第179話 ノハシム鉱山ダンジョン その10
起きたらお父さんが隣で寝てて、その温もりに二度寝しそうになったヴィオです、おはようございます。
どうやら 夜中に 魔力が回復したトンガお兄ちゃんが 見張り番を交代したそうです。
朝食を食べながら 今日の予定を再度確認です。
「昨日半分の魔獣は倒していると考えて 今日はまず前半部分の採掘を行う。
採掘中に寄ってくる敵も居るだろうから、1人は必ず警戒をしておくこと。父さんは採掘の方に入ってもらうから 俺たちとヴィオの4人で警戒担当を回そう。
この階からは魔鉱石が出る筈だから 出来るだけしっかり採掘していこう。質問は?」
うふふ、トンガお兄ちゃんが 警戒担当で私を人数に入れてくれるのが嬉しい。ちゃんと冒険者として認めてもらえたみたいな気がして テンションが上がるね。
「扉近辺には 敵の姿なし、あ~、けど 昨日倒した前半部分にも大分散らばってんな。戻りがてら確実に戦う必要はありそうだ」
「わかった、まだあの極小ボールは 実戦で使えるほどの精度にはなっていないから 止めておこう。
ルンガとクルトは エアカッターに関してはいけるんだったか?」
「俺は大丈夫」
「まあ俺も 大分性能上がってきてっから 今日何回か挑戦だな」
「わかった、では 魔法は風魔法を中心に使おう、僕はトカゲにランス系を使ってみることにする。
今日はもう一日 この階で野営予定だから、昼食は この部屋に戻ってくる。
回復薬もパニックルームで手に入れた分があるし、何なら昼寝もできるから 魔力はそこまで気にしなくていいと思う。では 行こうか」
今日一日この階で過ごすなら 敵の数は半分だし、ゆっくり過ごせそうだね。
他の冒険者が来たら 倒せる魔獣が居ない!ってなるかもしれないけど、安全に深層階に行けるならラッキーだよね?
ということで テントと 焚火台(火は消しているよ)はそのままに、お兄ちゃんと お父さんの 大きなリュックもテントに置いておく。索敵は展開したままなので 他の冒険者がこの階に来ればすぐに分かるんだけど 念のため 周辺を土壁で覆っておいた。
ルンガお兄ちゃんが言ったように 戻る道には ロックアントや シカーマンティスの姿が見えるけど、トンガお兄ちゃんの魔法が炸裂する。
「【サンドカッター】」
ザシュッ‼
「うんうん、良いね! ヴィオ これ凄く良いね」
お兄ちゃんが嬉しそうで 私も嬉しいですよ。
私の鞭によるサンドウィップが羨ましいと言ってたトンガお兄ちゃん、クルトさんと ルンガお兄ちゃんはエアカッターを取得して 敵の殲滅が容易になった。
ゴーレムを大量の水で洗い流すという方法もやってみたけど、消費魔力が多いし 炎で包むのと同じくらい ドロッと溶けるのを待つ必要があってボツになった。
【ウォーターボール】ならぬ【ウォーターショット】は 小さくする水球弾だから まだまだ練習が必要。
という事で、トンガお兄ちゃんは サンドウィップの魔法版で 【サンドカッター】を覚えてもらいました。
実際に目で見て確認できる砂粒での再現は 然程難しくなかったと 天才の発言を頂きましたが、面白いぐらいに 良く斬れています。
効果が確認できたところで 3人が競い合うように 出てきた敵に カッター系魔法をぶちかましておりますお陰で、わたくし やることがありません。
うん、皆が採掘している間に いっぱい敵が来てくれたらいいなぁ。
お父さんに 出来るだけ一発で採掘しないように 当たりのちょっと隣を叩いて大きな音を立ててもらえるようにお願いしようかな。
索敵のお陰で 当たりの場所を しっかり見つけてから ツルハシで掘るものだから、従来よりも確実に音は少ないのだ。
ドワーフ族は 種族特性として 火魔法と 土魔法は 得意属性だというから、この町の人たちは是非習得すべきだと思う。
そうすれば 敵に囲まれる危険性も減るし、冒険者のリスクも少なくて済みそうだよね。
採掘ポイントに到着して 壁にツルハシを叩き込みながらそんな事を考える。
「まあそうじゃろうな、深層階には 鉱夫が付いてくることは危険すぎて 今までは無かったが、索敵を使いこなせるようになれば 冒険者は 今までと同じくらいのリスクで 敵に対峙すればええし、鉱夫がおれば それだけ 多量の鉱石を持ち帰ることもできる。
ギルドと町長がどう考えるかじゃが、儂らは その方法を教えるだけじゃからな。あとはサッサ辺りが 上手い事やるじゃろう」
そっか、サッサさんは 元冒険者の商人だもんね、両方を知ってて 今だって現役で潜ってるんだもん。サッサさんが実践して教えてあげてくれたら とっても良さそうだね。
コンコン カラン
カンカン コロン
「お父さん、これって4階とかにあった 鉄鉱石と違うの?」
「鉱石をよく見てみればどうじゃ? ほれ こっちが鉄鉱石じゃ」
ん~。
お父さんが見せてくれたのは 4階で採集した鉄鉱石、見比べても 同じような鈍色の石で 大きさも重さもあまり変わらない。
よく見ろって事は それだけじゃない?
お兄ちゃんは この階からは 魔鉱石が出るって言ってたね。
魔鉱石って事は 魔力がよくとおる鉱石なのか、魔力を持った鉱石って事なのかな?
今度は石の魔力を見る気持ちで ジッと手の中の二つを見比べる。
サブマスほどではないけど 魔力視も 訓練しているから 随分スムーズに見えるようになってきた。
「あぁ、こっちの方は魔力が外側に ほんの少しまとわりついてるくらいだけど、こっちは石の中にも魔力が浸透してる。だから魔鉄って事なんだね」
正解だったらしく ワシワシ撫でられる。エヘヘ。
「魔鉱石は 武器や 防具、魔道具の製作など 色んなものに使えるからな、魔鋼は鎧によく使われるし 14階にある魔銀はミスリルとも呼ばれるが 属性武器を作るには必須じゃし、聖属性とも最も相性が良いと言われておってな、神国や 皇国には高値で取引されておるはずじゃ」
ああ、神殿騎士とか 聖騎士とか言われる人が使う武器ですかね。
神国は知らんけど、皇国なんか ふっかけまくって超高値で売ってやればいいのに。自国にできるダンジョンに鉱山ダンジョンが出来れば 輸入の必要もなさそうなのに、その可能性も自ら放棄するとは 阿呆なのか?
しかし ミスリルかぁ。ファンタジーにはあるあるの金属だよね。
オリハルコンとか、アマダンタイン?アダマタイン?どっちだっけ そんな感じの名前の金属もあったよね。あとは何だっけ、マントヒヒみたいな名前の ヒヒロイカネ? そんなのもそのうち見つかるのだろうか。
ってか、ミスリルがあるのに 中級ダンジョンで こんなに簡単に入れちゃうの?
「ははっ、魔鉱石の採れるこの階以降は 物凄く 採掘が難しい……はずじゃったんじゃ。
敵も強い中 手あたり次第 掘ったところで 5個に満たんミスリルでは 中々入る奴らは増えんからな」
そっか、索敵で ポイントを絞れるから 採掘できるだろうけど、今までは 勘に頼るしかなかったんだね。それは カンコンしまくるし、敵はウヨウヨ来るしで大変すぎるね。
私たちは お印をつけてもらったところをカンコンするだけなので、最低限の音だけで採掘作業をしている為 殆ど寄ってくる敵はいなかった。
手持ちの採集袋 3袋を満たしたところで 後半部分に残っている魔獣掃討に乗り出した。
お兄ちゃんたちも 魔力が残っているからね。
まだ 圧縮は出来ていないけど 青く高温になったファイアボールを アントと マンティス相手に打ちまくってたよ。
お兄ちゃんたちが無双しているので、私とお父さんは 一足先に お昼ご飯の準備をしに 朝のお部屋に戻ります。
「あいつら 魔力がほぼなくなるまで やりそうじゃな」
「うん、帰ってきたら凄くいっぱい食べそうだね。スープのお鍋二つで足りるかなぁ」
私がスープの準備、お父さんは肉を串に刺して スパイスを塗して 焚火台に火を付ける。
こんな風にお部屋という安全な場所でない野営では スープを鍋で作ることは出来ないけど、フリーズドライの乾燥スープは 非常食であり 行動食だから 出来るだけ使いたくないんだよね。
だけど 乾燥野菜は たっぷり作ってきているので それらを お鍋に次々放り込んで 野菜たっぷりのスープを作っていくよ。
お鍋がグツグツし始め、肉串も 新しい串を火台にかけた頃、無双していた三人組が帰ってきた。
「ヴィオ ごめんね~、気付いたら二人が居なくてびっくりしたけど、僕たちが やり過ぎてたから 倒す相手が居なくなっちゃったんだね」
しょんぼりした トンガお兄ちゃんだけど、私たちが居なくなったのに いつ気付いたんだろうね。
まあ お互いに 索敵を展開しているから 無事は確認できていたと思うけどね。
気にしていないという事を告げ、3人と一緒に 昼食を頂く。
お父さんの予想通り、殆どの魔力を使い切ってきたお兄ちゃんたちは 昼食を食べた後 テントに潜り込んで お昼寝タイムとなりました。
新しい魔法を覚えたら 使ってみたくなる。だってオトコノコだもん!
ということで お兄ちゃんたちの魔法無双タイムです




