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第134話  メリテント大街 その1


昨日の夜は 女将さんの計らいにより 食堂から遠い部屋にしてもらったからか、階下の喧騒に安眠妨害されるという事もなく、ぐっすり眠ることが出来た。

というか、私今まで眠れなかった日がないのではなかろうか。どちらかというと昼寝もしているし、寝すぎな気がするよ?

まあ、お父さんは「子供は寝て育つもんじゃ」って言うから強制的に昼寝があるともいうけど。



「おお、村娘に見えるな。可愛いぞ」


お着替えをしたらお父さんが褒めてくれる。

最近のダンジョンでの活動中は『強くなる』の長ズボンスタイルだったから、休息日に『はじめての冒険』のショートパンツスタイルで行動してたんだよね。

武器のお手入れとか、ダンジョンで必要な物資の購入がメインだから『村娘』のスカートスタイルになるのは久しぶりなのだ。


髪もお父さんがハーフアップにしてくれて、準備万端!

今日は街の観光がメインなのだ。

街道では 魔獣と出会うこともなく、追い風走法で思った以上に早く到着したので ルエメイ村の女将さんに持たせてもらったお弁当と 保存食で足りちゃったんだよね。

お陰で お手入れした武器を使うこともなく、この町に到着したからと言って武器屋に点検に出す必要がないという事だ。


「お父さん、お店もいっぱいあるかな?」


「勿論じゃ、生活に必要のない物を売っておる店もようけあるぞ」


サマニア村もそうだけど、今までの村も 生活に密着するお店はあるけど、贅沢品のような店はなかったもんね。そういったお店もあるんだろう。


「魔道具屋もあるぞ」


「行きたい!」


思わず飛び跳ねてしまい、ココが宿だと思い出し 慌ててベッドに座る。危ない危ない。

私の眼鏡や髪飾りのような 魔道具は、王都から取り寄せてくれたらしいけど、どんな魔道具があるのかとても楽しみだ。

気も漫ろに朝食を終え、準備が出来たら早速街に繰り出す。

意気揚々と出たは良いけど、人、ヒト、ひと……。

私が小さいこともあって、目の前は足とお尻で観光なんて全くできやしない。

お父さんもちょっと人の多さに驚きながら 私を抱き上げてくれた。


「街ってこんなに人が多いんだね」


「あ~、うっかりしておったが、この時間は冒険者が依頼を受けて出かける時間じゃし、店が開いて 買い物に出る人が多い時間じゃったな。

いつものダンジョンに行くときと同じように動いたから、ゆっくり観光をするには早すぎたな」


なんと、そういうことでしたか。

それこそ通勤ラッシュの時間に うっかり観光客が入り込んじゃったってやつですね。そりゃ動きづらいね。冒険者も 依頼内容によっては もっと早い時間から活動しているようだけど、この街の周辺だと そこまで大変な依頼はないから、こんな時間からでも十分活動できるらしい。

勿論 護衛依頼とか、討伐依頼で遠出が必要な人は もっと早朝、ギルドが開いたと同時に活動を始めてるみたいだけどね。


私たちはダンジョンでの行動がメインで動いていたから 朝が早い。

いつもよりはゆっくりしたけど、それでも街の普通の人たちがバタバタする時間に重なってしまった。


「この時間じゃったら 朝市も開いておるじゃろうし、明日は宿での朝食じゃなく 朝市での朝食を食べてみるか?」


お父さんに連れて行ってもらった場所は、宿から歩いて10分くらいのところにある噴水がある広場で、テントのような簡易的な 雨や日差しを遮る為の屋根だけがあるお店が沢山あった。


「わぁ~!凄い!」


海外のマーケットというのか、マルシェというのか、そんな雰囲気が漂う場所で、色とりどりの果物を売っている店や、お野菜を売っているお店、香辛料のようなものが入った瓶が並んだお店がびっしり並んでいる。

所々に 屋台もあり、良い匂いが辺りに漂っている。朝食を食べたばかりだからお腹がいっぱいで食べれそうにないけど、明日の楽しみが出来た。


「明日は腹ペコで来ないとだね!」


「おや、今日は食べてきちまったのかい?」


屋台を眺めながら お父さんに宣言してたら、スープを売っているおじさんが声をかけてくれる。


「うん、こんなすごいおっきな街に初めて来たの。お宿でご飯食べてきちゃったから、明日はお腹を空かせて屋台で食べたいの!」


「ははっ、そりゃいいな。じゃあ明日待ってるぞ」


おおっと、この店で買うと決めた訳じゃなかったんだけど、この店で購入することが決まったみたいになっちゃったぞ?これが商売人の技なのか!凄いな、街の商売人!

まあ、でも凄くいい匂いで、お父さんと匂いに釣られるように来てしまったから 間違いでもないか。


屋台が並ぶここだけでもお店の種類が多く とても楽しめるんだけど、この街を出たらサマニア村に帰るだけだし、食材は豊富に鞄に入っているから買うものがない。

香辛料もルエメイのダンジョンで沢山採集してきたしね。


ということで、噴水広場を抜け出し、少し人混みが減った大通りをお父さんと手を繋いで歩く。

村ではそんなに人が多くないし、村人以外はそんなに多くないから 私という子供は目立っていた。

周囲の大人たちも気にしてくれていたから、お父さんと多少距離があって歩いてても問題なかったんだよね。


だけどここは街で、街に住む子供もいるし、とにかく人が多い。

お父さんと手を繋いでないとはぐれるのは間違いないと思う。

まあ、いざとなれば マッピングでお宿に帰れるし、お父さんの魔力は覚えているから 直ぐに探し出せるけどね。


「おお、ここじゃな。ヴィオ、魔道具屋じゃ。入ってみるか?」


噴水広場から15分ほど歩いたところに、大きな鍋の絵の前にクルンとなった杖がクロスしている看板が掲げられたお店があった。

鍋は何となくわかるけど、何で杖?

その興味もあるけど、まずは店を見てみたい!という事で早速店内に入る。


カラン カラン


「いらっしゃ……、あ~、小さい子供があんまり触らないように注意しといてくださいね。壊した物は買取になりますからね」


ドアベルの音に カウンターにいたお姉さんが顔を上げるけど、私の姿を見た途端に嫌なものを見たって感じに顔を歪めて注意をされた。

ここまでの村では恐縮するレベルで可愛がられてたから ちょっと驚いたけど、高額商品を取り扱っている店に5歳児が入ってきたらそう言ってしまうのも仕方がないと思う。


「は~い」


でもちょっと腹立つから 返事だけして愛想は売らないけどね。

お父さんは ヤレヤレといった感じではあるけど、特段何も言わず 私の後ろに立って 一緒に商品を見ている。

入口から直ぐの場所には 杖が沢山立てかけられていた。


「お父さん、この杖って?」


「魔法使いをメインでやる者が使う魔道具じゃな。店の看板にもあったじゃろう? 魔法使いの杖は魔道具であることが多いからな」


おお、早速看板にある杖の理由が判明したね。

私は魔法を多く使うけど、杖は使用したことがない。

不得意属性がないからともいえるけど、壁に掛けられた杖には〈火属性:サラマンダーの魔石使用〉〈水属性:ブルーワームの魔石使用〉などと属性と何の魔石を使っているのかが書いてある。

値段は200ナイル以上で書いてあるから20万円以上という事だ。それが高いのか安いのかは分からないけど、書いてある魔獣にまだ会ったことがないから、その魔石を持つ魔獣の強さも加味して値段が違うのだろう。

どのみち要らんけど。


杖を眺めた後は 見覚えのある薬瓶が並んでいる。

だけど値段が……。これがサマニア村価格と、他の町での価格差なのか?

これは、村で購入しとかないと余計な散財になっちゃうね。

値段だけ頭にいれて、次の棚へ。


ダンジョンでは使わなかったけど、森の野営時に使う〈魔獣除けのお香〉が売ってた。お父さんが使うお焼香タイプのは 布袋に入れられていて、グラム数で値段が違うようだ。

棒は長さが一律なのか、筒のようなものに入っているようだ。10本入りしか売ってないけど、使用期限があるなら時間停止機能のない鞄だと困っちゃうね。


何に使うのか分からないものもあったけど、お父さんが説明をしてくれるので 面白く見て回れる。

ランタン的なものとか、装備の補修が楽になる道具とか、保温機能のある水筒とかだ。

うん、改めて サマニア村が凄い村だったんだと分かったね。

魔道具屋じゃないのに、普通の服屋だと思ったのに、サイズ調整が出来る服と靴だし、鞭も魔力を流して長さも属性も変更できるし、水筒も雑貨屋さんでお鍋とかと一緒に売ってるけど、コレよりも小さいし 持ちやすいけど保温機能は付いてた。

確かに、今考えれば 水筒は お父さんが伝えてから 店の奥から出してくれたし、そもそもギレンさんの店は一見さんお断りだ。

素朴な村だと思ってたけど、ヤベエ職人の集まりだったんじゃない?

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