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ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

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第191話 グーダン大山ダンジョン その2


2日目の朝、といっても ダンジョン内は日夜がある訳でもないので体感です。

洞窟ダンジョン以外では 日夜があるダンジョンもあるらしいけど、ここは 薄曇りの日中くらいの明るさがある。

そうそう、ダンジョンによっては お天気が変わるところもあるというから 楽しみだ。


昨日は ギルドへの手続きや 入口の混雑を考えて ゆっくりめの活動時間だったんだけど、今日からは ダンジョンタイムで行動だ。

大体今の時間は朝の6時ごろ、今日は2階の散策をメインにして、もし人がかなり多いようなら 午後には3階に下りて 一番近いセフティーゾーンで野営をするつもり。

勿論 2階の人が少なければ 2階の散策をゆっくりするつもりだけどね。


軽めの朝食を食べたら 早速準備を整える。

1階層は 鼠と 兎くらいしか魔獣は出なかった。でも2階からは 狼と 蛇もでてくるから 気を付けないとね。


早速 2階に下りたところで 2分ほど歩いた場所まで歩く。

利用者が多いダンジョンだと 階段は 人通りが多いからね。高原はだだっ広いので 洞窟などのように 決まった道や 森のように こっちに行った方がいい、みたいなのはない。

勿論下層階へ向かう人たちにとっての 最適な道順というのはあるけれど、この階で採集をしようとする人は あちこちにある 小さな丘や 草むらを狙えばいいのだから。


「じゃあ 今回は俺がやるぞ」


「よろしく」


お兄ちゃんたちの索敵担当は ルンガお兄ちゃんになったようだね。

うちは 基本的に私がやるんだけど 多分コッソリお父さんもやってる。

基本的には 私の訓練の為に 危険性があっても 言わないようにしているし、余程うっかり私が気付いてない時は 何となく 方向修正できるように話題を振ってくれる。

ダンジョン内では 休憩中以外にお父さんは殆ど話さないから、お父さんが発言する=何か危険があるって事だしね。


2階層のセフティーゾーンは3か所、3つ目のすぐ近くに 3階層への階段があるのも分かった。

そして この時間、まだこの階には 冒険者が到達していないようで 魔獣もそれなりの数が徘徊している。

この階に居る蛇は いつものイエロースネークではなく 草むらに隠れて行動する グラススネークだ。草むらに巣も隠しているので うっかり蛇の巣穴に 足を突っ込んでしまえば 小柄な人ならそのまま引き摺りこまれるだろう。

だけど 穴の位置も索敵出来ているので 私はうっかりハマることはない……はずだ。

これはフラグではない、ないったらない。


「うっし 出来た。兄貴 今のところ 他の冒険者は居ないけど どうする?」


「あ~ いないんだ。そしたら この階はさっさと攻略して 3階にいこっか。3階からは 採集もうるさく言われないし 流石に日帰りの奴らもいないから こっちにこないでしょ。父さん それでいい?」


「ああ、ヴィオもそれでええか? 3階は もうちっと魔獣の数が増えるが それは問題ないじゃろ?」


「うん、大丈夫。じゃあ 風魔法でビューンっていっちゃう?」


という事で、他の(日帰りを含む)冒険者がこの階に到着する前に 移動してしまうことになった。

私はお父さんの抱っこスタイルで、お兄ちゃんたちは走る時に邪魔にならない程度に固まって。


「じゃあ、行くね 【ウインド】」


皆の背中と足元に 風魔法を展開すれば ふんわり浮き上がって 背中から追い風に押される。


「おお!やっぱりこれは気持ちがええなぁ」


「やっぱ これ すげえ!」


「高原系と 砂漠とか 無駄に広いダンジョンだったら使うべきだろ」


「二人の魔力操作が早く上達することを祈っておくね、ハハッ楽し~」


お父さんだけじゃなく 三人も非常に楽しそうだ。こないだは 野営地の周囲をグルグルしただけだもんね。今は広い高原だからこそ 非常に気持ちが良いようだ。

人の気配に飛び出してきた ホーンラビットも、ウルフも、グラススネークも、飛び出してきた時には 既にそこに人は居らず。

私だけが抱っこされている事で後方を見ているので ポカンとした(ように見える)魔獣たちが佇む姿を見てしまっている感じだ。


「ヴィオ ストップじゃな」


お父さんの声と同時に魔法を解除する。私の索敵にも 3階に下りる階段に人の気配が見えたからね。

現在地は2階層の 2つ目のセフティーゾーンを過ぎたあたりで、3つ目のセフティーゾーンまでも まだまだ距離があるから アチラ側からは 私たちの存在に気付いていないと思う。

という事で お父さんの抱っこも終了とし 5人で散策しながら歩くことにした。


折角だから 草むらに入って いくつか採集してみることにした。


「ヴィオ、この辺りのを引っ張ってごらん」


トンガお兄ちゃんに言われて引っ張ったのは 周囲の草と何も違いが無い草。採集用の手袋は冒険者装備として着用しているので そのまま腰を落として グッと引き抜けば……。

なんという事でしょう、艶々の人参が出て来たではありませんか~。

って なんでやねん!

隣の草を引っこ抜けば 何故か大根、その隣は さらに不思議なことにジャガイモ。根菜類の集まりですか?って意味が分からん。


「おぉ、この一角は 根野菜の集まりじゃな。ワイラッドに ジンセン、パテトか。スープにも使うから ちょっと多めに抜くか」


そいう言いながら お父さんも楽し気に草を抜き始める。

何故同じ草なのに 土の中にいるのが違う野菜なのだ?

そして野菜の正式名称をはじめて聞いたぞ。今までは それ下さいで通じてたから覚える気が無かったけど いい加減覚えよう。


お兄ちゃんはパテトと呼ばれるジャガイモは好きだけど、ジンセンと呼ばれる人参や ワイラッドと呼ばれる大根は あまり好きではないようだ。

スープには入ってるんだけどね。今夜は大根の煮物を作ってみようかな。醤油はないから トマトスープで煮込んでみよう。


少しだけ丘っぽくなっているところは 短い草が生えていて、所々に花が咲いている。

その花を引っこ抜けと言われて 抜いたら ウレイプ(白菜)に、キャベチ(キャベツ)スピニッシュ(ほうれん草)など 葉物というか 葉茎菜野菜が採集出来た。

だから、何で同じ花から 違う種類の野菜が出るんだよ!


「お父さん、村の畑で育ててる野菜は 葉っぱが違うよね? なんで ここはそうじゃないの?」


「なんで……」


「ヴィオ 何言ってんだ? ダンジョンだからに決まってんだろ? これはドロップアイテムと同じようなもんだろ」


お父さんに質問したら 白菜を片手に固まってしまった。

そしてクルトさんには 呆れたように言われたんだけど え?そういう事?


「え?でも 果物とかは 木に成ってたよね。

薬草とか 香辛料とかも 同じ感じだったよ?

お野菜もそんな風に生えてると思ったんだけど、お野菜だけは別なの?それとも豊作ダンジョンだからそうなってるの?」


「木の実だって 普通の森に生えてんのとは違う木だと思うぞ。アポの実だって 外じゃ一つの木には一色の実しかねーし、木もフサフサしてんのとか、ほっせーのとか、あんまり真剣に見てねーけど 多分違うぞ」


そうなの? 確かに サマニア村の周辺で果実がなる木って見た事なかったけど、実の種類が違うだけで 木は似てるんだな~って思ってたけど、そうなの?

トンガお兄ちゃんにも念のために聞いてみる。


「なんでだろうね~、ダンジョンの不思議のひとつじゃないかな。だってほら、草も 花も 採集したら消えるしね」


……ダンジョンの不思議って言われたらそうだねとしか返せないね。大体 リポップ時間に合わせて 果実も野菜も復活する時点で普通ではない事に気付くべきだったね。

確かに 引っこ抜いた後は 野菜以外の部分は 何故か綺麗に消えてしまっているし、マジでダンジョン不思議過ぎる。


そんな感じで 楽しく採集していたら 3階から戻ってきた冒険者たちの索敵というか 気配察知範囲に私たちが入ったらしく、彼らの動きに変化があった。

ちょっと警戒態勢というか、今まではのんびりだらだら歩いてたのが 陣形を取って 歩きはじめたって感じ。

そうやって見ると ダンジョン内は 気が抜けないんだね。


「さっきまで誰かさんは 抜きまくってたと思うけどなぁ」


誰の事です? 野菜を楽し気に抜いてたお父さんのことですか?

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