第14話 ギルマスたちとの相談 その3
「魔道具に関しては 購入できるんじゃったら儂が買うから教えて欲しい。」
そうサブマスに依頼したところで 腕の中のヴィオが身動ぎをした。
コアラやゴリラの子供らは 小さいときは親にしがみ付いて寝ることがあると聞いたことがあるが、今のヴィオもそれに近い。
ただ、儂の体が大きすぎるから両手を伸ばしてもしがみ付くことが出来ないんじゃろう。
膝に乗せて片手で抱きしめておったからか、腕にしがみ付いておる。
「かわいいな……。」
「えぇ、こうして寝ている姿は5歳の子供ですね。」
二人もヴィオの姿を見て呟く。
そうじゃろ、そうじゃろ、ヴィオは可愛いんじゃ。
こんな可愛い娘を置いて出奔した父親は阿呆じゃな。
和みかけたところで もう一つの相談事を思い出した。
「おぉ、そうじゃ。
ヴィオが川で流れておったといったじゃろ?その時 身に着けておったんは白いワンピース1枚とペラペラの肩掛け鞄だけじゃったんじゃ。」
「は? 靴は?……あぁ、流されたのか。」
「鞄……ですか?」
「靴は捨てられる時に “浮浪者に見えるように” と捨てられたらしい。
サブマス、そうじゃ、鞄じゃ。
ぱっと見は丈夫な布で作られただけの汚れた鞄じゃったから、多分浮浪児らしくて良いと思われたんじゃと思うが……。
マジックバッグじゃった。」
「「…………は?」」
「多分な。魔力の感じからするとそうじゃ。ダンジョンで出たもので同じ感じがあった。ただ、儂が触ってもただの布袋じゃったから、多分 使用者制限がかかっておるんじゃと思う。」
「いやいやいや、そんな付与魔術かけられるって……。あぁ、ヴィオの母ちゃんか?色変えの魔道具と言い、どんな母ちゃんだったんだ?」
「興味深いですね。ヴィオさんが使えば中にあるものを取り出せますよね。
そうしたら何か両親に繋がるものが入っているのでは?ヴィオさんは知っているのですよね?」
拾った翌日にヴィオ自身が鞄を触って何も入っていないと確認したことでワンピースと一緒に箪笥に仕舞ってある。あの時はマジックバッグだと思っておらんかったからな。
マジックバッグであれば、ヴィオが魔力を流して触ることで使うことが可能になる。
明日一緒に確認してみるか。
「まぁ、何にせよ アルクが保護してくれて良かったじゃないか。
一先ずは明日……は休みだから木の日から 学び舎に通うんだろ?
お前が送り迎えするんだろうから、その時にでも分かった事を教えてくれればいい。」
「そうですね。私は明日には魔導学園にいる彼に連絡を取りますから、分かり次第お伝えしましょう。
ヴィオさんの魔法練習は、そうですね。学び舎にいる時はアリアナに基礎を学んでもらいましょうか。彼女は水と木は得意属性ですし、聖も切り傷を治す程度の適正は有ります。
ある程度学べたら、私が他の属性も教えましょう。人の子では水、風、木はある程度使える者も多いですから、ギルドカードにもその3つ……いや、火も入れて4つを載せておけば優秀な魔法使い。という事になるでしょう。」
二人が明日以降の事を提案してくれる。
そうだな。木魔法だったら儂も教えることが出来るし、体術なんかも教えることが出来る。
ヴィオにはぬくぬくと育ってほしいと思うが、多分能力的にも自衛力をつけてやった方が良さそうじゃ。
無理はさせんように、楽しいと思えるように、さて どうしようかの。
ギルマスたちとの相談は3時間程続き、後は追々という事になった。
泣き疲れたヴィオが起きる様子はない。
「ずっと家におったんが、今日は朝から村をアチコチ見て回ったから疲れたんじゃろ。」
「いやいや、ずっとお前が抱っこしていたって噂だったぞ?」
「幼子にとっては 見知らぬ場所で 見知らぬ人々との出会いは それだけで精神的にも疲れるものですよ?冒険者登録で魔力も動かしていますし、明日の朝まではぐっすりでしょう。」
おぉ、確かにそうじゃな。
ヴィオにとっては大冒険の1日だったかもしれん。
しっかりした受け答えが出来るから、ついつい5歳ではないような気になってしまっておったが、この小さな体で頑張ったんじゃな。
ギルマスたちには、また後日。という挨拶を残して、ヴィオを抱っこしたまま家路についた。