第148話 お兄ちゃんたちと相談
ちょっと放心状態だったお兄ちゃんたちと一緒に村に戻れば、お肉の解体をするためにマコールさんのお店へ。
当り前のように肉を受け取り 一緒に解体する私の姿に クルトさんがツッコむ。
「親父、このビッグボア誰が狩ったか知ってるか?」
「ヴィオの討伐は気持ちいいだろう? あの吊り下げからの血抜きのお陰で 肉の鮮度が抜群になったんだぜ」
知ってたのかよ……。と崩れ落ちたクルトさんだけど、大丈夫です?
マコールさんも キリトさんも、吊り下げの方法を実際に見てみたいって 一緒に森に行ったから知ってるんだよね。
いつもは多すぎるお肉の一部だけ 私たちが持ち帰り、その他の部分はマコールさんに買ってもらってたんだけど今日からしばらくは エンゲル係数が上がるからね。
屋台に使いたい肉串の分だけマコールさんに売って、残りは持ち帰ります。
「こんなに小さくて可愛いのに 強いなんて、ヴィオはなんて可愛いんだ~」
家に戻ってから トンガお兄ちゃんが壊れました。
お父さんは笑ってるだけで止めてくれないし、ルンガお兄ちゃんは お父さんに特訓の秘訣を聞きながら お昼ご飯のお手伝いをしている。
まあ、なんだコイツ?って思われて嫌われなくて良かったです。
お昼寝の後、起きたらクルトさんがリビングにいたよ。
改めてこれからの事を相談する為に呼んだんだって。
「あんな討伐見ても こうやって昼寝してるとか聞くと、年相応にみえるんだな。
これは中級ダンジョンで良いけど、アルクさんだけで連れて行くのが危険だと思うのは正解っすね」
どうやらお父さんから ある程度の説明は終わっているらしい。
メリテントでの誘拐未遂があったからね、お父さん一人だと 悪者ホイホイになり過ぎちゃうもんね。
「とりあえず 僕たちも父さんたちの顔を見に来ただけだったし、そんなに村でゆっくりするつもりは元々なかったんだよね。
幾つか中級を潜ってから 上級にって思ってたから、予定は大きく変更しなくていいと思う。
王都に行くのは水の季節だっけ?」
「そうじゃな、水の3か月目には王都に入るつもりじゃ」
「ギルドで勉強してんのに 学園でも勉強すんのか。ヴィオは学者になるのか?」
「ならないよ、ドラゴンと会える冒険者になるんだよ。学園に行くのは ドゥーア先生に会う為なの。知らない魔法をいっぱい教えてくれるんだって」
たしかそんな約束だけど、忙しい先生だ。私との約束なんて忘れている可能性も高いと思うけどね。それなら王都観光をして帰るだけだからそれはそれでいい。
「うん、じゃあ 今週と来週は準備期間って事にしよう。
ヴィオがギルドでやってる勉強と訓練も どんな感じか見てみたいし、保存食とかの準備もしたいしね。
で、再来週の初めに出発としよう。
プレーサマ辺境伯領地を南下して まずは ノハシム鉱山へ、ノイバウワー侯爵領のグーダン大山は かなり時間がかかるだろう。
その後はウィスラー侯爵領を抜けて 王都へ向かおうと思う。
グーダンの攻略次第で その後のダンジョンを決めようと思うけどどうかな」
トンガお兄ちゃんの説明に ギルドで学んだ地図を思い出しながらフムフムと聞いていく。共和国との国境になっている領地を南下していくって事みたいだね。
ノハシム鉱山は勉強不足だけど、グーダンは習ったよ。豊作ダンジョンと呼ばれる人気の中級ダンジョンで、高原と森のダンジョンらしい。
10階までは高原で、とにかく広いから 人気があって人が多い割には 混雑で入場制限がかかることはないらしい。
低層階は然程強い敵ではないから 銅ランクのパーティーでも入れるんだって。2階くらいまでなら 冒険者の付き添いありで 普通の平民が野菜の収穫の為に入る事もあるって言うから凄いよね。
ただ、森になる10階以上は敵も強くなるし、迷子が続出するから 自信のない者は入らないように言われるらしい。
こないだ行ったルエメイ遺跡ダンジョンが あれだけ沢山素材が採れるのに不人気なのは、このグーダンがあるからなんだって。
とにかく植物系の食材が豊富らしくって、大きな商会も沢山町にあるから凄く大きな街らしい。
メリテントとどれくらい違うのか聞いたら、比べようもないって。
「そうだな、街に用がある訳じゃないけど 通過地点でもあるプレーサマ辺境伯の領都に行ってみようか。
そこと変わらないくらいに大きな街だから驚くと思うよ」
領地を治める領主がいる街と、ダンジョンがあるだけの街が同じだけ大きいの?
それって、領主が治めなくていいの?
「ダンジョンは 資源でもあるが 一つ間違うとスタンピードを起こす危険な場所でもあるからな、領主が治めることはない。
確か グーダンの街は 代々騎士を輩出しとる伯爵家が 統治しとったと思うぞ」
ああ、各領地にいる貴族達だね。メリテントの一件で勉強したけど、どの家が何に強いとかまでは勉強してなかったよ。
貴族 ややこしすぎるよ。派閥とかの話まで出そうになってお父さんが止めてくれたのはファインプレーでした。名前だけでお腹いっぱいだもん。
近寄るな危険の貴族だけ覚えておきます。
「まあそうだな、グーダンは 確実に1か月はかかるだろ? そうなれば 残りは行けても1つか2つだろうな。そん時の状況で調整しようぜ」
おお、大人だね。あとは実力があるからこそ言えることなんだろうね。自分たちが入れるレベルも把握してるって事でしょう?
お兄ちゃんたち格好良い!
「うっ、そんなキラキラした目で見るな。 なんか予想以上に期待されてそうで辛い」
「成人してから家を出たままじゃったからなぁ。儂もお前たちがどれくらい強くなったのか興味があるなぁ。それも見せてもらおう、ヴィオ 楽しみじゃな」
成人してからって、トンガお兄ちゃんは5年、ルンガお兄ちゃんでも3年???
平民の成人は16歳だったよね?それはすっごいことになってそうだね。
スチーラーズの なんちゃって銀ランクとは違うはず、これぞ本当の銀ランクってところを見せてもらえそうだよね。
ワクワク!楽しみだね!
「う、うわぁ~、あんな戦い方する幼女に期待されてるって、俺自信ないんだけど?」
「クルト 大丈夫。俺も妹の期待に応えられる自信はない」
お兄ちゃんたちったら 謙遜が過ぎるよね。
大丈夫、お父さんのアスレチックトレーニングで育った元祖でしょう?
色々見せてもらって 盗める技があったらもらうつもりで頑張るよ!