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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第213話 乗合馬車と冒険者 前半


「お~、ちょっとそこどいてくれ、ギリギリ乗れたな。

おい、ルルアもこっちに座れ」


「オジサンそっちに行ってくれる?あたしたち 馬車を護る為の冒険者だからぁ~」


うわぁ、何だコイツ。

ってリアルに思う人がいるとは思わなかったですよ。

大剣使いなんだろうね、背中に大きな剣を背負ってるんですけど 非常に邪魔ですね。マジックバッグに入れないんですか? ああ、腰に下げてるのには入らない程度のマジックバッグなんです?

お仲間の男の人二人はデカいリュックを背負ってるから 容量多めのマジックバッグ持ちではないんでしょうね。


あっは~ん♡な体型を隠しもしない猫獣人のお姉さんは 大剣使いの右側に しなだれかかるように座り、呼ばれた兎のお姉さんは遠慮がちに 隣に座る。

だけど大剣男にグイっと腰を掴まれて 強制的に凭れ掛らされております。


そして 先に馬車に乗っていた ヒョロっとしたおじさんは 大剣男と猫のお姉さんに追いやられてしまった。まじで 何だコイツ。


乗合馬車は所謂箱馬車タイプで 結構頑丈な感じ。

中は内向きのベンチが壁に固定されているんだけど、6人掛けが出来るようになっている。なので12人は座れる感じ。

箱の上、つまり外には梯子がついていて、屋根は荷物置き場にもなっている。今日は大荷物の客が少ないという事で 屋根は空いている。


「おじさん、私 お外を見たいから 2階に行きたいの。だからここ座って」


「えぇっ、お嬢ちゃん 外は風も吹くし 危険だよ? おじさんが行くよ」


「あぁ、大丈夫じゃ、儂も一緒に行くからな。御者殿 儂らは2階を使ってええか?」


自分の席を追い立てられたオジサンがあまりに不憫なのと、こいつらと同席するのが非常に嫌すぎる。

遠慮なくって感じで 告げたのに おじさんが非常に遠慮がちに断ってくるから お父さんが宥めることになってしまったよ。


「ああ、もう出るから 移動するなら急いでくれ」


「は~い」


「あっ……」


御者の声に これ以上のやり取りは 良くないと思ったらしいおじさんは 感謝を告げて お父さんが座っていた席に座り直した。

遠慮なんていらないんですよ、ただこの密室に居たくなかっただけなので。

後ろの扉を開けて いそいそと出たら 兎のお姉さんが何か言いたげにしてたけど 放置ですよ。


「出発するぞ~」


ブルルン ヒヒヒン ブヒヒン


各馬車の御者も 其々に声を掛け合い 3台の馬車が連なるように門を出た。

ガラガラと走る速度は 護衛付きの馬車よりは速い。

だけど 自分たちで走る方が余程速い。整備された街道では それをしにくいのが嫌だ。


『ねえお父さん、スチーラーズよりやばそうだったね』


『ぶふっ、んんん、まあ そうじゃな』


スチーラーズは へなちょこだけど 3人の仲は良い。

チャラすぎるせいで 大抵の人との第一印象は 最悪だけど、横柄な訳ではない。

お姉さんが魔力切れになった時、 あの二人もボロボロだったのに背負って村まで帰ってきたし、訓練でダメダメな時も お互いに励まし合って頑張ってたもん。

でもあの人たちは 大剣使いが王様みたいに偉そうで、男二人は 言いなりっていうか下僕?って感じだった。猫の人は完全に 大剣の女だったし、兎の人は嫌そうだったけど 流され体質っぽい感じ?


『あんな感じで 敵が来て戦えるのかな。銀の中級ってお兄ちゃんたちと一緒でしょ? そうは思えなかったな』


まあスチーラーズも同じな訳だから “銀の中級” もピンキリという事だろう。

あ、一応 腐っても銀の中級冒険者たちだからね、悪口言われてブチギレしそうな人たちですから 【サイレント】を使って喋ってますよ。


それにしても 外にして正解だったね。

中は 御者さんが見える前方に大きな天窓と、後ろの扉に小さな窓があるだけで 閉鎖的な部屋だった。空気穴はあるけど 屋根があるから外が見える訳ではない。

多分中がよく見えるのは防犯的に良くないからそういうデザインなんだと思う。


薄暗い中で ガタゴト揺れる馬車にずっといるのは 嫌だなって思ってたから、こんな開放的な外にいれるのは最高だ。

室内も何かあった時に冒険者たちが立ち回れるように それなりに箱の背は高かった。

なので屋根も背が高い。荷物を置く為に 手摺もしっかりついている。

だから後方の馬車を操作する御者からも 私たちが二階にいることは分かるだろうけど それくらいだと思う。

つまり 魔法が使い放題という事だ。


『これはええな』


『サブマスさんが 高いところから落ちる時に 使ってくれた時から練習してたんだ』


お父さんと二人 【エアウォール】を使って 文字通り《空気椅子》に座っております。

学び舎で武術訓練をしていた時、一番高い壁に登ったは良いけど 下りられなくなった時、サブマスが【エアウォール】をクッションのようにして受け止めてくれたことがある。

非常に柔らかくて 人を駄目にするクッションのような感じだったのだ。


【ウォーター】では既に実験成功していたんだけど、水だからね。万が一ここで失敗したら 困るので【エア】を使ってみました。

馬車の揺れも空気椅子がクッションとなるので 全く気にならないです。


背もたれ付きに形を変えて 寝そべる感じで 空を見上げる。

お父さんもそれを見て 同じようにグデーンとして 心地よさげ。


ヤッベェ冒険者に出会ってしまったけど、お陰でこんな快適に移動できることになった。ある意味感謝です。

なので あの人たちが活躍しないで済むように 【索敵】はしておいてあげましょう。

ダンジョンではないので 全体にではなく、自分の周囲1kmくらいでね。

冒険者を乗せた馬車なので 何かあった時にすぐ対処できるよう 先頭を走っています。2台分に冒険者がいる場合は前後にするらしいけどね。


大きな道路には 等間隔に魔獣除けの柱が設置されており、弱い魔物は近づかない。

深い森も 流石王都のある土地だけあって そんなにないらしいので、索敵範囲に魔獣が引っかかることはないまま 第一休憩所に到着してしまった。

 

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