表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

224/416

第196話 グーダン大山ダンジョン その7



「おぉ、今日は クッシャー(南瓜)を使うんか」


「うん、またさっき採れちゃって 5つも鞄にあっても邪魔だから 2個使っちゃう。お兄ちゃんたちも頑張って食べてね」


採集地は ランダムな作物があって、何があるのかが分からないのが困る。

麦だけの場所とか 決まっているなら 1本抜いて確認することができるんだけど、そうでもないのが困りものである。

普通の冒険者は いらない採集物は置いていくらしい。

そのうちスライムか ゴブリンたちが持って帰って食べるのだろう 腐って放置されているという事はない。

だけど 私たちはマジックバックがあるし 貧乏性だから ついつい持って帰ってしまうのだ。

採集は くじ引きのような楽しさがあって ついつい沢山引っこ抜いてしまうのも大量になる理由だ。


「へぇ~、クッシャーって あんまり食べたことないけど、ヴィオが作ってくれた料理なら何でも食べるよ 楽しみ!手伝えることあったら言ってね」


「へぇ、俺も手伝うから レシピ覚えていいか?」


「美味しくできるかわかんないよ?」


クルトさんは料理担当だから 珍しいレシピはどんどん覚えたいらしい。今回は 他の冒険者と会うことがないから 料理を沢山作っているし、お父さんのレシピも真剣に聞いてメモしているからね。

私のレシピは記憶頼りだし、こっちの調味料で再現が難しいのもあるから 味に自信はないけど、ダメならダメで アイデアをもらたいんだって。


クッシャーの見た目は南瓜なんだけど、オレンジの南瓜だ。

割っても中に種は無く、ツルンと空洞があるだけ。非常に処理がしやすいし 固くないので切るのも怖くない。

半分にした クッシャーを ザクザク薄切りにして 茹でる。レンジがあれば便利だけど それに代わるような魔道具もないし 仕方がないよね。

別のレシピ用にも 1個丸ごとと さっきの半分のクッシャーを 5センチ大ぐらいにザクザク切って これも茹でていく。


「こっちのと こっちのは 一緒に茹でなかったのは何でだ?」


「レシピによって 食感が違うし 薄切りのは直ぐに火が通るから早めに上げたいから分けたの。

大きいのは 完全に潰すのと あらめに潰すのが目的だから 一緒でも良いかなって思っただけ」


そうか、と言って メモしていくクルトさん。

その間に ルンガお兄ちゃんは 麦の製粉、お父さんと トンガお兄ちゃんはテントの準備をしてからスープ作りなど、ダンジョンにいるとは思えない程 のんびり マッタリやってます。


薄切りにしたものは スッと串が通るようになったので 一旦水を切ってあげておく。

今日はスネークのお肉がたっぷり手に入ったので それを豚肉のかわりに使いましょう。片栗粉モドキを肉に塗して クルトさんに炒めてもらう。

その間にタレ作りだ。といっても 肉焼きでよく使っているタレを使うだけだけどね。

お肉の色が変わってきたら そこにゆで上がったクッシャーを入れて、タレを投入して しっかり炒めてもらう。


「あとはこれを入れたら彩も綺麗だよね」


みじん切りにしたチャイプー(青ネギ+ニラミックス)を入れて もう少しだけ炒めたら完成。


「やっば、すっごい暴力的な匂い!」


「はいはい、まだだから これは一旦 私の鞄にしまっておきまーす」


皆が涎を垂らしそうになっているけど、まだ二品残ってるんだから 一旦収納ですよ。

えぇ~ じゃありません。

クルトさんは 次のレシピの為に切り替えてメモをまた準備してるけどね。


「お父さん、揚げ物を作りたいから パン粉と 揚げ油をお願いしても良い?」


「おお、野営で揚げ物とは豪快じゃな、まあ偶にはええじゃろう」


揚げ焼きにするから 家でする時ほどたっぷりの油でなくても良いと伝えたので 適量で準備してくれるはず。


「クルトさんは この1個分を しっかり潰してもらっていい? 食べ応えが欲しければ 滑らかに潰したのと 賽の目切りにした大きさのを混ぜても良いけど」


「いや、今日は全部潰したので作ってみる。次作る時は2種類作ってみてもいい」


料理のことになると 超真剣になるんだよね。

いや、戦ってるときも真剣でしたね、失敬失敬。


クルトさんにコロッケ用のマッシャーをお願いできたので、私は残りの 1/2個ぶんのクッシャーをフォークで荒く潰していく。

そこに茹でたソーイ(枝豆)と 小さく刻んだチーズを入れて しっかり混ぜる。

マヨネーズを入れたいところだけど、まだここで見た事が無いので 普段サラダの時に使う ソースと スパイスを入れて よく混ぜれば クッシャーサラダの完成だ。


クルトさんは 力も強いので あれだけの量があったにもかかわらず しっかり全部滑らかに潰れてました。そこに塩コショウと お父さんお勧めのスパイスを入れて 混ぜ合わせる。

一口大の大きさに丸めるのだと言えば、皆が手伝うと言ってくれたので 結構な量だったけど 直ぐに全部が 団子になった。

それにパン粉を塗して 熱した油で 揚げ焼きにすれば クッシャーコロッケの完成だ。


「わ~~~!今日すっごい豪勢‼」


「ヴィオの料理作りも随分手慣れて来たな、家のキッチンも もう少し使いやすくせんといかんなぁ」


「俺 もう 腹が減り過ぎておかしくなりそう」


普段は テーブルを出すことはないんだけど、今日はかなり料理数も多いからね、お父さんが土魔法で 大きなテーブルを作ってくれたおかげで スープ、パン、肉炒め、コロッケ、サラダがドドンと並んだ。

肉炒めは フライパンごと鞄に入れてたので まだ 熱々のままだ。

今日はテーブルに 大皿料理に乗せた状態で出したので “いただきます” を言い終えたと同時に シュバババババと 目の前から料理が消えていく。


お父さんが 先に少しずつ私の分だけ取り分けてくれた理由がよく分かった。

コロッケは クッシャー自体の甘さがあるから ソースをかけなくても十分美味しい。


「うん、これ ゴロゴロのを入れても良いし、中にチーズを入れても良いかも」


「ん~、ほへほふをむん」


うん、何言ってるか分からないけど 多分 “それ食べたい” 的な感じかな?

誰もが 静かに だけど 驚異的な速さで 食べております。ゆっくり味わいたいクルトさんは 別皿に 味わう用をキープした状態で 出来るだけ多く食べれるようにしているみたい。

私はそんなに食べれないから、肉炒めを食べた後 パンを半分の薄切りにして その間にサラダを挟んでサンドイッチ状にして食べた。

うん、コロッケサンドにするか悩んだけど サラダで正解……って満足してたら 向かい側に座っていた3人の目が ギンっ‼ってなってて、直ぐに真似してサラダサンドにしてた。

コレ 後3つのクッシャーじゃ 足りなくなるかもね。



「プハ~、お腹いっぱい! ダンジョンなのに こんなにお腹いっぱいとか あり得ないけど幸せ過ぎる」


「豊作ダンジョンいいな、こんなに野菜ばっかで満足できると思わなかったぞ」


「揚げ物は考えたことが無かったけど、あの揚げ焼きで良いなら そこまで油の量はいらねーし 使えるな。後半は油も手に入るし、ヴィオ また揚げ物作ってくれよ」


使ったお鍋やフライパン、お皿を片付けたら テーブルも 土に返して元通り。

お兄ちゃんたちは 大の字になったまま天井を見上げて満足げ。それだけ喜んでもらえたなら作り甲斐があるよね。

クルトさんからは 他の野菜で作るなら、とコロッケレシピを相談中。これはお父さんも混ざってお料理談義だ。油が手に入るというのは朗報だね、他にも何が作れるか考えておこう。

私の料理レシピは 今は亡きお母さんから習ったレシピという事になっているけど、実際のお母さんのレシピは覚えていない。

こんなに早く別れることが分かっていれば もっとまじめに お母さんと一緒に台所に立てば良かったと思う。あの頃のワタシは 今の私の記憶が蘇ってなくて、ただの普通の5歳のヴァイオレットだったから仕方がないんだけどね。


レシピ談義をしていたら 人の気配が近づいてきた。

夕食スタートの時点で 6階に人が上がってきたのは分かってたけど、こんな時間だから どこか手前のセフティーゾーンで野営をすると思って放置してたんだけど、ここまで来たね。


「ん? おぉ、人の気配があると思って ここまで戻ってきたが 本当に居たな。だが パーティーだったか。

ん、んん? ドワーフか?

いや、1人以外は皆クマ獣人という事は家族のパーティーか。

あぁ、突然すまないな、私はグーダンギルド所属〖鋭牙轟雷〗のリーダーを務めるチェマと言う。彼はサブリーダーのイズだ」


「サマニアンズのリーダー トンガです、弟のルンガ、友人のクルトの三名がサマニアンズのメンバーで、こちらは父のアルク、妹の ヴィオです。二人は別のパーティーですが 今回は合同で潜ってます」


お兄ちゃんが代表で挨拶を交わしているけど、あちらのパーティー名が聞き取れなかったんだよね。

リーダーさんは 尻尾と耳から 黒猫かな……? イズさんは 虎さんだね。クンクンしているけど もしかしたら さっきまでのお料理の匂いが残ってるかも。特に人もいなかったし 広い場所だったから 換気もしてないんだよね。


「我々は 上級指導員をしている関係で 今このダンジョンに潜っている10階以下の人たちに 水生成魔法についての情報を伝えて回っていたのだ。君たちは 情報を知っていただろうか?」


あぁ、この人たちがそうだったんだね。

聞けば 金ランクの白級冒険者だけど、今は指導員として後輩の育成をメインに活動しているんだって。あとはこのダンジョンで捜索が必要になった時に潜ってるみたい。

トンガお兄ちゃんが 水生成魔法については知っているし 既に習得済みだと伝えれば それは素晴らしい!と喜んでいる。

中々 テンションが高い人である。


「エイガゴーアイのリーダーさんは……」


「なんだろうか、君は皆の妹さんなんだね。私のパーティーは 鋭牙轟雷エイガゴウライと言うんだよ。鋭い牙を持ち 激しく轟く雷のように強くなりたいと願って付けたんだ」


あぁ、中々厨二心溢れるお名前だったんですね。

そして 虎のお兄さんは その名前が悶えるほどに恥ずかしいのですね。うん、若気の至りって感じだったんですかね。リーダーは今でも気に入っているようですから こうして名乗り上げるのが恥ずかしいんでしょうね。分かりますよ。


「今日はこのまま上まで上がるのですか?」


「あ~、いや 今日はこの階で適当に野営をするつもりだったんだが、非常に良い匂いと 人の気配に釣られてここまで戻ってきてしまったのだ。

先にいた君たちには申し訳ないが、今夜は 私たちもこの端っこで野営をしてもいいだろうか」


あぁ、獣人さんだったら 普通の人よりも嗅覚が優れているだろうし お料理の匂いが 漂ってしまっていたのですね。これは 他のダンジョンでは気を付けないとだね。


「夜営に関しては 勿論大丈夫ですよ。あぁ、夕食の残りでよければ 召し上がりますか?」


そう言ってトンガお兄ちゃんが出したのは 念のために作っておいてくれた 夕飯の肉串だ。

今日はクッシャーに満足してくれたから 肉串は余ったんだよね。だから夜食用にと パンに葉物野菜と串から外した肉を挟んだ サンドイッチを 夜食用にと作ってたんだよね。

それを出しています。かぼちゃは食べつくされて残ってないもんね。


「えっ、良いのですか? 皆さんは これからさらに潜るのでしょう? 貴重な食料を頂いて大丈夫なのですか?」


「ははっ、豊作ダンジョンで 採れたものだけで作っていますから 足りなければまた採集しますよ。匂いの犯人は僕たちなので お詫びも兼ねてです、どうぞ」


「ありがとう、いただきます」


「ああ、では俺もいただきます。んん!これは タレが絶妙な美味さです。んま、んま」


1つずつなんて足りないだろうけど、彼らも指導員をするようなレベルの人だ。きっと行動食なども持ち歩いているだろうから これ以上を渡すのは逆に失礼になるだろうという事だった。

私は先におやすみなさいの挨拶をし テントに戻る。

その後もお兄ちゃんたちは お話をしていたようだけど、お腹いっぱいで 人の声が BGMになれば 直ぐに眠りの世界に落ちてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ