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第173話 ノハシム鉱山ダンジョン その4


4階はそんな訳で あちこちの通路で 採掘をしている人達が多く、魔獣もそっちに集まっているので 私たちが歩く邪魔をしに来るような魔獣にエンカウントすることなく、まっすぐ5階に下りることが出来た。

5階もまた 採掘作業の音が響いており、ダンジョンに来てこんなに魔獣に会わない事があるのかと思うほど エンカウントすることなく 6階に到着してしまった。


「こんなに魔獣に会わないことがあるんだね」


「鉱山系のダンジョンの 低層階では珍しくもないかな。6階からはアントが出てくるから、それなりの冒険者が同伴してないと厳しいし、採掘している人たちも冒険者が殆どになると思う」


ここまでの階にいる採掘者は 工房の人がメインで掘って、ちょっと腕っぷしに自信がある人が魔獣の討伐をしているって事が多いみたい。

ここから下の階になれば 鉱石のランクが上がるかわりに 魔獣のランクも上がる。

なので それなりの冒険者を 護衛に付けるか、冒険者自身が採掘をしているだろうとの事。


「だから サッサさんが いっぱい採掘して来てくれって言ってたんだね」


「そういうこと、マジックバック持ちの冒険者が これだけ揃ってたら かなりの量を持ち帰ることが出来るでしょう?」


そりゃ ツルハシも かなり頑丈で 良いものを 割引して販売してくれるはずだよね。


「だったら ここからは 頑張って採掘しないとだね!」


気合を入れ直して 行こうと思ったら 一旦休憩だとお父さんに止められた。

真直ぐ来たとはいえ 広いフロアだから 2階分の移動で 既に3時間ほどは経過している。昼食には早いけど 休憩は取れる時にとっておかないとね。


行動食と 簡単スープでお腹と心を満たしたら 改めて6階層の索敵を展開する。

うん、同じ鉄鉱石が採れるなら 魔獣の危険性が少ない階で採集するよね。

採掘する人がいない分、魔獣はフロアに満遍なく散らばっており、シカーマンティスと ロックアントが結構沢山いるのが分かる。


「ん?これって……。マジか」


索敵をしていたクルトさんが 驚いた様子で 固まってしまったんだけど どうしたんだろうか。


「クルトどうした?」


「いや、聞いてはいたけど マジで パニックルームが分かる」


「えっ!? まだ魔力は全然減ってないし 僕もやってみる」


「俺も」


ああ、そういう事ね。ここまでの階は パニックルームは疎か 個室もなかったから 皆多分 通路のつきあたりでの野営を余儀なくされていたんだろうと思うんだけど、この階には 個室がひとつと パニックルームがあったので、多分今夜の野営地はどっちかになると思う。


「ほんとだ……」


「マジか……」


索敵が終わったらしい二人も クルトさんと同様に固まっています。お父さんも うんうんと頷いているので、冒険者歴が長い人ほど 感激するんだね。


「これは スパイダー系だね。流石に種類までは分からないけど」


「じゃあ 開ける時の壁は俺が作るな」


形は分かるけど 色柄まで見える訳ではないから 種類が多すぎる魔獣は分からないんだよね。でも 種族さえ分かっていれば 大体の攻撃方法は分かるし 対処ができるからね。

いつもよりテンションが上がっている ルンガお兄ちゃんが パニックルームを空ける時の壁を作ってくれるらしいけど、私の鞭の先端は魔力で作っているから 攻撃が出来なくなっちゃうんだよね。


「ルンガお兄ちゃん、私の武器だと お兄ちゃんたちの壁を通れなくなっちゃうから、壁は私が作っちゃダメ?」


「おお、もちろんだ。そうだな、このチームで動いている時は パニックルームの壁はヴィオにお願いするな」


普通の武器攻撃は通るけど、魔法は本人のもの以外は弾かれちゃうというのは 練習でも見て知っているから、お兄ちゃんたちも納得してくれた。

やる気満々だったルンガお兄ちゃんには申し訳ないけど、私だけやることが無いのも寂しすぎる。

許可が出たので パニックルームを目指すべく フロアの魔獣を討伐しながら進むことにした。


「【エアカッター】」


ザシュッ!


ロックアントは 見た目だけのロックラットとは違い 外殻が岩のように硬い。その為 攻撃は頭と胴体を繋ぐ節の部分か、口の中を狙う必要がある。

このダンジョンに出るロックアントは 1メートル程の大きさで、結構動きが素早い。

硬い顎を持つロックアントに噛みつかれると 皮の鎧程度では 嚙み切られるというから恐ろしい。


「一撃かよ」


「でもあのアントに近付かなくても攻撃が出来るのは 回復薬も使わなくて済むから良いな」


首チョンパと同じように 【ウインドカッター】でも良いんだけど、動きが早い敵の場合は 【エアカッター】のほうが 確実に仕留められるので 最近は 首チョンパでもこっちを使っている。

ルンガお兄ちゃんは木札作りの時に 練習していたから 何度か調整したら ロックアントを一撃で仕留められるようになっていた。


ロックアントのドロップアイテムは 薄茶色の魔石、外殻、牙のどれか。魔石とセットで外殻か牙が落ちることもあるし、外殻か 牙だけのこともある。

牙は不用品なので放置で、外殻と魔石は回収する。


そんな風に 討伐を繰り返していたら 索敵範囲に 先ほどまでなかった気配が追加された。


「ん? 魔獣じゃないけど……。ああ、人が増えた。お父さん 人が増えたよ」


「ん? あぁ、下の階から冒険者が戻ってきたちゅうことじゃな。ヴィオはしばらく【ウインドカッター】くらいにしておこうか。詠唱してる風にな」


あぁそうだったね。

ここまで 他の冒険者に会うことなく来たから その設定を忘れてたよ。

今までは 既に活動していた冒険者(採掘者)がいて、その近くを通り過ぎるだけだったけど、よく考えたら 既に中にいる人が居て、その人たちが帰る可能性も当り前にあるんだったね。


お兄ちゃんたちも全員が索敵をしていたおかげで その存在には既に気付いており、魔法から 武器を使っての討伐に変更している。


通路の半ばで 冒険者たちと顔を合わせることになった。


「ん?子供?」


「は? うわっ、まじだ、何で子供がダンジョンに来てんだ?」


「えっ、どこどこ? あ~、ほんとだ 可愛い~」


「家族で来るには 安全な場所とは言えないけど、これだけ強者っぽい家族がいるなら 留守番よりいいんじゃないか?」


「ん、他のパーティーに口出し厳禁」


5人組のパーティーは 私たちを見つけた途端 口々に 喋り出す。女性二人と男性三人、二人はドワーフらしい髭モジャさんで、後は人族かな?

女性一人が 私を見つけて 両手を広げて駆け寄ろうとしてくるけど、お父さんが素早く抱き上げてくれたことで 諦めて手を下ろす。

いやいや、全く知らない人に 触られるとか怖いんですけど?


ドワーフの二人組は 背負い籠に大量の鉱石を詰め込んでいて、他の三人組はリュックなので 鉱夫と冒険者の組み合わせなのかもしれない。


「君たちはこれから戻るところ?」


「ああ、そのつもりだが 今日は安全エリアで休憩して、明日一気に戻るつもりだ。あんたたちは?」


「俺たちはこれから下るところだよ。そちらの二人は 非戦闘員だよね? 上の階は まだ採掘している人たちが多いから 魔獣は引きつけてくれていると思うよ」


「マジか、おいどうする?」


「それなら 4階くらいまで戻って 野営で良いんじゃない? 明日アントとやり合って戻るより この人たちがある程度討伐してくれている今 この階は通り過ぎた方が 楽だと思う」


「おお、それなら この通路のアントは かなり討伐してっから あんまし危険はないと思うぞ」


「そうか、助かる。じゃあ 二人もそれでいいか?」


「儂らはそれでええ、早く帰れるに越したことはないからな」


トンガお兄ちゃんの先導で どんどん話が進んでいく。この人たちは この階のお部屋で休んでから 明日帰るつもりだったようだけど、どうやら 今日のうちにアントが居るこの階を通過することに変更したみたいだ。

お兄ちゃんたちが そうするように誘導したように見えたけど 何か理由があったのだろうか。

やはりドワーフは鉱夫というか 冒険者に護衛依頼した人だったようで、5人は上階に続く階段の方へ歩いて行った。


しばらく パニックルームに向かうのをやめ、通路にいる魔獣を倒していれば 冒険者たちの気配が 6階の索敵範囲から消え、5階の階段を上ったことが分かる。


「ねえお兄ちゃんたちは あの人たちを この階から離したかったの?なんで?」


「あはは、バレた?」


「パニックルームと分かってるところを開けるとは言えねえだろ? あいつらが個室に入ったとしても パニックルームを開けたことで 気配を読まれたら 何があった?って思われる可能性もある。

あいつらの感じからして そこまで 感度は高くなさそうだったけど、能力はパッと見では分からねえからな」


ああ、そういう理由だったんだね。

確かに 出てきて討伐方法を見られるのも面倒だし、できれば階を離れてもらう方が安全ではあるね。

納得したところで パニックルームに向かうことにした。

お部屋の扉は 他と同じ、それで中に魔獣がウジャウジャいるんだから パニックになるお部屋だよね。


「じゃあ まずは壁を作るね【エアウォール】」


扉全部を覆うように 半円の透明な壁を作る。勿論 風の刃は 扉の方を向いている。

それから鞭に魔力を流し 蔦を伸ばして扉のノブに引っ掛ける。


「開けるよ?」


お兄ちゃんたちが 其々武器を構えたことを確認し 扉を開ける。

1/3程開いたところで 中にいた魔獣が扉を押し退けるようにワラワラと飛び出してくる。

蜘蛛型の魔獣であることは分かっていたけど、その姿から ロックスパイダーであることが分かった。

石礫を出している個体もいるけど、勿論 壁を通り抜けることは出来ていない。


ザシュ! グサッ! ザンッ!


風の壁越しに 剣と槍を振るうお兄ちゃんたち。

私とお父さんは 少し離れたところで 通路から来る 他の魔獣を警戒する役目である。


「一方的だね」


「ほんまになぁ。これは 安全じゃが 魔獣からしたら たまらんじゃろうな」


お兄ちゃんたちは非常に楽し気に 討伐をしているし、それを見て そんな感想を呟いていも仕方がないと思う。

途中から ドロップアイテムを確保するために 鞭を網に変えて 壁の中に侵入させて 糸だけを取り出すという作業を隣でやっています。

ヒャッハーな感じで 討伐しているお兄ちゃんたちに 若干引き気味ではあるけど、まあ 普段討伐が面倒な相手で、しかもパニックルームという 出来れば会いたくない場所を こんな風に攻略できれば そうなっても仕方ないかもです。


初めてダンジョン内で別パーティーと顔を合わせました

テンプレの ”絡まれる” は起こりませんでしたw

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