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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第195話 グーダン大山ダンジョン その6



「おはようヴィオ、例の自分の魔力が混ざったままの水だけど 回復効果あったよ」


おはようございます。

起き抜けに テンションが高い トンガお兄ちゃんに高い高いをされて しっかり目が覚めました。


「トンガお兄ちゃん おはよう。水生成で作ったやつ?」


「そうそう、空腹感が かなり減少したんだよね」


それって水でお腹が膨れたとかじゃなくって?


「いや、多分効果あったと思うぞ。魔力切れの空腹は 普段の腹減りとは違うからな。落とされそうになる眠気も 緩くなったし、起きてからの回復具合がかなり違ったぞ。

魔力回復薬みたいに 急激に回復するっていう感じじゃないけど、ジワジワ染み渡るみたいに 戻ってくるって感じだったな」


ルンガお兄ちゃんもそう言うなら そうなのかな。

私は眠くなる一択だから 魔力切れの空腹が分からないんだよね。スイッチが切れるみたいに寝ちゃうから お父さんがいないところでは 絶対に魔力切れを起こせないと思ってる。


「しかし それは 魔法を使う冒険者にとっては かなり朗報じゃな。

じゃが 伝えるかどうかは微妙じゃな。まあ お前たちみたいに自分で気付いて実験する奴らも出るじゃろうし 特に報告はせんでええじゃろう」


そうだね、伝言ミスで 魔力を抜かなくても良いってなっちゃったら 飲めないじゃないか!ってなりそうだもんね。

ドゥーア先生や サブマスには伝えるけど、ギルドに報告するのは止めておこうという事になった。




朝食を終えたら 散策の再開だ。

今日は5階が最終目的地だから 午前中いっぱい4階の後半を見て回る。

お兄ちゃんたちは 其々の水筒に 自分の魔力を抜いていない水を用意したことで 魔法をガンガン使っている。

勿論武器は荷物に入れたままで 全員が魔法使い状態です。


本来の立ち位置とは逆で、私は身近な敵を 短剣でサクサク討伐している。お父さんは それを見ながら 時折 草むらでお野菜の採集、スパイスに使える草があれば それを採集、こぼれてお父さんの方に来ちゃったウルフとかは 拳で瞬殺。

全員が見える範囲には居るんだけど、近すぎると 獲物が被ることもあり 結構バラバラで 多分 今この場所に来た冒険者がいたとしても、この5人が パーティーだとは思わないだろう。それくらい自由に行動しています。


昼食時には 5階に下りることが出来た。

昨日と同様 1つ目の セフティーゾーンで昼食をゆっくり頂き、2つ目のセフティーゾーンで野営をした。

この日は 移動中に 戻ってくる冒険者と出会うことはなかった。



そして5日目の今日も 午前中に5階の後半エリアを散策し、採集も行う。

お野菜は ランダムなので とりあえず採集しないと何が出てくるか分からない。

土の中だからと言って 根菜だけでないのはもう分り切っているので、麦が出て来ようが驚かない。

麦が出てきたお陰で お兄ちゃんたちによる パン食い尽しの心配がなくなった。


はじめは お父さんが すり鉢でゴリゴリして小麦に挽いてくれてたんだけど、風魔法で製粉する方法を考えてからは お兄ちゃんたちが夜中にする魔力操作訓練のひとつになった。

これには 風魔法が得意属性でなかった トンガお兄ちゃんも 風魔法を使えるようになりたいと練習を始めた。

確かに 鉱山ダンジョンの索敵以降 土魔法の出番はなかったもんね。


流石に いきなり製粉は難しいから、トンガお兄ちゃんは 葉っぱを左右にゆっくり移動させる練習から始めたよ。

土魔法で石臼みたいに ゴリゴリして 製粉しても良いと思うけど、風魔法の方が不純物が入らないし 何より便利だからね。


「フリーズドライの魔法も この風の玉を使っておるが 便利なもんじゃな」


真空状態を作り出すのに 工場なんかだと丈夫な容器から必要だけど、魔法だとその辺りも操作次第で丈夫さは作れるから便利だよね。

製粉は 中が空洞状態の風の玉を作り、その中に 小麦の粒を入れるだけ。


採れたての麦は 茎から取り除いた後に【クリーン】をかければ、汚れ、状態の悪い粒、外皮を取り除ける。

その状態の粒を 風の玉の中に入れ、蓋をしたら 風の玉の中で 小さな風のボールが高速回転しながら 麦の粒を巻き上げ 細かく砕いていく。

砕かれた粒は 風の流れで 玉の内側を滑り落ち、再び ボールの高速回転に巻き込まれ、更に細かい粒子に砕かれる。何度か繰り返せば 白い細かい小麦が完成するという訳だ。


ルンガお兄ちゃんとクルトさんで製粉作業をして、お父さんと トンガお兄ちゃんでパン作りをしてくれるようになったんだけど、私は手伝わなくていいのだろうか。


「これは 魔力操作の訓練だからな」


「そうそう、僕はまだ そこまで細かい作業が出来ないし、大体 沢山食べてるのは僕らだからね。ヴィオは パンに合う料理を作ってくれると嬉しい」


お兄ちゃんたちの甘やかしではなかろうかと思うけど、クルトさんもそれで頷いてくれるし、お父さんもそれでいいというので 甘えさせてもらいますよ。




5日目の午後、6階に下りて【索敵】をしたら 随分フロア面積が広がっているのが分かった。


「ん……?上の倍まではいかないけど1,5倍くらい? セフティーゾーンが5つもある」


「広がるのと同時に 魔獣の強さも高くなっとるはずじゃからな。

それだけ休憩をとれる場所があるっちゅうことは 危険も多いという事じゃ」


そっか、同じ種類の魔獣でも 上位種でなくても 強さは上がっているって事かな。

今までは初級ダンジョンだから そんなことなかったけど、流石中級って事なのかな。


「ん? 初級でも同じのはずだぞ。同じ魔獣でも低層階と深層階じゃ 速さ、魔法の威力、攻撃力の全部が少しずつ上がってるはずだ。大抵の初心者は 同じ魔獣だからって手を抜いて 痛い目に合うんだ」


クルトさんの発言に驚きしかないんだけど、そうだったっけ?


「まぁ、ヴィオは最初から 初心者の森じゃなかった影響もあって 初級ダンジョンの相手くらいじゃ問題なさ過ぎたからなぁ」


お父さんを見上げれば 苦笑って感じです。

あぁ、あれは 強くなっていってたんですね? でも ウルフも ラビットも 村の森からすれば 子狼に子兎だったもの。ジャンプ力も 速さも 滅茶苦茶遅かったから 分からんかった。


「あ~、まあ あの魔法を編み出しながらやってたんじゃ 初級ダンジョンレベルは 何の障害もないだろうな」


ルンガお兄ちゃんもそんな事言うけど、お兄ちゃんたちだって このダンジョンに入ってから 魔法使いまくってるからね? 私がやってたのは同じことですよ。


何だか脳筋幼女扱いされそうだけど 違うとだけ主張しておかないとね。

6階からは 低層階の後半だから 広くなって 魔獣のレベルもグンと上がるだろうから気を付けようという事になった。


まあ、今日はもう お昼過ぎだし、1か所目のセフティーゾーンを目指して 討伐と 採集をすればいいかな。土中の索敵で 何があるかを確認できればいいんだけど、どうやらこの採集物は ドロップアイテムと お兄ちゃんたちが言っていたのが あながち間違いではないらしく 見えなかった。

“この場所に 何かがある” っていうのは分かるんだけど、それが 麦なのか 白菜なのか 南瓜なのかは 抜いてみないと分からないというやつだ。


南瓜が大量に取れても困るんだけどなぁ。

既に手元に3つもあるから 今日の夜ご飯は南瓜尽くめにしてやろう。


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― 新着の感想 ―
クリーンって神魔法だよね……(砂入りパンで歯を悪くしたファラオのミイラを見つつ)
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