第218話 フルシェのダンジョンへ
フルシェの町に到着したのが土の日、その日のうちに 武器屋へ修理点検をお願いしたから 出来上がりは 翌 水の日だった。
ケーテさん達は 数日必要という事だったけど 聖の日には 受け取りが出来たようだ。
時間に余裕はあったので、フルシェの冒険者ギルドで ダンジョンについてもしっかり調べてきた。
学生さんが入るダンジョンという事もあり、かなり詳細な地図と魔獣情報が掲載されていた。
ここのダンジョンは 潜るダンジョンではなく、上るダンジョンだった。
まあ 両方あるから 基本的に冒険者たちは ダンジョンの階層を 『低層階』『中層階』『深層階・上層階』と呼ぶ。
下層階と呼ぶと 浅い階なのか、深い下の方の階なのか分からないという意見が出てそうなったそうだ。
ダンジョンの詳細情報には 罠の情報も書いてあり、地図情報に 罠の位置まで書いてある。これは……勉強にはならないのではなかろうか。
まあメモしとくけど。
学生が入るダンジョンという事もあり、命の危険があるような罠はなさそうだ。
一番危険なのが落とし穴かな? 中級の上る系ダンジョンだと 下の階に落ちる罠が結構あるらしい。
逆だと 魔獣のレベルが上がってるから 危険だしって事かな?
その辺りもダンジョン様の気遣いが感じられるよね。
「罠は基本的には避けて通るのよ。敢えて 発動させてしまうこともあるけど、このダンジョンだったら 発動させても大丈夫そうね。兄さん どう思う?」
「ん~、そうだな。どんな罠があるのかを見るのも勉強になると思うから どこにどんな風に罠があって、どんな効果があるのかも見る為に発動させようか」
おぉ、それは面白そうだね。
森とかだと 自然の中に罠があるらしい。例えば 木だと思ってたら魔木のトレントだったり、綺麗な野鳥だと思ってたら 神経毒をまき散らす魔鳥だったり、食べられる食材だと思ってたら 毒だったり。
あくまでも自然の中にある罠と一緒かな。食材に関しては キノコ類は毒キノコもあるし、薬草だって毒草があるからね。
ただ、自然系じゃないダンジョンにおける罠は、所謂 トラップ的な感じらしい。
例えば 石畳の一枚を踏んだら 槍が落ちてきた とか。
壁の一部を触ったら 壁が消えて パニックルームばりに魔獣が溢れて出てきた とか。
あくまでも【罠】があることが前提なので、避けることもできるらしい。
注意力散漫で歩いていない限り見つけられるはずだとガルスさんは言うけど、上級や特級になると その罠を見つけるのも かなり困難になるとは テーアさん談。
ちょっとドキドキするけど、体験してみないとね。
休日の間に 冒険者ギルドに 臨時合同パーティーを組むことは伝えており、ダンジョンの工程表も提出済み。
下調べもしっかりして、今回は採集を楽しめないダンジョンだから しっかりお買い物もして食材も足しておきました。
ちなみに タディさんのもつマジックバッグは 時間停止つきだそうで、そちらも食材はしっかり購入したとの事。
お父さんが心配するので、野営に関しては ケーテさん達の両親も揃ってテント泊が出来ることになったので安心です。
この家族には 武器完成時以降 手合わせもしている関係で 私が魔法も武器も使うことは伝えている。お母さんの形見として マジックバッグを持っていることも今回伝えた。
なので 多少おかしなことをしても大丈夫な筈。
その辺りも 金ランク目線で ジャッジしてもらいたい。
フルシェのダンジョンには 王都からと 町からの直行馬車が出ていた。
主に利用者は 魔導学園の生徒らしいんだけど、ダンジョンに行くのが観光とか アトラクションになっていないかと思ってしまった私は 特権階級が嫌いだからそう思ってしまうのだろうか。
「ははっ、まあ 普通の冒険者は たかだか1時間くらいなら 歩くだろうな。金も勿体ないし 1時間くらいの距離は遠いと感じない。
感じるような奴は 初級ダンジョンで鍛え直すべきだしな。
まあ だが 帰りは疲れてるし 怠いしってんで 馬車に乗ることもあるぞ。臨機応変ってやつだな」
タディさんはガハハと笑いながら持論を述べる。
勿論私たちは 6人で歩いております。
招き猫亭の女将さんは 来月くらいが予定日らしく、流石に 来月には宿をお休みにするらしい。今月も 団体客の予約は断っていたという事で 私たちは同郷の誼って事で 泊めてくれたんだろう、ありがたいことである。
「ヴィオったら 本当に鍛えられてるのね。私たちと同じ速さで歩いても 全く疲れてなさそうだわ」
「身体強化を使ってないと流石に無理だけどね。足の短さは成長しないとどうしようもないのが残念なんだよね」
「ははっ、ヴィオちゃんはまだ 6歳だろう? まだまだこれから成長期じゃないか。
ケーテもこの1年で随分身長が伸びた。もう俺の肩に届きそうじゃないか?」
「ん~、そうね。もう少し大きくなった方が槍は使いやすいだろうから 早く大きくなりたいわ」
お父さんとタディさんは 2メートルに近い身長があって、私はお父さんのウエストくらいだ。出会った時は 足の付け根くらいだった事を思えば 随分急成長していると思う。
ケーテさんは9歳女子、私とは頭一つ分くらいの身長差がある。
ガルスさんは15歳男子、お父さんたちの肩くらいの身長だから 日本の平均身長を考えれば 十分大きいと思う。
足の長さや 一歩の歩幅を比べたりワイワイお喋りしながらダンジョンに向かっている。
お兄ちゃんたちとだと 美味しいもののメニュー考案だったり、魔法の使い方、効率のいい戦い方なんかを話しちゃうから、こんな風に 何でもないお喋りをするっていうのは はじめての体験かもしれない。
私、脳筋妹だとお兄ちゃんたちに思われているかもしれない!
ちょっと風の季節までに なんか 女子っぽい話題を見つけておかないとだね。




