第129話 ルエメイ遺跡ダンジョン その7
朝イチは 魔力切れから始まったけど、結果的には 予定時間を あまり過ぎることなく セフティーゾーンに到着することが出来た。
テントを張って、野営の準備を終えてから、森の果てに向かって歩いてみることにした。
マッピングしていたから迷うことがなく行けたんだけど、セフティーゾーンから15分くらいまっすぐ歩いたら マッピング上のカーテンエリアに到着した。
だけど、目の前には森が続いていて、そのまま真っすぐ歩いていけば、マッピング上の左端にいた筈が、右端にいることが分かった。
「おお!お父さん左端から右端に来たよ」
「おお、これは面白いな」
お父さんは セフティーゾーンに到着してから、このエリア一帯だけをマッピングすることに成功している。私が使っている空間把握型のではなく、土魔法での【索敵】だからちょっと違うみたいだけどね。
でも 同じように左端にいた筈の自分が、右端にいるというので、境目で 右に行ったり、左に行ったりして 二人で少し楽しんでしまった。
これは 人が多いダンジョンでやってたら かなり変な人扱いされるやつだね。
うん、初級ダンジョンで経験しておいて良かったよ。
一応 左右両方の境目部分から5分くらいの木に赤い布を括りつける作業もしておいた。
セフティーゾーンに入ってから 外に出ることはあまりないみたいだけど、素材採集とかに出かけて迷い込んだら危険だからね。
「さて、今日はこれで終了にしておこう。今朝は魔力切れも起こしたし、まだ万全とは言えんかもしれんからな」
「うん、6階は 素材も無いし、明日は7階までまっすぐ進んで、セフティーゾーンを目指すんだよね。
で、そこを拠点に 素材採集をする。で合ってる?」
6階は森という場所に慣れるためか、魔獣はいるけど 特に薬草類の素材は無いとされている。
果物系があるのは次の7階と8階、薬草系は7階以降、食材となる素材は8階と9階にあるらしい。
薬草系が7階以降全てにあるのは、怪我をしたときの為だと思う。
果物系が7・8階なのは、7階まではオークが居ないからだと思う。
危険が少ない状態でも貴重な果物を取る機会はあるよ。的なダンジョンの優しさなんじゃなかろうか。
食材は……、そんなに必要があるものでもないだろうけど、ダンジョン産を欲するんだったら 危険を承知で来やがれ的な挑戦状???
いや、ダンジョンの考えなんて分からんね。ただの妄想です。
守られた場所での野営は特に何も起こることはなく(起きたら怖い)、無事に朝を迎えた。
朝食を食べたら早速出発である。
起きたら結界にびっしり魔獣が張り付いてました。なんて怖い話を読んだ記憶があるけれど、ここのセフティーゾーンはどういう仕組みか分からないけど、魔獣が近寄らないので 特にゾーンから出て直ぐに襲われるというイベントも起きなかった。
セフティーゾーンは6階の2/3を過ぎたあたりにあったので、1時間ほど歩けば 7階に続く階段に到着した。
今のところ戦利品はホーンラビットの角と、フォレストスパイダーの糸位である。
7階で美味しい果物を沢山ゲットできればいいな。
7階に下りて、最初にするのはマッピング。
これは6階で失敗しているからもう大丈夫。足首位の高さだけに留めた魔力を薄く広く延ばしていき、この階全体のマッピングを行う。
「うん、6階よりは広くなってるけど、1・5倍まではいかないかな。セフティーゾーンは 丁度中間地点くらいにあるよ。
う~ん、ココも1か所だけだね。ああ、階段が端っこじゃないね。セフティーゾーンからあっちの端に行くまでの間くらいにあるから、全距離で考えると6階と同じくらいかも」
多少広くなっているとはいえ、あまり変化はない様子。
マッピングが出来たら、後は 自分の周りに【索敵】魔法を展開するだけだ。
この階からはイエロースネークも登場するので、木の上にも注意が必要だ。なので、木の高さ2/3までは【索敵】を展開しておく。
「あ、アポの木だ!」
森を進んでおよそ15分、赤と緑の実を付けた木を発見。同時に 木を揺らして実を落とそうとしているゴブリンも発見。
「【エアバレット】」
3体いたので、一気に倒すべく 風の散弾をお見舞いする。
空気弾が木の実に夢中になっていたゴブリンの眉間に命中。布だけを残し消えて行った。
「【エアカッター】」
アポの木に近付こうとしたところで、【索敵】に引っ掛かる魔獣を発見。木の上を見れば アポの木の隣の木の上から こちらに大口を開けているイエロースネークと目が合った(気がする)
普段の森なら皮を剥ぐためにできるだけ傷を少なく倒す相手だけど、ダンジョンだから安全対策も兼ねて首チョンパです。
キラキラしながら落ちてきたのは イエロースネークのドロップアイテム、ヘビ皮と1センチほどの薄黄色の魔石だ。
「おお!お父さん見て! 魔石と皮がでたよ」
「おお、ここのダンジョンでは この蛇くらいしか魔石を落とさんからな。良かったな」
蛇皮は 全身のモノではなく一部なんだけど、綺麗な長方形に切り取られているのは何故なんだろうね。誰が加工しているのか 気になるけど、これもダンジョンの不思議なのだろう。
アポの木の周辺を索敵したけど、とりあえず近くに魔獣はいないので、取れそうな実を蔓草魔法でもいでいく。ああ、アポの実はまさにリンゴの見た目で、味もリンゴ。ただ、何故か赤い実と緑の実が同じ樹になる不思議果樹である。
蔓草魔法なので、上の方の実も難なく採れた。木の2/3程を頂いて 先に進む。
果樹の近くには必ずイエロースネークが居るのは、果樹に釣られて寄ってくる ゴブリンや冒険者を狙っているからだろうとお父さんが教えてくれた。
餌としては最高に美味しそうな私が来たら、そりゃ 大口開けて襲って来ちゃうよね。
普通はもっと狡猾に、いつの間にかそっと背後に近付いているというのがイエロースネークらしいんだけど、このダンジョン独特なのか、私が美味しそうすぎるのがいけないのか、果樹の下に到達すると もれなくお口カパーで迎えに来てくれるので、全く討伐に困ることはなかった。
まあ、そっと近づいてきたところで、ダンジョン内では常に【索敵】しているから気付けるんだけどね。
ウルフや ホーンラビットは果樹に興味がないらしく、歩いている道中でエンカウントするんだけど、ゴブリンは 大概果樹の根元で見つかる。そして 果樹の上からイエロースネークというルーチーンとなっていた。
ちなみに、イエロースネークを倒していたら、蛇皮じゃなくて、牙が出てきた事もあった。
確かに 素材の中には牙も書かれていたけど、ドロップアイテムが複数ってこともあるんだね。
ゴブリンは……、腰布以外何も持ってないからしょうがないのか。
4時間ほどダンジョン内を歩けば黄色い印が増えてきて、セフティーゾーンが見つかった。
「思ったより早く着いたな。丁度昼頃じゃし 飯にするか」
「うん、お腹ペコペコ。あっ、お父さん お昼ご飯の後に さっき採った果物も食べていい?」
「おお、そうじゃな、食べてみるか」
ここに来るまでに結構な種類の果物を採集してきた。
アポの実、キーウィの実、ネクターの実、ペアーの実である。
まあ、名前が違うだけで 見た目はよく知っている果物だったので 食べるのが楽しみだ。
ダンジョンの作物は、魔獣のリポップと同じで 採集してもリポップ時間と同じに復活するらしい。最初に気持ち残して採集した私に お父さんが教えてくれたので、2本目以降は全部採集してしまっている。
ボス部屋から戻ってくるときに またしっかり採集するんだ~。
昼食後に お試しでアポの実を食べる。お昼もしっかり食べてるから、6等分した2切れでお腹いっぱいだったけど、甘酸っぱくて凄く美味しかった。
「お父さん、夜は青い方を食べたい」
「青?ああ、緑色の方か?赤と味が違うか見てみたいんじゃな?」
ああ、緑を青って言っちゃうのって 日本人ならではなんだっけ。青い海とか青い空を見ても「緑の海」とか「緑の空」とは言わないのに、何で緑を青って言うんだろうね……。もう調べようがないけどさ。
アポの実に関しては、二つの味が同じなら 別にいいんだけど、依頼表にも色の指定があったから きっと味が違うと思うんだよね。
お料理上手なお父さんだから、興味があるらしく、夜のおやつは青いリンゴになりました。