第15話 カードの隠蔽
昨日は ギルマスたちとのお話し中に寝てしまっていたらしく、起きたら布団の中でした。
寝てる時間長すぎない?
夕食も食べずに 朝までぐっすりとか どんだけ~?
「おぉ、ヴィオ おはよう。よく眠れたようじゃ。お腹が空いたじゃろう?」
しかも昨日は泣いた記憶もある訳で、お父さんに抱きしめられた安心感で寝てしまったんだと思う。正に泣き寝入り……。
恥ずかしいと思いながら こっそりリビングを覗き込んだら、すぐにお父さんが気付いて椅子に乗せてくれた。あまりにも普通。
昨日のことは突っ込まないんですか?
だけどお父さんはいつも通り。
料理をしながらクリーンの洗浄魔法で 私の洗顔もしてくれるし、いつも通り。
お父さんの分は全てが山盛りで、私は普通盛り。
「「いただきます」」
◆◇◆◇◆◇
「お父さん、昨日は泣いてごめんね?お話の途中だったのに 寝ちゃったし。」
あまりにも いつも通り過ぎるから、お食事が終わったところで 自分から謝ったよ。
お父さんはキョトンとしていたけど、すぐに笑って頭を優しく撫でてくれた。
「ヴィオはなぁ、5歳にしてはしっかりしすぎなんじゃ。もっと甘えてくれてえぇ。
母親が恋しくて泣くのも当り前じゃ。泣くことで 心の澱が少しずつ溶けていくとも言うしな?
無理に泣けとは言わんが、無理をして頑張る必要もないんじゃ。」
恋しい……っていう気持ちなのかな?
昨日は私がいなければ 母さんは もっと長生きできただろうに。という後悔の気持ちが大きかった気がする。現実問題、川で溺れてから ずっとお父さんには甘えっぱなしだと思うんだけど……。
「まぁ、遠慮せんと なんでも希望を言えばえぇって事じゃ。
勿論できんこともあるが、出来ることなら叶えてやりたいしな。」
お父さん、本当にいい人すぎるんですが。
あの糞チビ禿デブおやじとの違いが凄すぎる。
川をドンブラコして良かったです。ありがとうございます。
「あぁ、昨日あの後ギルマスたちと相談したんじゃが……。」
私が寝てしまった後、3人で地図を確認し、私がいた場所が判明。
北にある人族至上主義の国だったらしく、私の属性があの国でバレたら 確実に城か 神殿で監禁コースだっただろうとの事。
聖属性だけでも監禁の可能性が高いのに、全属性だから研究対象にもなっただろうって、怖すぎるんですけど!?
で、色変えの魔道具に関しては、サブマスさんの知り合いが魔導学園にいるらしくて、調べてもらうように依頼してくれたらしい。
この国は鉱山に囲まれて 海側以外では 容易に他国に出かけられない不便さから、引き籠って研究する人が昔から多かったんだって。
鉱山と山に住む魔物のお陰で 素材に事欠くことはなく、魔道具や魔法の研究が発展したらしい。
大昔の王様が 作った学校は年々大きくなり、今は大陸中の国々から 留学して学びに来る人が多いみたい。
貴族の子女は12~16歳まで学園に通い、卒業後に男性貴族は自国の高等学園に2年ほど通うんだって。女生徒は学園卒業と同時に嫁入り もしくは嫁入り修行をするって言うから、びっくりだよね。
16歳なんて、女子コーセーだよ? J Kなんて 人生の中で一番無敵だと思ってた時代じゃない?
「あとな、学び舎には人族の講師も二人ほどおって、魔法を教えてくれる予定のアリアナが 水と木と少しの聖魔法を教えてくれることになっとる。
儂も一番得意は木魔法じゃからな。水・木・火・風の4つを得意魔法にして、聖魔法も少し使えるというようにギルドカードに隠蔽をかけることにしたんじゃが……。」
おぉ、人族もいるんだね!
聖属性は母さんほどに得意属性ではなくても、少し使えるって人はいるんだね。そしたら聖属性の使い方を教えてもらえたら 自分でも鍛えることは出来そうだもんね。
「うん、ありがとう。隠蔽ってどうやってやるの?」
勝手に決めた事を申し訳なく思っていたらしいお父さんだけど、私はここでの常識が分からないから、大人から見て許容範囲を教えてもらえるのは有難いんだけどね。
そう言ったら驚いた後に 笑って頭を撫でてくれた。
お父さんに教えてもらって ギルドカードに隠蔽をかけていく。
特に難しい魔法はいらなくて、カードに魔力を流しながら 表示したい内容、もしくは 表示したくない内容だけをしっかり想像すればいいらしい。
虚偽内容を追記することは出来ないのと、表側に表記されたものは消すことが出来ないらしい。
表には名前、年齢、ランク、パーティー名、賞罰の有無
裏には得意属性、称号、ダンジョン攻略情報などが入るらしい。
記載が増えると文字が縮小されるらしく、減らせばそれなりの大きさになる。想像以上にハイテクで驚く。
今 私のカードには属性情報しかないので、木・水・火・風だけを表記させておく
ギルマスの闇や、サブマスの聖のように、使えるけど得意属性でない。というものはカードに記載されない事も多いようなので、私の聖属性も得意属性ではないけど使える。という事にするらしい。
「できた!」
「うん、魔力操作の訓練を受けておっただけあるな。しっかり出来ておる。」
お父さんが確認してくれてOKをもらえた。
他人が魔力を流しても変更されることはないらしく、ギルドでタキさんが使っていた あの特殊な魔道具を使わないと 新しい情報は記載できないらしい。
「あとな、ヴィオを見つけた時に持っておった鞄があったじゃろ?」
あぁ、ズタ袋だね。
汚れのわりに破れているところはなく、敢えて汚れているように見せているのが分かったのは、ワンピースの白さとの対比があったからだ。
「うん、何も入ってないから そのまま身に着けてた鞄だよね。」
「あれは多分 マジックバッグじゃ。」
え!?
マジックバッグって、冒険者系のラノベでは必須のアレです?
青い猫型タヌキの四次元ポケットみたいな便利道具です?
「……いやいや、お父さん、あれ何も入ってなかったよ?」
喜びかけたけど、川に入る時にモノが入ってたら濡れるかもと思って確認したんだよ。入ってなかったからそのまま川に飛び込んだけども。
「マジックバッグは魔力を流さんと使えん。
あの鞄には多分持ち主登録もされておると思う。儂が確認した時には魔力が流れんかったからな。」
魔力!
そっか、確かに 誰でも使えたらマジックバッグ持ってる人襲えば中身奪い放題だもんね。