表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/408

第166話  護衛依頼(付き添い)休憩


馬車の御者台は 視界が良くて楽しかったんだけど、なにより尻が痛かった。

速度も1頭引きの 時速3km/hレベルの遅さではなかったけど、それでもウォーキングくらいの速さであり、いつもの私たちの移動速度が 10km/h程度だと考えると大分遅い。

ということで 途中からは私も馬車と一緒に歩いて移動した。


普通の商人と護衛の場合、トイレ休憩が 時々挟まれるらしいんだけど、元銀ランク冒険者の御者さんとその相手に 慣れ親しんだ冒険者だ。

用を足したいと思えば列を離れ シャシャっと済ませて ダッシュで戻ってくる。

サッサさんは あれですよ……【クリーン】をかけながら済ませるらしいです。


「したいな~って思ったら 【クリーン】をかけるだろ? そしたら終わるまでグルグルしてっけど 終わったら消えるからな。

ダンジョンで絶え間なく魔獣が出てくるところで編み出したんだが、これが便利でな」


やってみれば分かると言われたけど 遠慮しておきます。

それなら【エアウォール】でも作ってやりますから。


そんな ちょっと驚きの冒険者情報も貰いつつ、馬車は走り続ける。

だけどお馬さんも疲れちゃうからね、夕方 まだ明るいうちに野営地に到着して、そこで野営をすることになった。

馬のハーネスを外し、お水をあげて 干し草をあげている。

ムシャムシャ食べている間に サッサさんはブラッシングをしてあげている。


私たちはその間に夕食の準備とテントの準備だ。といってもテントを張るのは私とお父さんの分だけ。

護衛の時は 商人さんをゆっくり休めるのもお仕事だから、お兄ちゃんたちは交代で仮眠をとる。

テントに入ると 対応が遅れるから こういう時は マントに包まって雑魚寝的な感じになるらしい。


「テントの中に敷くマットを準備するくらいじゃな」


今夜は お父さんとクルトさん、お兄ちゃんたち二人の2交代にするんだって。

私は 護衛のパーティーに入ってないし、どちらかと言えば護衛される側だということで ゆっくりテントで寝て良いと言われている。


夕食のスープは サッサさんが居るので 普通のスープを水から作ったよ。フリーズドライのあれは 知る人が少ない方が良いと言われているからね。

それでも お父さんのミックススパイスで味付けされたお肉は大好評だったし、乾燥野菜をたっぷり入れたスープも美味しいと喜んでもらえた。


「人どおりが多いって聞いてた割に 全然人と会わなかったね」


夕食中に 思っていた事を尋ねてみた。この野営地も 私たちしかおらず、全く気遣う必要なくテントを準備している。

まあ勿論 遅い時間に誰かが来る可能性もあるし、真ん中にドーンと構えている訳ではないけどね。


「ああ、それは 今日が木の日だからだな。大きな街を繋ぐ街道は 馬車が沢山走るだろう?

そういう 人通りが多い道の場合、事故防止も兼ねて 一方通行になるように 道が2本準備されているんだ。私たちが使っているこの道は プレーサマ領都から グーダン方面に向かう為の道、プレーサマ領都に向かう道は もう少し東にある道を使うんだ。

大抵の商人たちは 週の初めに領都に向かって 領都で商売をする。で、週末にかけて地元に戻るんだ。

だけど俺は 工房で使う為の石を持っていくのが目的だから 混み合う時とは逆に動くようにしてるって訳だ」


だから 東の道は混み合うけど、こっちの道は 歩いて旅する冒険者とか、乗合馬車くらいしか走らないだろうって事だった。

ということは、明日も 他の冒険者とか商人さんを気にしないで良いって事?

だったら 風魔法のあれ 使ってもよくない?


「お父さん!」


「ん、なんじゃ?」


「あのね……ゴニョゴニョ ゴニョゴニョ」


「ああ……、まあ そうじゃな。サッサじゃったら ええかもしれんな」


お父さんに内緒話で相談してみる。

お父さんも あの魔法で ビュンビュン走るの楽しんでたもんね。馬にかけるというよりは サブマスがしてたみたいに 荷車の重量を浮かせるように風を当ててあげるだけでも 早くなるんじゃないかな。

そう言ったら お父さんも乗り気になってくれた。


「サッサに 提案なんじゃがな……」


という事で お父さんが風魔法の説明をしてくれる。

サッサさんは 不思議な顔をしてたけど、聞いていくうちに 段々顔がキラキラし始めて 最終的には「面白そうじゃねえか!見てみたいぞ」と言い出した。

まずは大事な荷車に見知らぬ魔法をかけられるのは怖いだろうから という事で、こないだのお父さんのように サッサさんに抱っこしてもらって、サッサさんに追い風を当てて走るのをやってみる。


「なに、どういう魔法な訳?」


お兄ちゃんたちも興味津々で見つめているけど、風魔法は魔力視が出来ないと分からないんじゃないかな。

そう思いながらも サッサさんには この野営地の外側を一周してほしいと告げる。


「よし 来い!」


「じゃあ やるね【ウインド】」


サッサさんの背後からと 掬い上げるように少し下からの2か所から吹かせるよう 風魔法を展開する。

走りながらでも良かったけど 止まったままだった サッサさんは グイっと何かに押されるように 前にトトトっと走り出した。

と思えば 掬い上げられるような感じの風もあるから 飛ぶように一歩が大きくなる。タッタッタというよりは、ポ~ン、ポ~~ン、ポ~~~ンというような感じだ。


「おお! おおお!なんだこりゃ! おもしれ~~~」


「えっ、なにあれ!? 面白そう! ヴィオ、次僕もやりたい!」


野営地の外側を 跳ねるように凄いスピードで走るサッサさんを見て、お兄ちゃんたちも立ち上がって 大興奮。

何となく馬たちも 首を持ち上げて見つめているから 驚いているのかもしれないね。


興奮するサッサさんを 2周目が終わったところで魔法も止めて 終了してもらう。

続いてお兄ちゃんたちも やりたいと言うもんだから 複数人に同時にできるかの実験に付き合ってくれるなら、というお願いの元 3人一緒に走ることに。

私を抱っこするのは トンガお兄ちゃん。左右に ルンガお兄ちゃんと クルトさんに並んでもらって【ウインド】を3人同時に背後と 足元に展開する。


「お、お、おぉ!」


「これは、すげえ!」


「これ、広すぎるダンジョンとか 移動にいいんじゃねぇか?」


結果 複数人でも ちゃんと想像してたら 魔法は同じようにかかりました。

お兄ちゃんたちも 今日は一日ゆっくり歩きだけだったからか、3周ほど楽しんで走ってましたけどね。


「これを荷車にやるってことか、確かに そしたら こいつらは荷車の重さをほとんど感じることなく走れそうだ。だとしたら かなり速く走れるだろう。

ただ、そんなに長時間 お前さんが魔法を使って 魔力が大丈夫かって心配はあるけどな」


「ああ、荷車だけにするんじゃったら 下からの噴き上げる風だけで十分じゃろう? 馬が引く分 追い風は要らんじゃろうし、儂らは 走ってもええ」


え? 護衛依頼の時は 走ってたら エンカウントした時に疲れちゃって役に立たなくなるからダメって言ってなかった?


「ヴィオ、この道は 武闘派で名高いプレーサマ辺境伯領都に続く道だよ?

多分 この リズモーニ王国で一番安全な道だ。まあ もし盗賊が出たところで 走ったくらいで体力切れなんて情けない姿は見せないから 安心して」


パチンとウインク頂きました。

確かに お父さんのスパルタ訓練を受けている3人が 街道を走るくらいで体力切れなんて なるはずがないね。

という事で、明日は 荷車軽くして早く移動しちゃおう作戦が決行されることになりました。


作戦名がダサいとか言わないでね、分かりやすさが一番です!

ベテラン冒険者のトイレ事情 知りたくなかったし 実行したくはないです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ