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第168話 ノハシムの町


町に到着した翌日は 情報収集の日となった。

お兄ちゃんたちは 何度か潜った事があるらしいので、必要な買い物や 顔見知りとの挨拶に回ってくるという事だったので、ギルドの図書館に行くのは 私とお父さんの二人。


ギルドに入れば 混み合う時間でもない筈なのに 数組の冒険者らしい人たちがいた。

ガチムチな人たちが 受付に並んでいるので、こんな時間だけど 受付カウンターは スタッフさんが並んで対応している。


他の町では この時間帯 暇そうなので 声をかけてから2階に上がるんだけど、忙しそうなところにわざわざ声をかける必要もないので そのまま2階に上がる。

図書室は 必ず分かりやすく記されているので 扉をノックして入室する。


「おはようございま~す、どなたかいらっしゃいますか」


「ん-? 珍しいな 客か?」


ここも他の図書室と同じように 正面の司書机に 人は居らず、とりあえず奥に向かって声をかけてみる。

ガサゴソという音が聞こえた後に 寝ぐせをつけた 眼鏡のおじさんが出てきてくれた。


「おはようございます、 サマニア村から来ました 銅ランク冒険者の ヴィオです。ノハシム鉱山ダンジョンの事を 調べたくて来ました」


「お、おぉ。そうか……。ダンジョン関係は あの棚に揃ってるから 勝手に見てくれたらいい。持ち出しするなら 保証金が必要だから 声をかけてくれ」


貸し出し図書もしているんだね。今までのところでは その場で読む事しかしてなかったけど、借りないと読めない程 資料が多いのかな?楽しみだね。

サッサと奥に引っ込んでしまったおじさんに 苦笑しつつ、お父さんと二人で資料を確認していく。


「これは ダンジョン全体の事を書いてるようじゃな」


「こっちは ダンジョンに出る 魔獣についてかな?」


「これも 魔獣についてじゃが……、ああ ダンジョンというよりは 鉱山とか 岩場によく出る魔獣についての記載じゃな。被っとる内容もあるが これも似たような敵が出た時に対処しやすくなるじゃろうから 見ておくか?」


「うん、今回会えなくても 他で会うかもしれないから メモしとく」


ダンジョン、魔獣、鉱石などの資料を数冊 本棚から取り出していく。

鉱石の加工方法とか、宝石のカッティングとかは 別に必要ないかな。


「ヴィオは 小さい魔石を集めておったじゃろう? あれの加工方法とかも書いとるかもしれんぞ?」


ええっ!? それは見たいかもしれない。

でも まずは 目の前の資料を メモしなきゃだし……。


「うぅぅぅぅ。これが早く 写し終えたら見てみることにする」


苦渋の決断って感じになったからか お父さんが笑ってる。

もう!知らなかったら 気にならなかったのに。

とはいえ 私の事を思って 見つけてくれたのも分かっているので 早くこの資料を写本してしまおう。


お父さんは 各階で採集できる鉱石と、その鉱石の用途などを調べるというので そちらはお願いした。

私は 魔獣の事から 写本していく。

これは お父さんが知っている魔獣でも 私の知識にない相手だから 必ず私自身で 記載している。現場で実際に相手をしてみて 気付いたことを 更にメモに追記していくので、1匹に見開き1頁という 贅沢なメモの仕方である。

ダンジョンの魔獣であれば ドロップアイテムくらいしか追記は無いんだけど、今後 ダンジョンで会った魔獣と 外で会った時に 情報が増える可能性もあるからね。あとは似ている魔獣の事も書けるし、今はスカスカの頁も きっと冒険を続けていれば 真っ黒になると思うんだ。


シカーマンティスは ケピマルダンジョンでも 会った事のある 大きな蟷螂だね。

これは シカーマンティスの頁の 出現場所の部分に ノハシム と追記すればいいね。


ロックラットは 通称 岩ネズミだけど、別に岩のように硬い訳ではないらしい。鉱山とか 岩場に良く出現して 周辺の石などに見えるように擬態することから その名がついたようだ。

20センチくらいの大きさという事なので スモールラットと同じくらいの色違いという感じかな。


シカーバットは 洞窟によく出る蝙蝠だね。これも噛みつき攻撃が主だけど 飛んでいるという事で 近距離攻撃しかない人たちは 苦労するらしい。

私は……鞭か 魔法かな。飛ぶ速さによっては エアショットで追尾だね。


ロックアント、ゴーレム、フローロックリザードなど、今まで会った事のない 特殊な場所にしかいない魔獣のオンパレードだ。

鉱山系のダンジョンでは お馴染みでもあるらしいので、今後も 他の鉱山系ダンジョンで会う可能性は高いね。

属性の名前が付いている魔獣は、特殊な場所で 属性違いの魔獣が居るという事でもあるらしい。

ロックアントは 火山ダンジョンでは ファイアアントとか、フローロックリザードが 雪山では アイスリザードとかね。


「じゃあ 火山のリザードは ファイアリザードになるの? サラマンダーじゃなくって?」


火蜥蜴と言えばサラマンダーだよね? と思ってお父さんに聞いてみたら、サラマンダーはファイアリザードの上位変異種なんだって。

おお、そう考えたら 今のノートは 調べた順に記載しているけど、そのうち種族別に分けたノートも作りたいね。ルーズリーフがあれば 差し替えも簡単なのに、こればかりは 仕方がないね。



◆◇◆◇◆◇



「さて、そろそろ昼休憩にするか」


魔獣の書き写しが終わったところで ウーンと背伸びをしたら お父さんからお昼休憩の声掛けがあった。もうそんなに時間が経ってた?


図書室は飲食禁止なので 司書のおじさんに 午後も来たいと伝えて いったん外出することにした。お兄ちゃんたちは 町の知人たちとの交流をすると言ってたので別行動のままだ。

中級ダンジョンで、鉱山ダンジョンと言われるだけあって マッチョな冒険者が多い。

そして町にも食堂や 屋台も沢山あった。屋台は殆どが串肉を売っている店ばかりで、野菜やあっさりしたスープが飲みたい人は お店に行くしかないらしい。


「らっしゃい、開いてる席に座っておくれ」


「おう!焼肉炒め 肉大盛りで!」


「俺は ジャンジャン焼き、肉大盛りで!」


「あいよ!焼肉、ジャンジャン、両方肉大盛り」


「「はいよ!」」


入ったお店は お客さんでいっぱいで、給仕のお姉さんが 忙しなく動き回っている。半袖というか ランニングのような 二の腕ムッキムキなのを放り出したお兄さんや おじさんたちが 昼だというのに ビールを飲みながら ガハハと笑っている。

おぉ!なんかすごいね。

お父さんを見上げると「店を変えるか?」と心配そうに聞いてきたけど 全く問題ないですよ?


「いい匂いがするし、ここがいい」


そう言って お父さんの手を握って 空いている席に向かった。


「おぅ、ちびっこいのに 分かってんじゃねえか。ここのは 美味いぞぉ」


「おい、てめえの強面で 喋りかけてんじゃねえぞ、怖がられんだろうがよ」


「あぁん? 俺のこのプリチーな顔のどこが強面だぁ?」


「はぁ? てめぇん家は 鏡がねえのか? どこがプリチーだぁ?」


「んだとぉ」


隣に座ってた 髭もじゃのおじさんが ニカっと笑って 声をかけてきたんだけど、それに向かい側の これまた髭もじゃのおじさんがツッコんだせいで なんだか喧嘩が始まりそうです。

お父さんは 特に止めようとはしていないけど、こちらに被害が出るようなら 直ぐに止めるだろう。

そんな風に思ってたら、全然違うところからストップがかかった。


バチコーン


「「いってぇ」」


「うっさいわよ! どっちも髭面の 強面親父じゃないか。あんたたちの喧嘩のせいで カワイ子ちゃんがビビってんだろ! これ以上やるんだったら 店の外でやんな!」


給仕のお姉さんが 金盥……ではなく トレイでオジサンたちの頭を 思いっきり叩きました。

バコーンって めっちゃいい音してましたけど 大丈夫なんです?

ていうか お客を ぶん殴って 大丈夫なんです?


「さて、初めましてのお嬢ちゃんだね、うちのは ちょっと量が多いからね、食べきれない分は持ち帰ることもできるけど、お父ちゃんに食べてもらっても どっちでもいいからね。

あたしのお勧めは ちょっと甘めの チャンチャン焼きだね。辛いのが好きなら ジャンジャン焼きがお勧めだよ」


「そうか、じゃあ 儂はジャンジャン焼きの 肉大盛りで頼む。ヴィオはどうする? シチューでもええぞ?」


「う~ん、お姉さんのお勧めだから 今日はチャンチャン焼きにする。お願いします」


オジサンたちを 完全放置で メニューのお勧めをしてくるお姉さん、嫌いじゃないです。

とりあえず おすすめ料理をお願いしたら 頭をワシワシ撫でられました。

お姉さんが立ち去ったところで 意気消沈していた おじさんたちにフォローを入れておこう。頭大丈夫?と聞きそうになって、それは ちょっと語弊があるかもしれないと思って言い直す。


「おひげのおじさん 頭痛いの大丈夫? プリチーは わかんないけど、怖くはないよ、二人ともおひげが立派で 格好良いよ」


うん、最初に話しかけてくれたおじさんの髭は もみあげから繋がっている髭を 左右でおさげにしている中々 ユニークなスタイルで、もう一人のおじさんは 顎鬚だけを 長く三つ編みにしている 逆カンフースタイルである。

髭のコンテストでもあるのか、この店にいる半分くらいのおじさんたちは 髭がボーボーで、皆個性的な髭スタイルを作っている。


「おぉ!いい子だなぁ」


「おお、てめぇの強面を 怖がらねえとは 度胸がある子だなぁ」


「あぁん?」


また始まったけど この二人は いつもこんな感じで 煽りながら楽しんでいるのだろうか。

他の客の料理を運びながら すれ違いざまに「外でやんな」とお姉さんが ボソッと呟いたことで 直ぐ終息したけどね。


ちなみにジャンジャン焼きは 唐辛子入りのピリ辛ソース炒めで、チャンチャン焼きは 味噌炒めに近い味で、お野菜たっぷりで非常に美味しかった。

ただ 量が多すぎたので お父さんに半分食べてもらったけどね。


おひげのおじさん達は あの後ももう一回 同じやり取りを繰り返してたけど、最後は一緒に帰って行ったから 仲良しなんだろう。

ちなみに この町でよく見かける おひげのおじさん達は ドワーフ族だって言われた。

そう聞いてみれば 皆 低身長ではあったね。

だけど 私よりは背が高いし、ムキムキマッチョだし 小柄にも見えなかったから 分からなかったね。


私の中のドワーフって 小人族くらいのイメージだったから もっと小さいんだとばかり思ってた。

多分 童話の白雪姫に出てくる7人の小人のイメージが強いからかもしれない。


食後は もう一度ギルドに戻り、ダンジョンの簡易地図を写して終了。

ダンジョン内は マッピングすることにしているからね、罠とか 危険地帯の情報だけ調べるくらいにしているよ。

3時間ぐらいで 写本が終わった。

カッティングの本は 岩石から宝石に加工する方法が書いてあるもので、アクセサリーなどの 可愛らしい加工方法が載っている訳ではなかった 残念である。



さて いよいよ明日からは 中級ダンジョンに挑戦だ、今回は 初日からダンジョン内での野営の予定だからね、頑張るぞ!


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― 新着の感想 ―
何度もドワーフ扱いされたらドワーフ=小柄のイメージが真っ先に来るようになるよね
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