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第132話 休息日


ギルドを出た後は、武器屋さんに行き 双短剣と 包丁代わりにしていた解体ナイフのお手入れをお願いし、スパイスを入れるための空き瓶を雑貨屋さんで購入。

他のお買い物は 村を出る前で良いだろうという事で お宿に戻った。



「ただいま戻りました~」


ガラ~ン バタバタバタバタ 


屋台で昼食を済ませてからお宿に戻れば、多分お掃除とか 夕食の仕込み中なのだろう。受付にも、食堂の方にも人の気配はない。

まあ、ダンジョンに入っている期間も含めてお宿をとっているから 鍵は持ったままだし、お部屋に戻れるんだけどね。

一応大きな声で挨拶してから階段を登ろうとしたら、上から 何かを落とす音、その後に階段を駆け下りてくる音が聞こえたから、ひとまず玄関口で待ってみる。


「あ、あぁ、空耳じゃなかった。戻ってきたんだね!」


駆け降りてきたのは宿の女将さんで、私の顔を見た途端 嬉しそうに破顔し、ギュッと抱きしめてくれた。ひとしきり怪我の確認をされてから解放されて、夕飯を楽しみにしていなさいと言われた。


ギルドでもそうだったけど、そんなに心配させた?

でも初級ダンジョンだよ? 中級も一つ入ったけど、どこでもココまで心配されたことはないからびっくりである。

勿論 門番さんも、女将さん達も心配はしてくれてたけど、ルエメイ村は特にって感じだ。

森だからかな?

なんだかくすぐったい気分だけど、悪くない。


お父さんと一緒にお部屋に戻り、久しぶりのお風呂に入る。


「ふわ~~~~、気持ちいい~。生き返る~~~」


毎日クリーン浴はしていたから 汚れてはいないし、シャンプーが泡立たないなんて恐ろしい事にもならないけど、やっぱり湯船に浸かるっていうのは別物だよね。

いつもは烏の行水かと思うくらいに早いお父さんも、今日は流石にゆっくりお風呂に入ってた。


「ダンジョンの中では装備を外すことが早々なかったからなぁ、ヴィオのこの色を久しぶりに見たな」


ブラッシングしながら ゆっくり乾かしてくれるお父さん。

自分でやるよと言ったこともあるけど、お父さんの癒しタイムらしいので お任せしている。出会った当時からお父さんがこうして乾かしてくれているんだけど、だんだんブラシの素材とかにも拘り始めてて、今使っているのは ビッグボアの毛から作られているブラシだ。

素材の討伐から、持ち手の木を選ぶことまで試行錯誤された お父さんの手作りです。


「クリーン浴だけだと 髪がちょっとパサついてきてたけど、お父さんのブラッシングで復活だね。凄いサラサラだ」


自分でも久しぶりに見るピンクの髪は、部屋に差し込む夕日の色と相まって、赤くキラキラして見える。

指を通せば サラサラと引っかかることなく落ちる。

お父さんこだわりのブラシで手入れされているだけある。

最後にハーフアップに纏めてもらい、色変えの魔術具を付けてもらえば完成だ。


「綺麗な髪じゃのに、隠さないと危険なのが腹立たしいのぅ……」


「ふふっ、私がもっともっと強くなって、どんな敵が来ても倒せるようになったら外すからいいの。

でも、私はお父さんとお揃いの今の色も好きだよ? 親子に見えるって言ってもらえるし」


買い物に行った時とか「お父さんと仲がいいんだね」とか「仲良し親子だね」って言ってもらえるのは 凄く嬉しいのだ。

お父さんにそう言えば、抱き上げられてギュッとされた。





「女将さん、旦那さん、お弁当と保存食ありがとうございました。とっても美味しくて、全部綺麗に食べちゃった」


夕飯後、キッチンに姿が見える旦那さんと お茶を出してくれる女将さんにお礼を言えば、旦那さんが真っ赤な顔して引っ込んでしまった。


「あはは、喜んでくれてありがとうね。2週間も入るんじゃ もっと多く持たせてやれば良かったね。

それに、こんなに沢山果物をもらっていいのかい?

これだけ新鮮なんだ、ギルドに売れば 結構いい値段になるよ?」


旦那さんは照れ屋さんらしく、身体だけ隠して 手を振ってくれた。可愛い。

女将さん達にも お土産として果物をいくつか持って帰って来たんだよね。新鮮なもぎたて状態の木の実に非常に驚かれたけど、お父さんのランクと 腰の鞄を見て納得してた。


「うん、ギルドにも持って行ったし、これは女将さん達のお土産の為に採集してきたやつだから、貰ってくれると嬉しい。今日も美味しいご飯をありがとう」


「あんた、聞いたかい?

お父さん、こんないい子に育って良かったねぇ」


「ああ、ヴィオは儂には勿体ないくらい良い子なんじゃ」


女将さんが大興奮しながら お父さんの肩をバシバシ叩きながら、奥に引っ込んでいる旦那さんにも声をかけている。

どの世界も お母ちゃんって逞しいというか、なんというか。

うん、お母ちゃんが元気な方が うまく回るって事なのかもしれないね。





ゆっくり眠った翌日は、朝から野営具のお手入れだ。

テントと毛布は【クリーン】をかけた後に 天日干し、昨日ギルドに素材を提出したことで 返却された保存袋も同じようにしておこう。

マントや装備も一通り点検し、汚れや修復が必要じゃないか確認しておく。

まあ、結界鎧を常に纏っているから、マント以外がどうにかなることはないんだけどね。


午前中にゆっくりそんな事をしていれば、時間が立つのも早い。

昼食をとってから ギルドにお出かけだ。




「こんにちは~」


「あら、待ってたわ~。昨日のお部屋にどうぞ~」


あれ?お会計だけだから 受付カウンターで受け取るだけだと思ったのに、わざわざ2階に行くの?

私はそう思ったけど、お父さんは特に疑問に思うことはなかったらしく、サッと抱き上げて2階に移動した。


「すべて査定が終わりました。薬草、香辛料、植物素材、果物、全て鮮度が抜群で 最上位での査定額を付けています。

魔獣素材もこれだけの量を納品して頂けて感謝しますわ。こちら査定額の詳細です、ご確認ください」


会議室には素材が無く、何故この部屋に?と思ったけど、テーブルに着いたところで説明が始まったから 私も詳細の用紙を覗き込むだけにしておく。

ずら~っと書かれた文字は素材の名前と 個数、単価と小計だった。

個数の横に(A)と書かれているのは最上という事なのかな?

7階と8階の同じ素材で(A)と(B)になっているのは、質の違いなんだろうね。


お父さんは指で辿りながら、数があっているのかを確認しているっぽいけど、私は単価に驚いている。

薬草の価格がおかしいのだ。

いつものサマニア村で採集していたのと同じカイフク草やマリキ草も採集してきているんだけど、その単価が5倍もある。

聞きたいけど、今聞いていいのか分からないから黙ってるけど、ホーンラビットの角も高いよ?ダンジョン産だから高いの?

こんなにもらったらお金持ちになっちゃうよ?


お父さんは全部を計算して、大丈夫だとスタッフさんに告げ、預かり証と交換する。


「現金はお振込みでよろしいでしょうか? お父さまのカードとヴィオさんのカードに分けますか?」


「ああ、じゃあ面倒をかけるんじゃが、半分を現金で、残りの半分は娘のカードに振り込みを頼めるか?」


「畏まりました、それではヴィオさん ギルドタグをお預かりしてもよろしいでしょうか」


スタッフさんに首から下げたタグを渡せば 少し待っててほしいと出て行ってしまった。

部屋にはお父さんと二人だけ、気になることは今なら聞いていい?


「お父さん、これお値段間違ってない? 私たち貰い過ぎじゃない? 大丈夫?」


「ん? どこかおかしかったか?」


「ほら、ココ、カイフク草とか単価がおかしいんだよ。魔獣の素材も、ね?

ダンジョン産は高くなる?」


お父さんの手元にある詳細用紙を指さしながら 説明していく。果物とかはサマニア村に無かったから比較できないけど、同じ素材がこんなに高いとか、10本単位で書くところを1本単位で書き間違えてない?


「あ~、そうか、そうじゃな。

あのな ヴィオ、サマニア村は特殊な場所じゃと前に話したのは覚えとるか?」


お父さんが頭に手を当てて、アチャ~ってなってる。

特殊な場所ってのは お山から流れてくる魔素が多いから、薬草とかが取り放題だし、魔獣も大きいってやつだよね?


「そうじゃ、じゃからあそこでは薬草は素材採集の練習ができるくらい豊富じゃし、その分回復薬の販売料金なんかが安い。他に防具や武器なんかも 村民相手の店は破格なんじゃ。

買取が安い分、住民に還元できるようにっちゅうことじゃな。

薬草なんかも他じゃこれが通常買取価格じゃし、回復薬ももっと高いぞ。

リリウムのところで作ってもらった冒険者装備も、当り前のように魔獣素材を使っておるが、王都や他の国で同じレベルのモノを作ろうと思ったら、金硬貨が必要じゃろうな」


キンコウカ……って、100万ラリ以上って事?

ええええ?そんなすごいものを作ってもらってしまってる? え?5歳児のデビュー衣装ですよ?


「あの村の周りじゃ 然程珍しい素材でもないし、村民が採集に行けるだけの力がある。勿論他所から来た冒険者が購入する店はそれなりの値段がするし、ギルドでの買取は他からの冒険者は安いから嫌がる」


そりゃそうだろう。ホーンラビットの角も1本20ラリだったけど、この詳細用紙だと1本100ラリだ。大体他のものもサマニア村の5倍の価格になっている。

しかも村のホーンラビットは ダンジョン産の倍以上の大きさだし、素早さも凶悪さも増しているのに、買取価格が1/5じゃあ 売らないよね。


「そしたら他の町から移動してきた冒険者が移住するって中々なさそうだね」


人口減少とか考えないのかな?

冒険者になる子供達も多いし……いや、でもお父さんもそうだけど ランクが上がって戻ってくるなら 大丈夫なのかな。

お父さん曰く、森の奥に行けば相当強い魔獣もいるし、力のない冒険者が定住しない方がいいんだと。だから風の季節に 沢山冒険者が来たとしても、定住する人は殆どおらず、漁の季節が終わったら 次の年までは来ないらしい。

今回は1組 新しく定住しそうだって書いてたけど、私たちが戻る頃にはいなくなってるかもだね。

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