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第145話 はじめましてお兄ちゃん


土の季節3か月目の初め、いつものようにギルドでの座学を終え 1階に下りたところで ギルドの扉が開いた。


「ただいま戻りました~、あ~、超久しぶりだけど 中も他と変わんねぇから 感動は無いな~」


「ははっ、相変わらずじゃなぁ。学び舎はお前らが居らんうちに随分変わったぞ?

トンガ、ルンガ、元気そうで何よりじゃ。クルトも おかえり」


「うぇっ!アルクさん!? なんでギルドに???」


「父さんただいま、なんか元気そうだね」


「父さん? うわっ、まじだ。なんでギルド……ってその子誰?」


入ってきたのは マントとブーツ、リュックを背負った旅装の冒険者たち。3人ともガッチリした身体つきだというのが マントから出た腕や足からでも分かる。

先頭で入ってきたのは 肉屋のマコールさんの息子さんだろう、後ろにいる二人は お父さんとそっくりなので お兄ちゃんたちだと分かる。

ルンガさんが お父さんと手を繋いでいる私の存在に気付き、目を見開いて驚いている。

そう言えば こっちからの手紙は送れていないから 私の事は伝えてないって言ってたもんね。勝手に私はお兄ちゃん呼びしてたけど、実際会ったらどうやって挨拶すればいい?

ちょっと動揺していたら お父さんにひょいと抱えられた。


「おう、お前たちの妹になったヴィオじゃ、6歳になったばっかりじゃ。可愛いじゃろう?

ヴィオ、手前の金髪が マコールの息子のクルト、後ろのが 長男のトンガ 確か21になったかの?

で、驚いて固まっとるのが次男のルンガ 18歳じゃ」


自己紹介を悩んでたら お父さんが先に紹介してくれた。

クルトさんとトンガさんは同じ年って言ってたもんね。ルンガさんだけちょっと離れてるんだね。


「いや、父さん 俺19歳になったし。

じゃなくって、妹? は? え? その子どう見ても人じゃない? それとも猿族?」


「え? アルクさん、子供? いや、俺らそんなに長く離れてなかったよな。え?どういうこと?」


「へぇ~、妹か、可愛いね。ヴィオ?」


動揺しまくっている二人を余所に 長男トンガさんだけが冷静で、両手を広げてくれるので お父さんの手からトンガさんの胸に移動する。


「人族のヴィオです。6歳になりました。トンガお兄ちゃんたちに会えて嬉しいです。よろしくね」


抱っこされたままになるとは思ってなかったけど、両手を脇の下に入れて 目の前に掲げられたのに無言でいるのもおかしいから自己紹介をしてみた。

両足はブランとしたままだし、両手も自由にならないから ペコリと頭を下げるくらいしかできないけど、トンガお兄ちゃんは目をキラキラさせてギュっと抱きしめてくれた。


「父さん 何この子、すっごい可愛い」


「そうじゃろう? 可愛いが 強いぞ。ヴィオは銅ランク冒険者じゃからな」


お父さんの言葉に トンガお兄ちゃんは驚いたらしく、再び目の前に掲げられたから頷いておく。ちなみに残り二人はまだ固まっています。


「まあ とりあえずお前たちは ギルドの手続きがあるじゃろう?

トンガとルンガは家で昼を食うじゃろう? 準備しておく。

クルトは 親父さんが待っとったからな、明日からの飯は言うてくれたら用意してやるが、今日は家に帰れ。

さあ、ヴィオは先に帰ろうな」


トンガお兄ちゃんの手から掬い取り、3人に手続きを促すお父さん。まあ、おなかも空いたしね。

まだ再起動しない二人だけど、トンガお兄ちゃんが居たら大丈夫でしょう。

ギルドの受付前でのやり取りだし、タキさん達もやり取りは眺めて笑ってたから 再起動して質問があっても答えてもらえるだろう。

ということで、トンガお兄ちゃんに手を振って 私とお父さんはギルドを後にした。




「お父さん、トンガお兄ちゃんは あんまり驚いてなかったね」


「ははっ、あいつは可愛いもんが好きじゃからな。

ルンガは固まっておったが、二人とも 昔から妹が欲しいと言うておったし、母さんが死んで それも叶わんはずじゃったのに ヴィオが妹になってくれたからな。

驚きはするじゃろうが喜ぶと思うぞ」


奥さんが亡くなってから落ち込んでたお父さんの記憶があったからこそ、ルンガさんは余計に驚いてたんだろうとお父さんは言う。

そう言えば、私が来たばっかりの頃 村の人たちからも「元気になった」って言われてたもんね。



自宅に戻って昼食の準備が整った頃、お兄ちゃんたちが戻ってきた。


「ただいま~、ああ 我が家は本当に久しぶりだ。

ふふっ、そこに可愛い妹が出迎えてくれるなんて嬉しいね」


「マジで見間違いじゃなかった。

お~、さっきはビックリし過ぎて挨拶できなくて悪かったな。父さんの次男でルンガだ。よろしくな」


「うん、ルンガお兄ちゃん、ヴィオだよ、よろしくね」


膝をついて目線を合わせながら挨拶をしてくれたルンガお兄ちゃん、優しいんだね。

恐る恐るという感じだけど 両手を広げてくれたから 胸に飛び込んでギュッとしがみついたら、優しくそっと包んでくれた。


「やべぇ、可愛い……」


「ね、こんなに小さい子 そうそう接する事もないから貴重だよね。しかも僕たちに怖がらないとか 貴重だよ」


「ほれほれ、お前らも荷物を置いて着替えてこい。飯にするぞ」


可愛いもの好きというのは事実だったようで、ルンガお兄ちゃんも嬉しそうにしてくれました。兄弟二人で顔を見合わせて笑ってるけど、お父さんに言われて慌てて荷物をお部屋に置きに行ったよ。


「父さん、部屋の扉どうしたの?」


「ああ、その部屋はヴィオの勉強部屋と着替えの部屋にしておったからな、扉が重くて一人で開けれんから外した」


「それなら仕方ないね」


いつも2人で食べてたリビングのテーブルも、4人で座ればちょっと狭い。だけど幸せが詰まってる感じで楽しい。

お兄ちゃんたちが帰ってくることが決まって、私の勉強机と着替えの入った箪笥は 場所を移動している。勉強机はリビングに、着替えの箪笥はお父さんと一緒の寝室に入っている。


お兄ちゃんたちも自室が其々にあったけど、トンガお兄ちゃんのお部屋は 今倉庫になっていて、ルンガお兄ちゃんのお部屋に二人分のベッドが置いてある状態だ。

一時帰宅だし、旅の間は野営でも 街での宿屋でも 3人同室だったから問題ないんだって。




「で、ヴィオの事はギルドで聞いてきた。

お前小さいのに大変だったんだな。びっくりしたけど 父さんの元に来てくれて良かった。これからヴィオは俺の妹だ。よろしくな」


「うんうん、6歳なのに銅ランクの冒険者ってのも驚いたし、父さんと風の季節はダンジョン巡りをしてたって聞いて、どんなスパルタ特訓されてるんだって心配になったけど、そんな事があったなら 自衛の力を付けるのも納得だったよ。大変だったね」


食後の団欒中、お兄ちゃんたちからそんな事を言われた。

やっぱり私たちが居なくなった後、どういうこと?ってなったんだろうね。

どうやら学び舎が終わって戻ってきた子供達からも色々聞いたらしくて、とても心配されてしまったよ。


「ああ、その事なんじゃがな、ヴィオは ルエメイのダンジョンでも単独踏破できるだけの実力がある。儂と二人でダンジョンに入っておるが、実際に中で魔獣を討伐するのも 素材を採集するのも ヴィオが一人でやっておる。

儂は危険がないかの確認の為に側におるが、余程の事が無いと手を出さんようにしておるからな。


今は初級とウレアの中級にしか入っておらん。儂が一緒におるとはいえ、ヴィオの見た目がこうじゃ。流石に人が多い中級や上級には入れんし、良くない輩が集まりそうじゃろう?

ただ、お前たちが一緒じゃったら ヴィオがおっても入りやすいと思ってな」


「え?まさか……」


「父さん、それって……」


お兄ちゃんたち二人が ギギギ と固まったような表情でお父さんを見つめる。 このままじゃ危険だから駄目だって言われちゃう?


「お兄ちゃんたちと一緒に 中級ダンジョン巡りをしてもいい?」


両手を組んで 上目遣いでウルウルしながら お兄ちゃんたち二人を見つめる。

普段あんまりしないけど、ここぞという時に使うあざとい技だ。ドゥーア先生を学園に戻らせるとき以来の使用だけど どうですか?


「うっ……」


「う~ん、え~~~。そうだな、どれくらいの実力かの確認もしないと何とも言えないから、明日 一緒に森に行こうか。

無理だと思ったら 優しいダンジョンから入るのでもいいかい?」


ルンガお兄ちゃんは 直ぐに目を逸らしたけど、トンガお兄ちゃんはしばらく悩んだ後、実力の確認をしたいと提案をしてくれた。やったね!


遂に アルクお父さんの息子たちが帰ってきました。

お兄ちゃんたちとも初対面です

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