第225話 フルシェ遺跡ダンジョン その7
さて、宝箱を開けたところで 4階に行きましょう。
幸い 宝箱があった通路の反対端が 階段だから 然程時間もかかることなく4階へ上がることが出来た。
【索敵】をすれば天井に数か所の罠があり、魔獣も全体的に満遍なくいるようだ。
そしてこの階にも冒険者の姿は見られない。
「おぉ!パニックルームが分かるというのはこういう事か。この時点で分かるのは凄いな」
「ええっ、父さん どんな風に見えるの?」
「そうだな、こんな風に通路があるだろ? で、ん? あぁ、これは罠か。
ココと ココと ココの天井に罠があるようだな。全体的に 同じ色で道が続いているが 罠の部分は黒くなっている。
で、部屋はこんな風に空間があるように見えて 多分これはゴブリンが詰まってるようだな」
タディさんが 床に石灰石でガリガリと地図を書いていく。
ふむふむ、他人の索敵した地図を見るのは初だけど、ほぼ同じだね。私の罠は白くなっているくらいの違いかな。
「そんなに詳細に分かるのか……」
「ええ、階段も 部屋もわかるのは冒険者にとって有利よ、危険性も避けることができるし 対策も取りやすいわ。是非このダンジョンを踏破するまでに 発動できるくらいまでは覚えられるように頑張りなさい」
お父さんも お兄ちゃんたちも、説明したら 何度かの練習で出来るようになってたけど、そんなに簡単な魔法じゃないんですね。
多分感覚と慣れなんだけど、まあ 二人は魔力操作の訓練からだね。
とりあえず 盾の裏返しに関しての見本を見せるのが目的だったので、通路を進み 第一魔獣を発見した時点で 盾で包み込んでみた。
2体のゴブリンだったので、右には 普通の盾、左には内向きの盾を作ってみたよ。
「わかりやすいように 風の盾にしてみたよ。できれば透過する方がいいから 風か水がお勧めかな。
右側のは自分を守る時に 皆が良く作る盾ね。外側に旋毛風があるの」
そう言って その辺りに落ちている石を投げてみれば 盾に当たった途端 ガリガリと削られて落ちた。
4人も頷いているので これは理解できたらしい。
「それから左側のが 私が魔獣相手に作る盾なんだけど、内側に旋毛風があるの。
だから 既にゴブリンが瀕死だね」
2体のゴブリンは 私たちを見付けた途端 怒りを露わに向かってこようとしたんだけど、盾に阻まれて動けないでいる。
だけど流石はゴブリン、ドンドンと壁を叩いて怒り狂っている。
左側は壁に当たる度に傷が増えているのに 構わず叩くから 既に傷だらけである。
「なんで この形にしようと思ったのかしら」
え!?
テーアさんに聞かれて そんな事を聞かれると思ってなかったから戸惑う。
「え……、何となく……かな。
ん~、土壁は 守るとか 遮蔽っていう使い道しかなさそうなんだけど、風魔法の盾をはじめて見た時、葉っぱが渦巻いてて 本人を守ってるのがカッコいいなって思ったの。
で、近づく相手には木の葉で攻撃もできるって聞いて、盾って守るだけじゃなくて攻撃にも使えるんだって思ったの。
だったら、敵を隔離したりする時に使う盾なら 攻撃できるようにしても良いかなって思ったの」
サブマスに見せてもらった【リーフウォール】が印象的だったんだよね。
何となく思ってたことを説明すれば 分かってもらえたらしい。
だけど そんな風に考えたことが無かったから 素晴らしいと撫でてもらえたよ。えへへ。
「あ、それでね、右の盾は 中のゴブリン《《を》》守るようになってるから 外からの攻撃は出来ないの。
だけど、左側のは 中のゴブリン《《から》》守るようになってるから 外から攻撃が出来るはずだったの」
とはいえ 既に左のゴブリンは布になっております。
ダンジョン産のゴブリンだからだろうか、無理だと思っても 攻撃し続けたせいで ご臨終なさったようです。
タディさんに言われたので 両方の盾を解除すれば 右側のゴブリンを即座に斬捨ててくれました。
とりあえず次の魔獣でもう一度試してみたいとの事。
第二魔獣は コボルトだったので私、テーアさん、タディさんの3人で1体ずつに盾(というか壁?)を展開。
流石金ランク、トリガーだけでの無詠唱ができるようです。
だけど 多分タディさんのは 普通の盾ですね。
「あれっ? 結構難しいな、テーアは一発か」
テーアさん ちょっとドヤ顔しています。でも流石ですね。
という事で タディさんのコボルトは 怪我をすることはないので この2体で実験をしてもらいましょう。
「魔法攻撃は 盾を張った本人の攻撃しか通らなかったんだけど、剣とかは 他の人の攻撃も通ったの」
「へぇ、じゃあ ちょっと魔法攻撃をやってみても良いかしら?」
テーアさんが試したいというので 私のコボルトに魔法攻撃をしてもらいました。
「〈炎の槍よ 敵を貫け〉【フレイムランス】」
おぉ!なんか格好良いですね。
テーアさんの手の先から 炎を纏った槍がグググと伸びてきて そのまま盾に飛んで行ったんだけど、盾に当たったら そのままスルンと逸れてどこか別のところへ飛んで行ってしまった。
「あら、本当に効果が無かったわ。でも 私の方には通るのね。
ちょっと物理攻撃も試してみるわね」
私の方に効果が無かったと分かり、直ぐに ご自身で張った盾に向かってもう一本 炎の槍を飛ばし、それはすんなり通り抜け、中のコボルトが消え去った。
物理攻撃もしてみるというので お任せしたら 久しぶりに見た バスタードソードで 唐竹割のようにざっくりでしたよ。
この間 タディさんは 風の盾の裏返しを何度も練習しています。3回目に成功して ケーテさんが討伐したようですね。
「全く抵抗はなかったわ。確かにこの感じだと パニックルームも安全に攻略できそうね。
水の盾だと 風とは違って あまり攻撃性があるようには思えないんだけど どう思う?」
「水はそこにあるだけで溺れるからね。通り抜け出来ないけど パニックルームの魔獣って 外に出るというのが絶対なのか 壁に激突しても 後ろから押し出されながら ずっと向かってくるの。
だからお水だけでも 正面のは窒息すると思う」
盾から水の槍を生やすのも良いと思うけどね。
落とし穴から 土の槍を生やすことができるんだもの、同じだと思う。
そう言ったら ちょっと引かれたのか「できれば風魔法の盾が使えるように 練習させようかしらね」と言われてしまった。
この階は 裏返しの盾を作る練習階となりそうで、エンカウントする度に ケーテさん一家が 【ウォーターウォール】もしくは【ウインドウォール】を唱え、成功すれば かけた人以外が 盾の外から攻撃して討伐するという流れになった。
お兄ちゃんたちもそうだったけど、新しい魔法を覚えたら それをものに出来るようになるまで 繰り返し行う、かなり勤勉だよね。
冒険者って 結構無茶をする人が多いイメージだったんだけど、私の周りにいる冒険者ってそういう人がいない。
こないだの変なのはどうかと思うけど、そういえば無事に目的地に到着したのかな。
夜にアンアンして 魔獣ホイホイしてなきゃいいけど。
そんな事を考える余裕があるくらい 私とお父さんはやることが無く、時々現れるシカーバットが来た時に【エアショット】で撃ち落とすくらいです。
あ、ちなみに天井にあった罠は、シカーバットがぶつかることで 超絶臭いガスが噴出してきましたので、速攻【クリーン】を致しました。
冒険者が操作する以外でも罠が発動するなんて ビックリでしたよ。




