タイトル未定2025/03/31 14:43
軽い昼食を食べた後、お父さんと トンガお兄ちゃんに 浴槽作りは任せ、私たちは採集に繰り出した。
階段から真っすぐに下りてきたから このセフティーゾーンを含めた 前半1/3エリアは 殆ど見てないと言ってもいい。
という事で その辺りを重点的に見て回ることになった。
「ヴィオは上、ルンガは 正面、俺は足元を特に気を付けて動こう」
「わかった」
「は~い」
普段は トンガお兄ちゃんがリーダーだけど、いない時には サブリーダーのクルトさんが指揮を執るそうだ。私は 索敵範囲を 木の上まで上げて しっかり確認しながら歩く。
前衛は ルンガお兄ちゃん、私が中央、クルトさんが後衛の形で行動する。
「イエローワプスは 攻撃しないでいいんだよね?」
「そうだな、特に欲しい素材もないし あいつら 反撃するときには 集団で来るからやめておこう」
「了解、【エアショット】」
ワプスを確認したところで 私たちの真上の木から イエロースネークが姿を見せたので 風魔法で眉間を打ち抜く。
普通の森なら 背中の皮と腹側の皮の境目から解体するとか 結構気を使う相手だけど、ダンジョンだと 皮もある程度加工された状態で出てくるので 遠慮なく攻撃できる。
ハラリと落ちてきたのは 蛇皮で、残念ながら お肉ではなかったんだけど、皮は防具屋さんでも使うし、サマニア村へのお土産としては好評なので持ち帰る。
私の装備は 伸縮素材を使ってくれているので まだまだ しばらく着る事が出来るけど、あと10cmも身長が伸びれば 流石に作り直した方がいいと言われているので、蜘蛛の糸は 非常に持って帰りたい素材だ。
木の上の フォレストスパイダーを見つければ 積極的に狩っていく。幸い 豊作ダンジョンでも 彼らの落すアイテムは糸のままなので非常にありがたい。
クルトさんは 足元担当なので 時々出てくる ホーンラビットや グラスラットなどを剣で突き刺している。
「クルトさんが剣を使ってるの久しぶりに見た気がする」
「俺も久しぶりに使ったわ。てか こいつらだと 魔法でやるより 剣の方が早い」
魔法だと 的が小さい分 集中して当てないと駄目だけど、剣だと 反射で 突き刺せるから楽なんだって。モグラたたきみたいだね。
「的が小さいとそうだよな。けど その方が訓練にはなるんじゃねぇの?」
ルンガお兄ちゃんの指摘に ハッとしたらしいクルトさんは 剣をマジックバッグに収納してしまった。まあ 急いで倒さないといけないような敵は居ないしね。
そんな感じで のんびり散策をしていたら ルンガお兄ちゃんが採集物を見つけたらしい。
「おお、ヴィオ あれが油袋だぞ。緑ばっかりだから当たりの木だな」
嬉しそうに指さす先には 木にぶら下がった袋……?
フウセンカズラのような見た目の袋が プラプラとぶら下がっている。
これが油袋???
ひとつ取ってくれたものを掌に乗せれば 液体が中に入っているのが分かった。
そして薄い葉っぱのようなものだと思った袋は 意外としっかりしていて 多少の事では破れそうにない。
「緑は エライアーの油だからな、一番使いやすくて人気だ。俺も瓶に入れて数本は持ち歩いてる」
エライアーの油は オリーブオイルに似ている油で 非常に使いやすい。お父さんが料理するときにも一番よく使っている油だ。ってか こんな風になってるの?
「エライアーは 普通に育てられてるとこだと 実を摘んで油を抽出してるからな。こうなってんのは豊作ダンジョンならではだと思っとけ」
豊作ダンジョンと呼ばれるダンジョンは 大小の違いはあれど 結構各地にあるらしい。グーダンは中規模なんだって。
「お兄ちゃん、緑が当たりってことは ハズレもあるの?」
「おー、黄色は 花油だから これもまあ当たりだな。でも茶色いのはハズレだ。臭いが独特で 使えねー。黒も 白い固まりになってるからハズレだな」
「白と青も当たりらしいけど、俺はまだ見つけたことが無い。まあ 茶色と黒を避ければ良いって事だ」
へえ~、そんなに種類があるんだね。
花油って事は菜種油とか ひまわり油に似ているのかな?茶色の匂いは気になるけど、見つけたら一つだけ確認してみよう。
という事で、とりあえず ここの油袋は当たりの油なので 採集していくよ。
「その鞭便利だな~」
「ルンガお兄ちゃんも 木魔法が使えるでしょう? これ 鞭の先に蔦魔法を再現しているだけだから お兄ちゃんはそのままできると思うよ?」
「マジか、やってみる」
「んじゃ 俺が警戒しとくから 二人で採集してくれ」
ルンガお兄ちゃんと クルトさんは 手づかみで採集していたけど、私は身長が足りないからね。最初から鞭を使ってシュルシュル プチンを 切り取っては 私の手元まで持ってくる、を繰り返してます。
便利そうだと言う ルンガお兄ちゃんに助言すれば 直ぐに蔦魔法で採り辛い場所の袋を採集していくから流石です。
この後も 2本の油の木を見つけて 緑と黄色の油をゲットしました。
茶色は残念ながら見つけられなかったので、後半に期待だね。
所々にあった スパイス用の植物も採集し セフティーゾーンに戻った。
「帰ったぞ~、緑の油袋見つけたから たっぷり採集してきた。父さんたちと半分にするように ヴィオに持たせてるから」
「おぉ、それは助かるな。
ヴィオ、風呂が出来たぞ。早速入るか?」
「ヴィオのマジックバッグだったら入るって 父さん言ってるけど、容量きつかったら置いていって良いからね」
トンガお兄ちゃんはそんな事言うけど、こんな立派な浴槽を 今日だけの使い捨てになんてできないよ!
完成した木の浴槽は お父さんが入っても ゆったり足を伸ばせるサイズ。
1人暮らしのユニットバスよりずっと大きい、横幅も 私だったら二人並べるくらいある。
しかも浴槽の中には 小さな椅子が作りつけられているので、私が入っても 溺れることはない新設設計。お父さんたちの 足置き場として丁度いいって。
「すごい、すごいね!こんな立派なお風呂を作れるなんて、お父さんも トンガお兄ちゃんも凄いね!
直ぐに入りたいけど、折角油袋も持ってきたから 夕食後に入りたい!」
浴槽作りの為に 昼食を軽めにした分、夕食はしっかり食べたいと思うので、油袋も沢山持ってきたし、今夜は揚げ物も作ろうと思う。
ココッコのお陰で 鶏肉も沢山あるし、蛇、兎、鼠の4種でから揚げを作ろうと思う。
鼠と言ってもグラスラットのお肉は食用だからね、癖のないさっぱりした味です。
お酒と塩コショウ、採集で掘り出してきたレモンを絞って下味をつけ 下準備。あぁ、レモンは あの檸檬と同じように酸っぱい柑橘系の果実なんだけど、こっちでも 普通の場所では 木になっているらしい。
だけど ココでは 土の中から ジャガイモのように鈴なりに採集できました。
うん、もう気にしないことにしたよ。
今日はたっぷりの揚げ油で一気に揚げていくので 深鍋に 油袋を2袋投入した。
お父さんと クルトさんと 私の三人で夕食作りをしているんだけど、私が揚げ物担当をすると宣言し、肉の下味をつけ始めたところで、トンガお兄ちゃんと ルンガお兄ちゃんの二人が「肉をもう少し確保してくる!」と言って出かけてしまった。
既に 4つの山が出来ているのに、多分1山=2kgはあると思うのに、それでも足りないのでしょうか?
お父さんは付け合わせようの 温野菜を作ってくれていて、クルトさんは 野菜たっぷり具沢山スープを作ってくれている。
毎日大量に野菜が採集できる(している)ので、野営では 生野菜をどんどん使っているんだよね。フリーズドライにして 乾燥野菜も作ってるんだけど、採集する量が勝っているので 少しずつ マジックバッグに在庫が増えている。
片栗粉と小麦粉をミックスした粉ををまぶした後、肉を 油に投入していくのはお父さん、油跳ねが危ないからと交代してくれました。
今日は普通のテーブルで良いので 土魔法で広いテーブルを準備しておくよ。お肉が4種類あるから 食べ比べが出来るように 4枚のお皿を4セット準備した。
届かないお皿のお肉の為に争奪戦が起きそうだからね。未然に防ぐことができるなら 準備はしておきたい。
ジュージュー パチパチ と非常に良い音が食欲をそそる。
二度揚げをすれば また食感が変わるんだろうけど、それは自宅に帰ってからゆっくりすればいいかな。
そしてスープも完成し、揚がった から揚げを 其々のお皿に小山を作り終えた頃、お兄ちゃんたちが戻ってきた。
「ただいま~、ボアの群れに遭遇したから お肉いっぱいもらって来たよ~」
貰って来たのではなく 狩ってきたのですよね? 普段は しっかり者の長男っぽいのに、時々脳筋発言があるんだよねぇ。
「今日食べたいんじゃったら焼くか? ヴィオが 頑張って作ってくれた から揚げが山ほどあるが……」
「おぉ!一人ずつの皿にこんなにか!
ん?ヴィオの分の皿が無くないか?俺の分からとっていいぞ。
こんなに肉があるなら ボアは明日でいいだろ、なあ 兄貴」
「勿論、ヴィオ 僕のお皿からも取って良いからね。何個食べる?」
いや、私そんなに食べれないし、其々のお皿から1種類を1個だけ、4人いるから4個食べれば十分だ。
皆の為に結構大き目のから揚げにしているからね。
遠慮するなと言われるけど、スープに 温野菜、パンまであるのだ。4個食べれるかどうかも怪しいレベルの量ですからね。
から揚げは 前に食べた事のある兎肉は 明日の朝食用に取り置いて 3つを完食、パンは 流石に食べれなかったので、明日の朝食用にから揚げを半分にして 薄切りにしたパンに野菜と挟んだから揚げサンドを作りました。
それを見ていたお兄ちゃんたちも (ギリギリ)残っていた から揚げを 夜食用か朝食用のサンドイッチにすることにした模様。
から揚げ肉の一番人気はやっぱり鳥肉、次いで 兎、鼠、蛇となりました。蛇は淡白過ぎたので 次は 濃い目の下味をつけてからにしようと思います。
※閑話を除いた 本編が200話になりました。
まだ洗礼式さえ迎えていないのに……。
でもまだまだ冒険は続くので マッタリお付き合いいただければ幸いです♪
お読みくださる皆さま、いつもありがとうございます( *´艸`)




