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第175話 ノハシム鉱山ダンジョン その6


7階は 鉄鉱石エリアなので 採掘作業はせずに 8階に下りた。

ここからは 銅鉱石となる為、また コンコン カンカンと 壁を掘る音があちこちから聞こえてくる。

とはいえ 低層階ほどの人数はいないようで 3組だけだけど。



「さて、8階と9階は銅鉱石が採掘できるけど、採掘作業が 非常に簡単になることが分かった今 時間制限は無くなったようなものだけど どっちで採掘する?」


同じ鉱石がある階なら より低層階で採掘作業をしている人が多いのは これまでで分かっている事だ。

となれば 多分9階は人がいない筈。

であれば パニックルームもないこの階で楽しむことはないだろうから 9階にお部屋もしくは パニックルームがあることを期待して下りたい。

お兄ちゃんたちはどちらでもいいらしく、お父さんは私の希望に合わせると言ってくれる。


「じゃあ 9階で野営したいです」


「了解、じゃあ ここは最短で進もう」


お兄ちゃんたちの索敵も 随分時短で出来るようになってきている。この人たちのスペックの高さは驚きである。

これがサマニア品質というやつなのだろうか。他の冒険者のスペックも見ていたいけど、一緒に行動することで 見せられないことが多すぎる私のストレスが増えそうだから 無理だろう。

あのスチーラーズが 他の冒険者の基本とも思えないけど、究極しか見ていない気がする。



9階は 想像通り 他の冒険者はいなかった。

ただし、昨日のうちに二組の冒険者が通っただけあって 魔獣の数は フロアの広さに比べると非常に少ない。


「パニックルームはないね……」


「うん、普通は無い方がいい部屋だからな?」


クルトさんにツッコまれるけど、安全に攻略できるなら お宝ザクザクのお部屋じゃない?

普通のお部屋はあるので、今夜はここが野営地になるね。


フロアの確認が出来れば お父さんと トンガお兄ちゃんが 土魔法の索敵で 採掘場所に印をつけて歩く。その後ろを 私たち三人が ツルハシを持って 採掘しながら歩く。


カンカン ゴロン


コンコン ガラン


流石にインゴットの形で 出てくるわけではないんだけど、岩といより 銅というのが分かるレベルには 鉱石が加工されている状態で出てくる不思議。

直径10センチくらいの コロンとした鉱石を 拾っては お父さんが持つ採集袋に入れていく。


カチカチカチ 


シャカシャカシャカ


採掘作業の音に釣られて 駆けつけてくる シカーマンティスと ロックアントは クルトさんと ルンガお兄ちゃんが 【エアカッター】で討伐する。

二人の魔力が限界になるまでは練習したいからと 私はお預けである。


ロックラットはこの階には何故か居らず、シカーバットも お兄ちゃんたちの【エアショット】の練習台として 撃ち落とされるので、私は黙々と採掘作業を行うだけである。

そんなこんなで 今居るべき魔獣は 掃討してしまい、採集袋も3袋たっぷり詰め込んだところで 本日の作業は終了となった。


「いや~、エアショットが決まると 気持ちいいな」


「おお! エアカッターもな、ロックアントを あんだけ簡単に切り落とせるのも スカッとするな」


ルンガお兄ちゃんと クルトさんが 上機嫌である。

私たちはそれを眺めながら テントを取り出し、トンガお兄ちゃんが 火おこしの準備を始めてくれる。

野営準備をしていたら 索敵範囲に 新たな人の気配が増え、人々の声が近づいてくるのが分かった。


「全然エンカウントしねえし、このまま上に戻っていいんじゃないか?」


「いや、8階は安全な野営地がない。同じように魔獣が少ないか分からないのであれば ここで休憩して 明日上がった方が安全だ」


「俺も疲れたから 今日は休憩したい……って、先客か」


ガチャリと扉が開かれ 入ってきたのは 3人組の男性冒険者たちだった。

こちらは 3人が9階に来た時点で気付いていたので スープとお肉を焼くのは諦め、火には水の入った鍋だけをかけている。

私は早々に テントの中に避難だ。


「おっと 先客だったか 悪いな、俺たちも こっちで野営させてもらうがいいか?」


「ああ もちろんだ」


「悪いな、ああ、俺たちは 銀ランクパーティー〔シルバーウルフ〕だ。俺がリーダーのシモン、こっちが エドガー、弟のランスだ」


「そうか、俺たちは 〔サマニアンズ〕、リーダーの トンガだ。こっちは クルト、弟のルンガ、親父のアルクだ」


「「サマニアンズ……」」


「そうか、噂に聞いたことがあったが サマニアンズと こんな場所で会えて光栄だ。俺たちは今年の風の季節に ゴールデントラウトに挑戦するつもりなんだ。

もしかしたら その時に再会するかもしれないな、よろしく」


テントの中なので 皆の姿は見えないけど、どうやら 雰囲気からして あちらの三人組は お兄ちゃんたちのパーティーについて知っているらしく、ちょっとテンションが上がったのが分かる。

それにしても トンガお兄ちゃんは 他の冒険者と一緒の時は 声が一段低くなるし “俺” になる。

中々の違和感である。


挨拶を交わした後は お互いに関わらないように 端と端にテントを張って 野営をすることになった。私とお父さんのテントに被るように お兄ちゃんたちがテントを張ったのは、私がトイレに行くときに 姿が見えないようにしてくれるためだろう。ありがたいねぇ。


『ヴィオ 大丈夫か?』


『うん、問題ないよ。今夜はスープが飲めないのは残念だけど、仕方ないね。悪い人たちじゃなさそうで安心した』


『まあそうじゃな、奴らは リズモーニの西部出身らしいからな、リズモーニに住む冒険者で 北西部の村の事を知らん奴らは居らんからな、十分牽制にはなっとるじゃろ』


お父さんとは【サイレント】を使って会話をしているので 寂しくもない。

パーティー名の通り 彼らは狼獣人の三人組だというので 鼻が利くはずだから 肉を焼くのも スープを温めるのも諦めた。


あちらの三人組は 干し肉を齧っていたらしいので、そういえば冒険者のスタンダードは干し肉だった事を思い出した。

残念だと言いながら 具沢山のサンドイッチを食べていた私は 随分贅沢に慣れてしまっていたらしい。



翌朝、私たちが動き出す前に 三人組は旅立った。

昨日 他の冒険者とすれ違ったことを お兄ちゃんが伝えたので、今ならリポップ数が少ないだろうという事で 出来るだけ今日中に 低層階まで戻りたいという事だった。

9階まで来たなら ボス部屋まで行って 転移で戻った方が早そうなのにね。



「いや、10階からのゴーレムと フローロックリザードを相手にするのは骨が折れる。下手な剣だと駄目になるし、あいつらは長剣と槍と魔法だっただろ?

収支でマイナスになるなら ボス部屋まで行かないだろうな。

ボス部屋はロックゴーレムまでいるだろ? 重戦士が仲間にいれば 問題ないが、普通の剣士たちだけじゃ無理だな」


ん? お兄ちゃんたちの武器は 剣と槍だよね?


「ああ、俺たちも このダンジョンは11階で引き返した事しかないぞ。剣が駄目になりそうだったんで ツルハシで 対応してたんだけど、あまりにも面倒でやめたんだ。

だから今回はどこまで行けるか それも楽しみだ」


そうなんだ、お兄ちゃんたちが行ったことのあるというか 踏破したことのあるダンジョンだと思ってたからちょっとびっくり。

だけど、そしたら一緒に楽しめそうだね。


「そこで嬉しそうにするのが アルクさんの子って感じだよな……」


お父さんも 楽しそうにしているから そうなのかもね。

下の魔獣にどこまで魔法が使えるか、どんな魔法が効果的か、色々試せそうで楽しみだね。


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