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第115話  ケピマルダンジョン その1


さあ、いよいよ4か所目のダンジョン、ケピマル洞窟ダンジョンに挑戦するよ。

ここは10階層の初級ダンジョンなので ダンジョン泊はせず、2日潜って1日休みの いつものスタイルで潜る予定。


今までのダンジョンは ウルフ、コボルト、ゴブリンが多くて、ノーマル種と 上位種くらいの違いしかなかったんだよね。

ドロップアイテムも不用品ばかりなので、3か所もダンジョンに入った割に、戦利品は体力回復薬が3つ(パニックルーム×1、ウレアのボス報酬×2)、魔力回復薬が2つ(コニベアのボス報酬×1、ウレアのボス報酬×1)だけという、なかなかショッパイ結果なのだ。


まあ 休みの日に 村周辺の森に入って 魔獣討伐をしているから、お肉の仕入れは無料だし、そこで素材も確保しているから、サマニア村に戻った時には買取してもらうつもりなので、大きな出費ばかりという訳ではないと思う。


ああ、そうそう、今はダンジョンで訓練をしているようなものだから、ここでの魔獣討伐の報酬をギルドに提示する予定はないし、この期間に森で採集した魔獣たちの素材は買取してもらうけど、それも常設依頼のものを消化することはせず、単純に買取をしてもらうだけと決めている。

銅ランクから銀ランクに上がるのは、やっぱり洗礼以降じゃないと色々煩そうだし、ってのが お父さんやギルマスたちの総意だったんだ。

年齢だけは時間がかかるからね、こればっかりは早送りすることもできないし 仕方がない。

子供だからこそ、ぐんぐん成長しているのが分かるし、魔力も着実に増えているのを実感しているからね。

今は爪を研ぐ時機ってことだね。





さて、早速ケピマルのダンジョンに入るとしますか。

ここも例に漏れず、お山にポッカリ入口がある洞窟タイプ。

まあ人気が少なく、他の冒険者と被らない場所を選んでいるからこそ似ている場所になるんだよね。


ちなみに、平民たちは新年に全員が1歳年を取ることになっているんだけど、7歳の洗礼式は土の季節()の間にすることが多いみたい。

で、洗礼を終えたら冒険者登録をする子が増えるので、そこから1~3か月で 錫→青銅→銅とランクを上げるみたい。

だからココもそうだけど、アンナープ村などの初心者ダンジョンは水の季節()火の季節()に新人冒険者が増えるんだって。


初心者ダンジョンで練習を積んで、秋には中級に入れるようになる。

そうなれば初心者ダンジョンを訪れる冒険者は一気に人が減るから、風の季節()はガラ空きなのだそうだ。

お父さんたちがそこまで狙っていたのかは不明だけど、丁度良かったよね。


洞窟の中に入ればいつも通り【索敵】の魔法を展開する。

1階は相変わらずのスライムオンリーなので、2階への階段を確認したら スライムは無視してまっすぐ進む。


2階でまた【索敵】を行えば、結構沢山の小動物がいるのが分かる。

ただ、会ったことのない魔獣だから 形だけでははっきりしない。


「お父さん、小さいのが多分2種類……だと思う。チョロチョロ動いてはいるけど、多分何かを食べながら動いているって感じだと思う」


「おお、そうじゃな、これは……ホーンラビットとスモールラット辺りじゃろう。

柔らかいから、どの攻撃でも大丈夫じゃ」


お父さんも【索敵】をしたようで、さくっと魔獣を当ててくる。だけどホーンラビットって言った?

え? 確かに形はウサギっぽいし、角もあるように見えるけど、小さいよ?

ちょっと半信半疑ながらも通路を進んでいけば、第一魔獣発見。


洞窟の中だからなのか、周辺の壁の色に馴染むグレーっぽいネズミが居た。

ネズミというには体長20センチほどあるから大きいけど、見た目は ハムスターに近い 可愛い感じではない、どちらかと言えば カピバラに似ている感じかな。

カピバラは温泉に入って可愛い感じだけど、こいつらは私という存在を認めた途端、歯をむき出しにして 立ち上がり、臨戦態勢になってきたから全然可愛くない。


2匹のネズミ、ではなく スモールラットは後ろ脚だけで立ち上がり、前足の爪をブンブンと振り回し、噛みつこうとしているみたい。

両方から同時に走ってくるけど、駆け寄るまでは四足歩行で良かったんじゃない?とか冷静にツッコミを入れてはいけないのかもしれない。


戦い方を見たくて 水の盾を出していたけど、尻尾も短いし、多分噛みつき、ひっかきしかないんだろうね。

戦い方を理解したところで鞭に魔力を流して 横なぎにすれば、胴体が真半分に切れ、キラキラエフェクトが出る。

残されたのは小さな尻尾。 ……うん、置いていくのは決定で。


そしてスモールラット次に会ったのは、確かにホーンラビットに見えるウサギだった。


「お父さん、小さいよ? 成長途中じゃない?」


「ああ、あれも通常サイズがアレじゃ。普通の町ではあれが成獣じゃな」


サマニア村周辺の角が短いホーンラビットと同じくらいの大きさなのに、これで成獣とは如何に。

ウルフも小さかったことを思えば、やはりあの周辺は魔素が豊富で魔獣の成長が著しいってことなんだろう。

村のホーンラビットですら討伐に困ることはなかったのに、小さいサイズになったこのホーンラビットは全く問題なしだった。

跳躍力も低いし、遅いし、柔らかい。

いや、柔らかさに関しては ダンジョンでの討伐に慣れてきた事で、私の腕力が上がっているからかもしれないね。

振り払った鞭でキラキラエフェクトが出れば、角だけがコロンと残る。

角は回復薬の素材でも使えるし、武器、防具の研磨剤を作る素材としても重宝されているようなので、これは持って帰る。


今日は1階から3階までをマッピングしながら歩くのが目的だったけど、出てくる魔獣が ホーンラビット、スモールラット、ノーマルウルフだけだったので サクサクと散策は終わってしまった。


「ちと早いが 予定の3階までは来れたが どうする? このまま進むんじゃったら 今日はダンジョンで泊ることも考えてええと思うが……」


4階に下りる階段を見つけたところでお父さんから提案される。

このまま行っちゃってもいいとは思う。

次の階はゴブリンが増えるだけだし、例の昆虫は6階以降にしか出ないって事だから、その手前の5階で休憩出来ればいいとは思う。

だけど、急いでダンジョンを踏破する理由もないし、実質制限時間が延長された今、焦る理由がない。


「ううん、予定通り3階までにしとく。明日が4階と5階、休養日の次の日に 1~5階まで、その次の日に虫との対戦だもん。

【索敵】もゆっくりできる方がいいし、今日は帰る」


「そうか、それでええと思う」


頭を撫でながら、なんとなくお父さんも嬉しそう。

正解だったかな?

体力、魔力の調整、進軍工程の組み方などは お父さんと相談しながらではあるけど、基本的に私が決めている。

はじめのアンナープ村とコニベアでは お父さんが決めてくれてたんだけど、それを基本として、私に決めるようにと前回のウレアダンジョンから練習しているのだ。

ギルドの2階でお勉強をしていた時にも、この3つに関してはどれだけ大切なのかを切々と説かれたからね。


武器・防具の性能や手入れが大切なのは当り前、身を守るものだから

食料・水の補給も大切、これがないと動けなくなるから

この2つは事前準備ができること、手入れは安全地帯でやれば良いと言われている。


だけど3つ目に関しては 常に意識をしておくべきだと言われている。

体力・魔力の把握は 撤退するかどうかの見極めにもなるから 常に気にしておくべき、生死を分けることになる。

ダンジョンなどは ついつい無理をしがち、あと1階くらい行けるだろう。という慢心で帰りに思わぬ怪我をすることもある。無理のない日程を組むというのは、パーティーリーダーの重要な役割である。


なんだって。

私はお父さんと二人だし、リーダーは勿論お父さんなんだけど、リーダー任せで無茶ぶりをされたせいで全滅するパーティーは珍しくないらしい。

だからこそ、自分でも日程を組めるくらいにならないと一流の冒険者にはなれないんだって。そんな事言われたら やるしかないよね?


ということで、今日は初めて入るダンジョンだったので、予定通り3階までで終了する。

明日は4階と5階にチャレンジです。


着々とダンジョン知識、冒険者知識を増やしていきますが、5歳児に教えるレベルではない事を、お父さんも本人も気付いていませんw


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