞き続けるのはあまりにも腹立たしく、知らぬ間に魔力が噴出していたようで 気付けば 店の中がシンと静まり返っていた。

さっきまで俺に馴れ馴れしく絡んで来てた奴も 真っ青な顔でガタガタ震えていやがる。



「あぁ、悪いな。あの母娘は知り合いでな、娘の方がその後どうなったか知ってるか?」


「あ、あぁ、お、俺は知らねえ」


「お、俺も知らねえけど、しばらくあの店にあの後も顔出してた奴なら知ってる。

ひぃぃぃ、睨むな、殺さないでくれ!」


殺気は飛ばしてない筈だが 魔力に当てられることすら経験がない奴らだからこんな感じなのか?

まあ抑える気もないが とりあえずしばらく通っていたという花屋の女将の店と 襲撃事件に巻き込まれて重体だったという男の居場所だけ聞いて店を出た。





「ああ、ヴィオちゃんだろ?

あの子も可哀想だったね。お父さんが居なくって 女手ひとりで育ててるところに 領主の愛人だと疑われて お母さんまで死んじまって……。

自警団の人たちが ある程度片付けてくれた後に心配で見に行ったんだよ。ヴィオちゃんの姿はあの遺体の中にはなかったって言うからね」


ヴィオは襲撃に巻き込まれてなかったんだな。

花屋に俺が一人で来ても警戒されるだろうから 二人に同伴してもらったんだが 左右から女将の背中を擦りながら 相槌を打ちつつ先を促していく。

こういうことは俺にはできないから助かる。


「ヴィオちゃんを見つけた時は床下に作られた 小部屋で震えててね……。

お母さんにここで隠れてろって、怖いやつが来たら お守りを握ってどこかに行けって願えって言われたって言っててね……」


ああ、何てことだ。

あの娘が持ってたネックレスは アイリスから奪ったんではなく ヴィオから奪ったって事か。

同じ事に気付いたらしい二人は 女将に続きを促す。


「ああ、私が見つけれたのが襲撃の2日後でね、ヴィオちゃんはずっと床下で隠れてて憔悴してたんだよ。だからしばらく食事を届けに行っててね。

あの容姿だろ? うちの子にしてやっても看板娘になるだろうし 良いと思ってたんだけど 家族に反対されてね、食事を届けるくらいしかしてやれなかったんだよ」


アイリスが領主の妻から嫌疑をかけられて襲われたというのは周知の事実としてすぐに噂が回ったらしい。だからこそ その娘をかばうことは 見つかった時に自分たちが危険にさらされるのではないかと、だから守ってやれなかったのだと女将は泣いている。

まあ、お貴族様に歯向かうなんて 普通の平民には出来ねえわな。


襲撃から1週間後くらいに領主の馬車が町に来て ヴィオを連れ去ったと聞いた女将は 家族から「やっぱりうちの子にしなくて正解だった」と言われたらしい。


「そうか、女将が見つけてやれなかったら ヴィオはそのまま死んでたかもしれないからな、教えてくれてありがとう。感謝する」


そう言って 情報料として少しの金を渡して店を出た。




「連れていかれたのは確定だが 子爵の屋敷にはヴィオはいなかった」


「娘が持ってたのは アイリスからヴィオが受け取ったお守りだったのは確定。ヴィオから奪い取ったって事だね」


「てことは 子爵家で何らかのことが起きたって事だよね。下働きでもいなかったんだよね?」


「索敵してそれらしい反応はなかったからな。魔力が枯れるほどに衰弱してたら流石に分かんねえけど」


水魔法を薄く延ばして行う【索敵】、海人族から学んだこれは ダンジョンでも役立っている。それをあのパーティーがあった日に あの屋敷全体に行き渡るようにかけたけど ヴィオらしき人の反応はなかった。唯一それらしい相手があの娘だったくらいだ。



「あとはもう一人の重傷だった奴だね。巻き込まれだっけ?」


「と見せかけた暗殺者かもしれねえけどな」


「だったら殺す」


いや、ネリア お前は回復担当だからな。

マジでモフ不足とかで 段々目が据わってきてるからな。留守番させとくか?


「行くから」


「痛てえよ、わーった、分かったから足、指痛いから!」


マジでピンポイントに指先だけグリグリすんの止めて?

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