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第152話 お兄ちゃんたちと手合わせ その2

二番手は アルクお父さんと 長兄トンガの手合わせです


クルトさん達が戻ってきたところで、お父さんと トンガお兄ちゃんが訓練場の真ん中で 向かい合うように立つ。

ルンガお兄ちゃんも、まだグッタリしているクルトさんも、真剣な表情で 二人を見つめているから、私まで緊張してきた。


お父さんは片手剣、トンガお兄ちゃんは 長剣を武器として使うんだけど、さっきのクルトさん達と同じで、格闘で手合わせをするつもりみたい。

お互い睨み合っているだけのように見えるけど、ピリピリした空気がこちらまで来るから、多分さっきの威圧みたいなのをお互いにぶつけあっているんだと思う。


「あ、そうだ! サブマスさん、この威圧っぽいのって 無属性の魔力ですか?」


「あぁ そうですね、属性魔法ではないから無属性でしょう。

身体強化は 体内に循環させるけど、これは体外に放出させているんでしょうね。

まあ 魔力だけではなく、その人の持つ 強者のオーラというか気合も乗せているんだと思いますよ」


おお、オーラと気合ですか。両方目に見えないけど、地球でもあるとされてたよね。お父さんたちの場合は 肉食獣強者としての オーラを纏ってるのかな。

だとしたら私は真似できそうにないね。 最弱の人族だもん。


睨み合っていた二人だったけど、ほぼ同時に動き出した。

右の掌底を打ち込もうとすれば 左の掌で手首の内側から押し出されて逸らされる。

左で殴りかかろうとすれば 左前腕でガードされながら グインと腕を逸らされる。

蹴りも 足の裏全体で受け止めているけど、ボクシングのミット打ちをしている訳じゃないですよね?


それらが 凄いスピードで交わされているから

ドシッ バシッ バン! ダン! 

と 音と砂埃が時々舞うだけになっている。


「お父さんからは攻めないんだね」


「あれを全部受け止められる 父さんもヤベエけど、あれだけ連続で打ち込めるのもすげぇ」


「ああ、アルクさん冒険者を随分休んでたはずなのに、現役に戻ってねえか?

……って ヴィオ お前あの動き追えてんのか?」


「6歳なのに身体強化できるんだってよ。さっきのクルトたちの動きもちゃんと理解してたぞ」


「マジか……。アルクさん相変わらずスパルタじゃねぇか」


ずっと トンガお兄ちゃんからの攻撃を受ける一方のお父さんだったけど、何かをお兄ちゃんに告げた後 攻守交替になった。

ああ、両方に回してたら足りないと思って視力だけにしてたから 聞こえなかった!


お父さんからの攻撃も さっきのトンガお兄ちゃんと同じ感じなんだけど、お兄ちゃんは 受け止めるのにかなり大変そうだ。音もズシっていうより、ズゥン!って感じ。重いんだろう。

なのにスピードは落ちないんだから、お父さんって私が思っていた以上にヤバイ冒険者だったんじゃない?


「お父さん すごい、格好良い……」


「あれを見てその感想って、ヴィオも大概だな」


「アルクさんは ヴィオさんと一緒に金ランクを目指すことにしたらしいですよ」


「「マジか……」」


帰ってきて サブマス達に話したら、ギルマスが張り切って 直ぐに試験するか?って言ってたんだよね。

〈最年少と最年長の金ランク冒険者パーティー〉になるんじゃないかって笑ってた。


金ランクになる冒険者は やっぱり若いうちから抜きんでている人が多いらしく、20代の半ばくらいには上がるらしい。

金ランクになる=貴族からの依頼もある(指名依頼がある)という事で、貴族の付き合いを厭わない人や 伝手が欲しい人は 早めにランクを上げているのだ。

金ランクの中でも上級まで行けば 伝説の人扱いになるから 指名依頼なんて 高額過ぎるし、冒険者が気に入らなけば 断ることもできるみたいだけど、白から上級に上がるには相当な実力が必要だからね。


だから銀ランクの上級から ランクを上げなかった人が 年数を置いて 上がろうとするのはまずいないらしい。お父さんは 冒険者としての技量や 戦闘能力としては 金ランクに相応しいと言われていたらしいので、金ランク試験を受けないとなった時は残念がられたらしい。

そのお父さんが 今になって受けようと言うのは、やっぱりギルドの長としては嬉しいんだって。で、私は多分 7歳になれば 銀ランク試験を受けるから、10歳になる頃には十分銀ランクの上級にはなっているだろうと ギルマス予想を頂いた。

そうなれば 十代半ばで金ランク試験を受けられるだろうって事で、期待しているぞ!と応援してもらえたのだ。

お父さんの年齢のこともあるからね、10年は待たせたくないから 出来るだけ早く 金ランク試験を受けられるようになるだけの実力を身につけたいものだ。


金ランクに想いを馳せていたら トンガお兄ちゃんの体力が尽きたらしい。

お父さんの足払いを避けられず そのまま後ろに尻もちをついてしまった。


「はあっ、はあっ、参った……、まだ…、ダメだったかぁ……」


「いや、随分 スピードも速くなったし、重くなった。フェイントも避けられるようになったし、無駄な動きがなくなった。強くなったな」


「はあっ、はあっ、そっかぁ、うれしい……」


息も絶え絶えとは このことだろう。だけどお父さんも 凄い汗だくになってるし、本気でやってたことが分かるね。どんな特訓をしていれば こんなに強くなれるんだろうね。

RPGみたいに モンスターを倒してレベルアップするなら それなりに私も強くなれる気がするけど、ここは そういう世界じゃないから、自分たちで地道に訓練して 筋力と体力をつけて強くなるしかないんだよね。

まあ、努力あるのみ!って事だね。



お父さんに腰を抱えられながら トンガお兄ちゃんが戻ってきた。

お水をあげて 【クリーン】で綺麗にしてあげる。


「ヴィオ ありがとう、スッキリしたよ」


ニッコリ笑ったトンガお兄ちゃんが 頭をなでなでしてくれる。


「えっ、ヴィオ、俺にはさっきそんなサービスしてくれなかったよね?」


完全復活したクルトさんが そんな事言うけど、クルトさんが戻ってきた時には お兄ちゃんたちの手合わせが始まってたんだもん。


「よく分からない女に鼻の下伸ばしてるから 嫌がられたんだよ」


「他所の女に 手を出すのまでは止めないけど、ヴィオにはあんまり近づきすぎんなよ」


私が何かを言う前に、トンガお兄ちゃんと ルンガお兄ちゃんが クルトさんに辛辣なツッコミを入れています。嫌がってはないですよ? あ~、男子なんだなって思っただけで。


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