第202話 グーダン大山ダンジョン その13
お風呂のお陰か いつも以上にぐっすり眠れたのは 私だけじゃなかったみたい。
という事で 浴槽は私のマジックバッグに入れて 野営地に到着したら設置するという形で ほぼ毎晩お風呂に入る事が出来た。
11階は3日かけて ゆっくり見て回り、油袋も黄色と緑の2色分をかなりの量ゲットすることが出来た。
残念ながらハズレのものは見つけられず、お兄ちゃんたちには ハズレを欲しがることを不思議がられただけで終わった。
だけど14日目、12階に下りたところでそれを発見した。
「あ~! あった、あったよ!」
「なにか見つかった?」
「茶色の油袋!」
「ヴィオ、あれハズレだって言っただろ? なんで見つかって喜んでんだ?」
茶色いフウセンカズラだけが鈴なりに生っている木を見つけて喜んでいたら ルンガお兄ちゃんが呆れたようにハズレだと再度教えてくれる。
「うん、覚えてるよ、でもさ どれくらい匂いの酷い油なのか確認しておきたいもん。豊作ダンジョンだから食用だと思ってたけど、実は食用以外で使える油かもしれないでしょ?
糸とか 蛇皮とかだって出るんだもん」
そう、私が思ってたのは 食用以外に使える用途があるかもしれないという期待。このダンジョンで採れる全てが食材になるのであれば 疑いはしなかったんだけど、そうじゃないアイテムもドロップすることがあるなら、食材じゃないだけかもしれないもんね。
ということで 早速1つだけ採ってもらって 小瓶に油を移してみる。
「ん?」
風船部分の一部をナイフで切って 瓶に傾けながら移し替えていると 懐かしいような匂いが鼻に届く。
なんだっけ この匂い。
全部を移し替えてから 改めて瓶に入った油の匂いを確認する。
クンクン
こ、これって、これってあれじゃん!
「な、クセが強いだろ? ハズレだって分かったか?」
ルンガお兄ちゃんが 眉間にしわを寄せながら そんな事言うけど、バカチ~~~ン!!!
「ハズレなんかじゃないよ、超当たりだよ! これ全部採集する! 何なら これの美味しさを確認させてあげるから 今日はこれを使った料理を作る!」
「「「えぇっ!?」」」
私の宣言に驚愕の声をあげたのは お兄ちゃんたち三人、お父さんは驚いているようだけど 楽しそうだとニコニコしてくれてるので 楽しみにしてて!
とりあえず目の前の1本の木に生っている茶色い油袋だけを全て回収して、ひとまず今日の野営地まで移動する。
お兄ちゃんたちは 半信半疑というか 戦々恐々という感じなので、いつも通りの料理も作ってくれて構わない。私のは試食として 試してみてくれればいいから。
手っ取り早く 色んな野菜のナムルを作ってみた。
鶏がらスープの素のかわりに 鳥出汁スープをフリーズドライにしているのがあるから それを粉々にして、茹でて 水きりした野菜たちに 茶色の油と一緒にまぶすだけだ。
まだ見た事はないけど、コレがあるという事は 本体もあるはず。是非手に入れておきたいところだ。
お父さんに 味見をしてもらうのに一口食べてもらえば 「おぉ、これは」と言いながら スピニッシュと ジンセンを全部食べられてしまった……。
「お父さん……」
「あぁ、悪い。味見のつもりが 止まらんかった。これは 病みつきになるな」
他の野菜を茹でてる間に お皿が綺麗になってて驚きましたよ。
お父さんも ゴメンと謝りながら 下茹でを手伝ってくれることになったから まあいいけどね。
だけど お兄ちゃんたちがそれを見て 味見をしたいと言い始めた。
「だって、父さんが美味しいって言うことは 相当でしょ?」
「まさか ハズレ袋が食べれるなんて驚きだけど、俺も興味がある」
ということで、色んなお野菜で お試しナムルを作ることになったよ。
結果として この後 茶色い油袋は見つけ次第 採集しまくることになりました。
ごま油の良い香りは 知らない人が初めて嗅ぐと 確かに不思議な香りだと思うかもしれないけど、食べると病みつきになってくれた。
ハズレと思われてた食材がまだまだあるらしいけど、これは 楽しみが増えて来たね。
クルトさんも まさかの油袋の美味しさに 深層階でのハズレアイテムを見つけるのが楽しみだと言っている。美味しいものだと良いね。
ドリアンや 世界一臭い缶詰と呼ばれるシュールストレミングは食べたことが無いけど、そういう類いのモノじゃなければいいな。
11階は3日かけて見回ったけど、12階からは 前半、後半に分けて 2日ずつ回ることにした。
魔獣討伐に時間がかからないし、採集も 木魔法を使えるメンバーが3人もいるから 木の上の採集もかなり時短で出来ちゃうからね。
そして 14階でゴマを見つけた。
いつものように草を引っこ抜いて採集した根っこには、クルミのような見た目のゴツゴツした実が沢山あった。
パッと見は パテトに似ていたけど、ルンガお兄ちゃんの「種の実か~、ハズレだな」の言葉に 違う植物だという事が分かって 確認することにしたんだよね。
採集した時に よく分からないものや ハズレかもと思ったモノでも、とりあえず野営地に持ち帰って確認するようになったのは ごま油の一件があったからだ。
種の実というのも 割って見ればタネしか入っていない事から そう呼ばれるようになり 捨て置かれるハズレ収穫物だったらしい。
卵のように割れる訳ではなかったので お父さんに割ってもらえば 出てきたのが 大量のゴマ!
私が大喜びしたのはお察しのとおりである。
これだけで食べる訳じゃないけど、色んな料理に使えるようになると言えば 非常に喜んでもらえた。
その日の夜には パタータに ゴマをたっぷり振りかけた大学芋もどきを作ったよ。
明るいオレンジ色の丸い芋が採集出来た時は かなり驚いたけど、食べてみればサツマイモによく似た ほっこりした甘さのある パタータは、見つけたら大喜びされる当たりの芋となった。
ここがダンジョンで、毎日木の上に上ったり、走ったり、魔獣を討伐したり、採集をしているから良かったけど、普段より確実に食べていると思う。
普通の生活で この食生活をしてたら 確実に肥ると思うレベルで食べてる。
油の木は 11階以降には 定期的に生えてるから 揚げものも2日に1回はやってるし、普通の果物が生る木も勿論あるから デザートもある。これは気を付けねば……。
ダンジョンでこんなことを気にする日が来るとは思ってなかったけど、豊作ダンジョン恐るべしである。




