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第147話  お兄ちゃんたちと森


「クルトはどうするんじゃ?」


準備が整ったところで お父さんがお兄ちゃんたちに質問する。クルトさんは肉屋のマコールさんの次男さんだけど、実家に戻ったんだったら それこそ数日は まったりするんじゃないのかな?


「あ~、どうするかな、店に寄ってみて聞いてみるかな。店を手伝うならそれでいいし、ダンジョンに一緒に入るなら 見てみたいっていうかもしれないしね」


ということで、まずはマコールさんのお店に行くことになりました。

4人で揃って家を出る。

最近森に行くときは 直接東門から出てたから この時間に広場の方に行くのは久しぶりかもしれないね。

学び舎にいくレン君たちに会うかと思いきや、時間が少しずれたのか 会うことはなかった。


「こんちゃ~」


「おはようだろうが、おう!トンガにルンガ、よく帰ってきたな」


お店の扉を開ければ マコールさんが準備中だった。

私もおはようの挨拶を交わし、お兄ちゃんたちがクルトさんの様子を確認する。


「ああ、なんだ森に行くのか? へぇ~、ヴィオの実力を確認……。

そうだな、ヴィオ、クルトにもあの吊り下げ見せてやってくれるか? お~い、クルト!」


マコールさんが大声で呼べば 返事が返ってきたので クルトさんは起きてるのだろう。見せて欲しい吊り下げは いつものお肉の下処理の事で良いのかな?

クルトさんの冒険者としての活動も、将来のお店の為だって言ってたもんね。


ちょっと待っていればクルトさんが店に下りてきて、これから森に行くことを説明してもらう。不思議な顔をしていたけど、私が中級ダンジョンに一緒に入りたいから その実力を確認する為だと聞けば 納得してくれたらしく、お兄ちゃんたちと同じくらいの装備に着替えて出てきてくれた。


「じゃあ 行ってきま~す」


「森の討伐に行くのに なんでこんなにご機嫌なんだ?」


私たちに気付いて出てきたココアちゃんと、ノアさん、マコールさんに行ってきますと手を振って 再び東門に向かって戻る。

クルトさんは キリトさんの屋台の仕込みを手伝っていたらしいので、しっかりお目覚めではあったようだけど、私のご機嫌な理由が分からず不思議な顔をしている。


だって、いつもはお父さんと二人だけの道なのに、今日は3人も増えて 〈冒険者パーティー〉って感じではないか。


「冒険者家族って感じだと思うけどね~」


その場合のお母さん役はトンガお兄ちゃんでいいんですか?


「ヴィオの武器は その短剣か? 双剣って珍しいな」


クルトさんが 私の装備を見て質問してくる。そう言えばお兄ちゃんたちからはその辺聞かれなかったね。


「うん、この剣も使うし、鞭も使うよ。でも一番使うのは魔法かな」


「あれ?父さん 初心者の森じゃないの?」


「ヴィオは ビッグピッグも ボアも一人で狩るぞ? ルエメイ遺跡ダンジョンを単独踏破できると言うたじゃろ? あそこのボスはオークとゴブリンの組み合わせじゃが、全く問題なくやれるぞ」


「「「は?」」」


いつも通り 川向こうの森に向かっているんだけど、途中で気付いたトンガお兄ちゃんがホーンラビットの森じゃなくていいのかと聞いてきた。

そっちじゃ何の確認にもならないではないか。しかもマコールさんからは クルトさんに吊り下げを教えて欲しいと言われているし、確実にピッグかボアを狩る必要があるんだもん。

お父さんの言葉に思考停止しているお兄ちゃんたちだけど、足はしっかり動いているので森まであと少し。



◆◇◆◇◆◇



「今日はヴィオがどれくらい動けるのかを確認するんじゃろう?

森の中に入れば ヴィオの動きは中々早いからな、見失わんようにな」


「「「え?」」」


森に到着したので 早速【索敵】を展開。ボアかピッグを探しましょう。

親子ボアは ヒュージボアという正式名称も知ったしね。親子だと遠慮する必要はないと知った。


「お父さん、西北200チョイ、池の向こうに多分ボア、大人の方かな、1匹だけ。これにするね」


「「「は?」」」


複数でいることも多いボアだけど、単体でいることもあるからね。もしかしたら少し離れたところに他の個体が居る可能性はあるから 索敵は切らずに周囲を確認しながら向かいますよ。

お父さんからは いつも通りで良いと言われたので、木の上に駆け登って そのままボアの方へ走って行く。

驚いていたお兄ちゃんたちだけど、お父さんに言われて 慌てて追いかけてきているのが分かる。

あの体格なのに 武術を磨いているだけあって足音はあまりしないね。

途中の木に イエロースネークが居たけど、とりあえず無視してそのまま通り過ぎる。もし向かって来たら狩るけど、今日はボアが獲物だからね。


池で水を飲んでいるのかと思いきや、水浴びをしていたらしいボアは 池のほとりで水浴びに疲れたのか眠っているようだった。

眠っている魔獣を倒して 私の実力を測るのに良しとしてもらえるのかは分からないけど、ダメならまた他の相手を見つければいいかな?


一応ボアを視界に入れたまま 索敵範囲を広げても、この個体の仲間らしい反応はない。本当に一匹で行動していたようだ。

池の傍で眠っているので、いつものように木から蔓を伸ばして、というにはむかない。だからと言って起こすのも面倒だ。


「【アースポール】【アースホール】」


ボアの大きさで穴を作るので、その穴の両側に物干し竿タイプのポールを作る。ボアの身体が穴に落ちる前に 腰ベルトにしている鞭に魔力を流し 蔦を作り出してボアの脚に絡ませて、物干し竿に吊り下げるようにすればいつもと同じだ。


「【ウインドカッター】」


毛皮は売りものにはならないからね。首チョンパで 勢いよく血抜きをしてしまいましょう。

ある程度 血液が噴出したことを確認したら 解体ナイフで お腹を割いて内臓を落とし、魔石だけ取り出します。


「【ファイア】」


青い炎のファイアで 穴の中身を焼却すれば、落とし穴を元に戻し、鞭の魔力も消してボアを下ろしましょう。物干し竿も消せば完成です!


「あっ忘れてた【クリーン】」


お父さんに担いでもらうからね、【クリーン】で綺麗にしたら 今度こそ完成です!


「お兄ちゃんたち、どうだった? ダンジョン一緒に行ける?」


近くにいて確認してたのは知ってるからね、くるりと振り返って聞いてみたら ポカンとした顔のままの3人組。あれ?駄目だった?


「お父さん、鞭と短剣 攻撃で使わなかったから駄目だったのかな?」


「はっはっは、いや、大丈夫じゃ。

さて お前たち、可愛い妹が 心配そうに見ておるが どうじゃった?」


お父さんに聞いてみたら 笑いながら大丈夫だと言う。でもお兄ちゃんたち固まってるよ?

じっと見つめていればお兄ちゃんたちの立っている木の上に イエロースネークが居るのが見えた。さっき無視した個体と同じか分からないけど、ボーっとしているお兄ちゃんたちを狙っているのが分かる。


「【ウォーターウォール】【エアショット】」


お兄ちゃんたち3人を包むように水の壁を作り、蛇には空気弾をお見舞しましょう。かなり自由に動けるようになった【エアショット】は、多少対象が動いても追いかけますので 蛇の口の中を通過し 脳天を直撃したようです。


ズルリとそのまま木の上から落下してきた蛇は、お兄ちゃんたちを守る壁に当たって ズルんと地面まで落ちてきた。

壁を解除して 蛇も解体してしまいましょう。


「お父さん見て、傷 殆ど分かんなくなってる」


「おお、益々精度が上がってきたな。皮を売る魔獣には あの魔法がええな」


そんな会話をしながら 出来るだけ使い勝手が良い様に綺麗に解体していきます。

蛇はお腹の白い皮と 背中の黄色い皮の境目にナイフを入れることで 両方の皮を余すことなく使えるようになるので、高値で販売することができるのです。

皮を剥いだ後は 牙の付け根をナイフの先端で切り、牙を取り出します。

毒持ちの個体だと、この牙の裏側の 上顎部分に毒腺と毒袋があるらしいので、それも慎重に取り出す必要があるそうですが、その場合は 解体をせず そのままギルドに解体もお願いした方が早いそうです。

イエロースネークは 毒を持っていないので 牙だけ取り出せばOK。お肉は今日の夕飯かな。内臓を取り出し 魔石を採取すれば 残りは同じように【ファイア】で焼却です。


「お肉はお家用でいいよね?」


「そうじゃな、この大きさじゃったら 夕飯に出せば終わりじゃ」


今夜は蛇ステーキに決まりました。


「いや、ちょっと待って、色々待って」


「父さん……」


「アルクさん、俺たちの時よりどれだけ鍛えたんすか?」


蛇の解体もすっかり終えたところで、ようやくお兄ちゃんたちが復帰したようです。


「だから言うたじゃろ? ヴィオは銅ランク冒険者で 初級ダンジョンは軽く一人で踏破できるだけの実力がある。

ちなみに大陸中のダンジョンを回るのが目標で、強くなったらドラゴンに会いに行くのが夢なんじゃ。基本は魔法をつかうが、この鞭は魔法武器じゃから遠距離攻撃は魔法と鞭の両方で使える。

討伐以外の日の午後は ギルドの地下訓練場で組手もやっとる。無手での武術も結構やるようになっておるぞ。

短剣は外で使うことは少ないが、ダンジョンではよく使う。魔獣をどんな倒し方でやってもドロップアイテムが変わらんからな」


お外では毛皮とか お肉とかが大切だからね。できるだけ極小の傷で済むようにしていますよ。

ルンガお兄ちゃんは「まじか」しか呟いていないですが、お肉の鮮度もありますし、とりあえず村に帰りませんか?



ヴィオの実力確認の為に森へ!

お父さんは確信犯、お兄ちゃんたちはびっくりですよ

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