表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインは始まる前に退場していました  作者: サクラ マチコ
第一章 幼少期編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/414

第184話 ギルドで報告


お姉さんが カードの手続きをしに行ってる間に 3人のスタッフさんが来てくれて 鉱石の確認をしてくれることになった。


「石灰石は 今後も印付けに使うし、ちょっとしか採ってないから出さないでいいか。石英はこれだけだね」


練習でカンコンしただけなので、用意された籠の半分にも満たない鉱石の量に スタッフさんはちょっとがっかりした表情だ。

ボス部屋に行った人たちだから 期待しているんだろうけど、1階の石なんて 沢山採掘する人がいるから いらなくないですか?


「じゃあ、鉄鉱石からこれね」


ドンっと出された採集袋は パンパンに膨らんだ3袋分

あまりの量に スタッフさんは驚いたようだけど、ウキウキしながら 袋から数を数えながら空いた籠に積み上げていく。

重さで確認かと思いきや 数なんですね。だとしたら 凄い時間かかりそうだけど大丈夫かな?


「次は銅鉱石」


ドンっとまた3袋


「銀鉱石」


ドドンっとまたまた3袋


この辺りでスタッフの動きが止まり、1人のスタッフが階下に人を呼びに行った。

バタバタという足音と共に 入ってきたのは5人

二人一組で対応するらしいけど、足りないよ?


「魔鉄」


ドシン!っと これも3袋


「魔鋼」


これは1袋を持ち帰るので 提出するのは2袋だけ。

だけどスタッフは目を剥いて固まっています。まあ、袋でドンっと出てくると思わんよね。


「最後に魔銀ね、これはボス踏破の宝箱分がコッチのインゴットね」


ドンっと1袋出して、その上で インゴットも5本提出する。


「あっ、あっ、あっ」


「ちょ、ちょっと待ってください、ぎ、ギルマス呼んできて」


「サブマスもです」


アワアワしているスタッフさんが 右往左往しながらバタバタ出ていったんだけど、まあ 叫ばなくて良かったと言えばいい?



残っているスタッフさんが 黙々と 鉄鉱石、銅鉱石、銀鉱石の三種を数えて 籠に積み上げているのを 空いてる席に座って眺めている現在。


ギルドカードの手続きをしてくれたお姉さんと ギルマスたちが部屋に到着したのはほぼ同時だった。

机の上に並べられた 手つかずの袋の量と、既に数えられている途中の鉱石とスタッフの動きを見て、すかさず部屋に魔法をかけたのは 多分最後に入ってきたフクロウ獣人の人だろう。風の魔法だけど 防音魔術かな?


「子供がいるとは聞いていたが、まさかそんな幼子を連れて あのダンジョンを踏破したのか……?」


『その幼子が一番ヤベーけどな』


ドワーフのおじさんが呟いた言葉に ツッコミ担当のクルトさんが小さく呟く。


「まずはダンジョンの踏破 おめでとう、ノハシムギルドのギルドマスターをしているガンテだ」


「同じく、サブギルドマスターのハズクです、踏破おめでとうございます。

現在この室内には 防音魔術を張っておりますので ご安心ください」


やっぱり防音魔術だったね。

風魔法のこれは はじめて アスランサブマスに会った時に 見たやつと同じだね。

懐かしいなと思っていたら なんだかサブマスさんに見られているような気がして 思わずお父さんの胸に顔を埋めてしまう。


「儂は この子の父親で 銀ランク上級のアルクじゃ。娘はヴィオ、この子自身も 銅ランク冒険者じゃ」


「ほぅ、そうでしたか」


「へぇ、流石サマニア村ってことか?」


「俺が サマニアンズのリーダー トンガです、弟の ルンガ、幼馴染のクルトです。今回は父と妹と合同パーティーでダンジョン踏破をしています」


何となく トンガお兄ちゃんがピリピリしているけど、サブマスの視線がそうさせているんだと思うんだよね。何だろうね、やましいことはしてないけど ちょっと何かを疑われてる?


「ハズク、やめとけ。

申し訳ない。ここんとこ踏破者が少なくて 久しぶりのミスリルが出たって 町のもんが大騒ぎしてるんでな、そんな中で この量だろ?

どんな採掘をしてきたんだって 疑ってんだ。

いや、銀ランクがそれだけ揃ってたら 別におかしいことはねえけどな、魔鋼に魔銀が袋いっぱいってまずないし、たった11日で踏破って、下の階の採掘をどんなスピードでやったんだってなる訳だ」


ギルマスの一言で サブマスからの嫌な視線は無くなった。

だけど、まあ 確かにそうなるかもしれないね。

ちょっと 魔法が楽しくて無双しまくってただけです、なんて普通は意味不明だもんね。


「あぁ、既に潜っていた冒険者でもいましたか? それらが戻ってこなくて 彼らが採掘した魔石を俺たちが 奪って さも 自分たちが採掘したかのように持って帰ってきたと?」


ええ?そんなこと思われてるの?

って、隅々まで採掘しまくってたけど ギルドタグなんてなかったよね?


「いや、そういう訳じゃ……」


ドワーフ族のギルマスが 言い訳をしようとしているけど トンガお兄ちゃんは止まらない。


「ああ、それか 踏破はしたけど 道具と採集物を置いてきてしまった。とか言われたんでしょうか?」


「えぇっ!?そんなのなかったし、ギルドタグも落ちてなかったし、途中ですれ違ったのなんて狼の三人組と ドワーフ二人に新人冒険者三人組だけだったよ」


思わず声をあげてしまったけど、お父さんが そっと頭を撫でながら 落ち着かせてくれる。黙ってますね、ごめんなさい。


「シルバーウルフからは あなたたちの報告がありましたが、もう一組?

その一組とはどこで会いましたか?」


サブマスからの質問は 何か本当に疑ってそうで ちょっとイラっとする。


「6階にいる時にすれ違いましたね。ドワーフの二人は背負籠を持ってましたし、同行していた 男一人、女二人の三人組は 一人を除いて 新人のようでしたね。

うちの妹が可愛いからと 抱きしめようとしてきたくらいですから」


えっと トンガお兄ちゃん 今の報告に 可愛いという副詞は不要だったのでは?

怒っている風にしながらも ナチュラルに妹を褒める兄、ほら そんなだから ルンガお兄ちゃんが 笑いを堪えようと震えてますよ。

何やらコソコソと受付さんから報告を受けたサブマスは 苦いものを噛んだような顔をして 溜息を吐く。


「はぁ~、疑って申し訳ありません。

確かにその三人組がダンジョンに入ったのは確認済です。彼らは護衛依頼を受けていなかった筈ですが きっと中でやり取りしたという事でしょう。

これは 双方に 厳重注意となります。

ドワーフ二名は背負籠を持っていたという事ですね? 疑って申し訳ありませんでした。

今回の整理券は その二名の工房は 取り下げることにします」


どうやら ドワーフ二名は 採掘作業中に見つけた冒険者に 中で護衛依頼をし、できるだけ深層階まで行って 採掘をしようとしていたらしい。

で、多分思ってたよりも レベルの低い冒険者で、採掘も思ったレベルのものは採れなかったんだろう。

それで 私たちに濡れ衣をかけようとしたのは意味不明だけど、そこはこのギルドでちゃんと裁いてくれるんだろう



「ところで あの魔鋼と魔銀はどうやって採掘してきたか聞いていいのか?」


「ええ、おかしな疑いをかけられなければ この町の発展のためにもお伝えしようとは思ってたんですけどね……」


ハァっと溜息を吐いた トンガお兄ちゃん。

もしかして教えない事にするのかな? まあ 教えなくても今までと変わらないだけだし、私はどっちでもいいかな。


「本当に申し訳なかった。君たちを疑ったのは 私の一存だ。

この町は鉱山あって成り立っている町なんだ。マジックバックが無ければ これほどの量を持ち帰ることは出来ないだろうが、それでも魔鋼や魔銀が こんなに採掘できるなら、上位冒険者を誘致してでも 鉱夫を入れることは出来る。

私が責任をもって 君たちにあらぬ疑いをかけた奴らは 裁くし、それだけで気に入らなければ 私がこの地位を去っても良い」


だから頼むと頭を下げるサブマスさんの姿に お兄ちゃんもびっくりしてる。

あれ?別に怒ってるわけじゃなかった?

町の住人だからうやむやにしないかどうかを確認したかっただけなのかな?

なんだ、私も騙されちゃったよ、お兄ちゃんったら 中々の演技派だね。


「サブマス 頭をあげてください。例の二人組に対しての叱責はしっかりして頂きたいですし、今後同じような目に合う冒険者が居ないようにはしていただきたいですが、そんなに責任を感じられては 今後俺たちが この町に訪れ難くなりますから。

それに そんな事になったら サッサさんに叱られてしまいます」


「あぁ、そういえば サッサもサマニア村出身でしたね」


やっと和やかな雰囲気になり、後ろで音を立てないように作業をしていたスタッフさんも ほっと息を吐いたのが分かる。


グゥゥゥゥゥゥゥ 

キュルキュルルルル~~~


私もホッとしたからだろうか、こんな時に 緊張感のなさ過ぎるお腹の音が盛大に鳴るなんて!

もうもう!私のお腹の虫 もうちょっと空気読め!

恥ずかしすぎてお父さんのお腹にしがみ付いて 顔を伏せれば あちこちから 咳払いと 鼻をすするというか 笑いを堪えようとして堪えられていない音が聞こえてくる。


「すみません、方法は俺が伝えれますから 妹と父のカードは先に返却してもらえますか? 下のアレコレに巻き込ませたくないので、二人は 先に町を出ることにしているんで」


あぁ、トンガお兄ちゃん救世主すぎるよ。

カードを預けていたお姉さんが お父さんにカードを返却してくれたので、私も少し顔をあげて「ありがとう」だけ伝えます。

でも 皆の生温かい目が辛いから もう無理!


「確かに ちょっと下の連中が面倒そうだな。

おい、裏から 二人を出してやってくれ。

ちなみに 次はどこに行く予定で?」


「グーダンじゃな」


「ほう、豊作ダンジョンですか。この町での買い物は……。

ああ 必要ならお兄さん達がされますかね。

では 今回のお詫びも兼ねて、グーダンまでギルドの馬車を使ってください、ハズク良いよな?」


「勿論です。馬車が戻れば 皆さんの出発日に合わせてもう一度馬車を出します。グーダンもご一緒に潜られるのでしょう?」


え?マジで?

全く思ってもなかったギルドの馬車での移動とか、予定が随分前倒しになりそうだね。

途中で魔獣狩りは出来なさそうだけど、そもそもグーダンまでは 通行料の多い大通り、魔獣は少ないから 狩りは楽しめなかっただろうことを思えば 超ラッキーである。


「それは助かる。行動食はまだ残っておるし、ヴィオ 今日の昼はそれでええか?」


「うん、だいじょぶ」


お腹が鳴ったのは 不可抗力だもん。別に腹ペコ食いしん坊って訳じゃないからね。


ということで、急遽馬車を用意してくれることになったので、ギルマスと サブマス、スタッフの皆さんにお礼を言って お部屋を出ます。





「では こちらからお願いします」


うさ耳のお兄さんが 1階に下りる中央階段ではなく、会議室と 図書室も通り過ぎた 廊下の奥に進んでいく。

一番奥の扉を開ければ 階段があり、それを下りたら ギルドの裏側と思われる広場に出た。


「ただいま馬車を用意してきますので もう少しお待ちください」


ダッシュで厩舎に向かったうさ耳兄さんを見送り、お父さんと顔を見合わせる。


「まさか 馬車で移動することになると思わなかったね」


「そうじゃな、そもそも あんな疑いがなければ 直ぐ索敵を教えて 出る予定じゃったしな。結果としては ドワーフの二人に感謝じゃな」


確かに。

あの二人は 今回大量に出たミスリルも 魔鋼も、それどころか 私たちが持って帰ってきた全ての鉱石を手に入れるチャンスをふいにした訳で、それは こんな小さな町では 直ぐに噂になってしまうだろう。

子連れの冒険者って事に イラッとしてたっぽいし、もしかしたらイマイチな冒険者を捕まえたことに 苛ついてたのかもしれないね。

だけど、それだって、ちゃんと正規の依頼をかけていれば 自分たちの能力に見合った人たちが受けただろうにとしか言えないよね。


そういう訳で、うさ耳お兄さんが 御者をしてくれるギルドの馬車で お隣のグーダンの街まで 4時間ほどで到着いたしました。

ギルドの馬車って事で 門の通過も非常に手続きが早く、お父さんのギルドタグの確認と 二人分の入街料2ナイルを支払うだけで済んだ。


ついでに うさ耳お兄さんが グーダンのギルドにまでついて来てくれて、私たちの後に サマニアンズという3人組が来る予定だということ、その二組で ダンジョンに入るけど、全員がノハシムを踏破できるだけの能力があるから心配は無用とまで伝えてくれた。


なんだか逆に気を使わせてしまったみたいで申し訳ない気分になったけど、その後、トンガお兄ちゃんによって伝えられた 土魔法の索敵を伝えたお陰で、ノハシムの町からは 私たち5人が英雄のような扱いになってしまっていたというのは 数年後、サッサさんから笑い話として教えられて初めて知るおはなし。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ